第十四話:走り始める真実
あっという間に一週間が過ぎ去った。
諸星の指揮のもと、街は着実に整備され、最低限の生活基盤が形を成していた。
食料品は想定以上の量を確保でき、畑の整備や簡易栽培などの、
生産ラインの構築も少しづつだが始まっていた。
その日、伽那達は、諸星の要請で仮設テントに集まっていた。
「大まかには調整が完了しました。これで、当面の不安は消えたと言えるでしょう」
そう言って諸星は、疲れたように椅子にもたれかかり、軽いため息を吐いた。
「これで、皆が落ち着けるね!」
ナナが明るく笑う。
「そうですね。俺も暫くは息抜きに趣味に浸りたいものです」
「いやー、確かに、結構疲れたよ……」
伽那が疲れた表情で、背伸びをする。
その隣では、久遠がふぅと息をはきながら、椅子にもたれかかった。
「全く……本来なら実験データを拝んでいたいのだが。実に働かされた」
「それについては勿論感謝していますよ。皆さんの協力あってこそです」
諸星は軽く頭を下げると、一呼吸置いて、眼鏡を指で弾いた。
メガネを通して、目がキラリと光る。
いつの間にか、その視線は真剣さを帯びていた。
「……そして、今回皆さんを呼んだのは、他でもなく――」
「例の、霧の開発者の話についてです」
その場にいた一同が、真剣な表情で小さく頷いた。
諸星はその様子を見て、小さく頷く。
「最初にですが、例の科学者が昨日あたりから行方を眩ませました」
一瞬、空気が凍り付き、久遠が思わず叫ぶ。
「――⁉ それ重要な話じゃないか??」
伽那達も同様に、驚愕の表情を浮かべていた。
「ええ。一応監視的なものはつけていたのですが、やはりというか、いつの間にか」
「確かに、あいつ、気配が薄かったからね……」
伽那が思い出したように言うと、後ろにいる杏花も頷いた。
「彼については特に放置でも問題ないかと思っていたので、すぐに報告はしなかったんですよ」
「なるほど……あんまり気にしないのも仕方がないか……」
久遠が納得したのか、頭を搔きながらため息をつく。
「それで、開発者の方はどうするんだ?」
諸星は、頷きながら、サッと地図を広げた。
「やはり、懸念は拭っておくべきでしょう。
そこで、十数人程度で、実際に行こうかと」
「やっぱりそうするしかないんだ……」
ナナが若干の不安を見せる。
しかし、久遠は知っていたかのように、頷いた。
「まぁ、それしかないだろうとは思っていた。
それで、誰が行くんだ?因みにだが、私は行きたいぞ」
「それももう考えてあります」
諸星が一拍おいて、再び口を開いた。
乾燥し始めた空気に振動が伝わっていく。
「この場にいる全員です。そして、後二人ほど同行をお願いしようと思っています」
「え……委員長も行くの?」
伽那が驚き気味の声で聞く。
「ええ。やはり、情報は自分で見ないと信じれないので」
「そうなんだ……。因みにその二人っていうのは……?」
「ちょっとした知り合いなのですが、田中さんと板坂さんという方です。
田中さんは大学生の方で、板坂さんというのは、隣町の高校生です。
彼女は優秀なので、少し無理を言って来てもらうことになりました」
「隣町? よく話を通せたな」
久遠が不思議そうに諸星を見る。
「ええ、通信設備がダメになる直前に少し」
「流石は委員長。用意周到だね」
伽那が嬉しそうに笑う。
「だから、諸星です」
一同が、軽く苦笑いを浮かべたが、すぐに真剣な声で上書きされた。
「なるべく、他の所の現状も知りたいので、その二人とは分担行動になります。
合流予定地は青森です」
諸星が伽那達へと視線を向ける。その視線は真剣そのもののようだった。
「そして、俺たちは、北海道へ――開発者探しに」
静かに、その場全ての人が頷く。
「勇者……いや、委員長の大大大冒険だな」
久遠がニヤリと笑みを浮かべる。
「……まったく。そこでそれを言いますか……」
諸星は大きくため息を吐いた。
* * * *
ある夜―――――
黒く染まった空に、暗雲が立ち込め、月さえもその中へと消えていた。
明かりのない空は、どこまでも暗く、黒く映った。
その夜空の下に、一人の中年の男が佇んでいた。
男は、血濡れた美しい波紋の刀を腰に収めた。
指先についた返り血を拭いながら、もう一方の手に持つ灰色の銃をホルダーに収める。
そして、彼は虚空に向かって呟いた。
「――人使いが荒いなぁ……まったく、仕事が増えるばかりだ」
気だるげな声は、しかし妙に通る音色で、闇夜の中を響き通る・
「にしても、これから忙しくなりそうだなぁ
楽できる動きにしてくれたらいいなぁ……」
彼がゆっくり、されど無音で一歩を進むと、血だまりがパチャリと波打つ。
月が暗雲の隙間から、辺りを照らした。
彼の周りには、いくつもの死体が転がっていた。
それも、子供や青年の、であった。
いぶし銀の月光に映し出される男は、背を向けて歩き出す。
ゆっくりと、一歩一歩。
「さぁ、始まるぞ。これが終われば俺も休暇だぁ」
彼の足音は、いつの間にか、闇夜へと消えていた。
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これにて2章は完結です。一旦リライトに集中するので、新章の更新は少し先になるかもです。




