第十三話:星空の下で
今回はあまり本編と関係ありません。(軽い過去の深堀です)
最悪、読まずに次へいっても話は通じます(;'∀')
「そうですか……そういう事があったのですね」
戻ってきた伽那達から一連の経緯を聞き終えた諸星は、眼鏡の奥の目を細めた。
表情は険しく、重い沈黙が背中に一瞬乗りかかった。
「分かりました。開発者の件については討しておきます。
なので、今は生活を均衡に保つことに注力しましょう」
その言葉に、伽那達は静かに頷いた。
「具体的にはどうするんだ?」
久遠が腕を組みながら問いかけると、諸星は眼鏡を指先で軽く弾いた。
「第一に、食料の確保です。現在はまだ食料の生産ラインが整っていないため、
現時点では備蓄と調達に頼るしかありません。非常食で凌ぐのが無難かと」
その発言に、伽那は一瞬だけ表情を曇らせた。
しかし、諸星はその様子に気づいているのかいないのか、淡々と続ける。
諸星の双眸は、どっしりとした重量体のように感じられる。
「食料調達は先ほどの説明通りです。
それに加えて、エネルギー設備、衛星設備も並行作業しましょう。
エネルギー設備と衛生設備ついても、今は街の既存インフラの復旧でどうとでもなります」
「なら、街の子供たちの扱いはどうするんだ?」
久遠がそう聞くと、伽那も追随して頷いた。
「大人だけが消えたのなら、子供だけで生活を成り立たせるのは難しくない?」
諸星は顎に手を当て、一瞬だけ考えるような素振りを見せた後、口を開いた。
「現状では、街の子供たちをできる限り集め、一種の共同体を構築して、
共同生活することが良いのではないかと考えています。
現状分かっている範囲では、大学生なども残っています。
ある程度の年齢層が中心となって形成すれば、秩序は保てます」
「でも……全部をカバーするのは無理ってこと?」
ナナは沈痛な表情を浮かべながら問い返す。
それに、諸星は静かに口を開いた。
「……そうです。この方式には、明確な弱点が存在します」
「明確な、弱点……」
ナナと伽那が声を揃えた。
久遠は、無言のまま考え込むように、腕を組んでいた。
諸星は、静かに頷いた。
「この方法では、あまり大規模の共同体を作れない点です。
具体的には、一つの共同体につき、約300人といったところです。
共同体というのは、根本的に相互の信頼の上で成り立ちます。
よって人数が増えるほど、不安定になりがちなのです」
『つまり、大規模なコミュニティは成立しないってことかい?』
沈黙を貫いていた那岐が、そう言う。
「その通りです。この街規模が限界です」
伽那達の表情が重々しくなっていく。
まるで、深海にいるような重圧が一帯にかかったような気がした。
「じゃあ、ここ以外の子供たちはどうなるの……?」
「それは心配しなくていいでしょう。同じ考えを持つ人もやはりいるでしょう。
何せ、大学生や高校生はたくさんいるので」
それを聞いたナナは、軽く安堵の溜息をついた。
「……そっか。でも、それなら希望はあるね」
ナナが僅かに笑顔を見せた。
「ええ。だからこそ、今はできることを進めましょう」
* * * *
その晩。
伽那は、何かに誘われるように、体育館の屋上へと足を運んだ。
すると、そこには、ただ一人、夜空を見上げる諸星の姿があった。
欄干にもたれ、静かに仰ぎ見ている。
「委員長じゃん。どうしたの?」
伽那が声をかけると、諸星はこちらへと顔だけを向けた。
「趣味の夜空鑑賞です。赤坂こそ、どうしたんです?」
「ただの散歩がてら、ね」
「そうですか」
諸星はそれだけ言うと、再び空を見上げた。
再び静寂が訪れる。
やがて、諸星が空を見上げたまま、ぽつりと呟いた。
「……星は、夜空は、美しいと思いませんか?」
「うん。なんなら、ほとんどの人がそう思うんじゃないかな」
「俺はね、赤坂。今も夜空に何故か惹かれるんですよ。不思議です」
伽那は、何も言わなかった。しかし、諸星と同じように、
欄干に肘をつき、空を見上げた。
止まることのない夜空は、少しづつ、雲を通り過ぎては、隠れていく。
「……すみませんね。食料調達の件では」
「いいよ、気にしないで。我儘だって理解してるしね」
伽那は空を見上げながら、少しだけ微笑んだ。
「僕はね、皆が好きというか、憧れるんだ。一番失いたくないものだから」
「だからですか」
諸星は一呼吸置いた後、ゆっくりと鍵盤を弾き始めるように呟き始める。
「俺も、失いたくなかったものはありました」
「ありました……?」
伽那が思わず、諸星の方を見る。
諸星は軽く微笑んだ。
「そうです。母親も、父親も、もうこの世にはいませんから」
「……初耳なんだけど」
伽那がジト目で諸星を見ると、諸星は笑いながらようやく伽那へと視線を向けた。
「そりゃあ、言ったことありませんよ。話しても仕方のない過去です」
「委員長は秘密主義だね。とことん」
「諸星と呼んで下さい。俺はあまり自己語りが好きではないだけです」
苦笑しながらも、諸星の目は再び夜空を真っすぐに見ていた。
諸星はゆっくりと夜空へ手を伸ばした。
まるで深海から届かないはずの水面へと手を伸ばすように。
「俺は、世界が嫌いで、好きなだけです」
静かにそう言って、続けて言った。
「だから俺は取捨選択は得意なんですよ」
世界が答えるかのように、風が諸星の髪をなでた。
「ねぇ、諸星」
伽那は、星空を見上げながら問いかける。
「何です?」
「僕、北海道に行くつもりなんだ」
諸星が少し意外そうに、伽那を見る。
「例の開発者の件ですか?何故わざわざ?」
「僕はついでに、言社のお姉さんも探したいんだ」
「言社というと……なるほど、姉がいるのですか」
「そうだよ。今は離れ離れだけどね。
僕は、生みの親を知らないから、妹の大切さをよく知ってるんだ」
「なるほど……」
諸星は暫く黙っていたが、やがて決意したように顔を上げた。
「分かりました。では、任せますよ」
伽那は諸星を見て、軽く頷いた。
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