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第90話 邪竜戦とまさかの9人目、只人レギエルデ

美緒は目の前の光景に固まってしまっていた。


この世界の伝説。

かつて世界に混乱を巻き起こしたと言われる邪竜フェブニール。


結界に包まれ気を失っている男性をその大きな(あぎと)にくわえ、荒ぶる邪竜。

それが見たことのない粘液のモンスター、怖気を誘う超高レベルのスライムに飲み込まれつつあったのだ。


「っ!?はっ、いけない。ま、まずは救助を――くうっ!!?」


暴れるフェブニールの振り回す尾が美緒の防御結界を突き破り、薙ぎ払う。

吹き飛ばされ激しい音とともに壁に叩きつけられる美緒。


口から赤黒い血を吐き出し、全身に嫌な痛みが突き抜ける。


(くうっ、あばら何本かいかれた?……オーバーヒール!!)


洗練された魔力が美緒のダメージを回復。

その瞳に獰猛な闘気がまとう。


(……ふう、問題ない……でも)



くわえられている男性。

先ほど思いをはせた一人――どう見てもレギエルデだ。


(なんで彼が?ここ魔導国のダンジョンよね……ありえない。――ううん、考えるのは後だ)


美緒の感知は今すでに世界最高峰。

だから今目の前で起こっている現象、“転移してきたもの”だ。


(転移魔法?ううん、魔物が使える物じゃない。まさかレギエルデ?!……でも彼…完全に気を失っている……分からない。でもまずは……あのスライム!!)


美緒は魔力を練り上げる。


つぶやくように最上級魔法を詠唱。

さらに聖魔賢者の特殊スキル『重ねがけ展開』を最大値で紡ぐ。


もちろん結界も忘れない!!


そしてそれを邪竜にまとわりつくスライムごと巻き込む形で解き放った。


「ヘルフレイム×20!!」

「パーフェクトフィールド」

「効果収束!!」


常識を凌駕する超高温が邪竜の体を爆心地として顕現する。

集約する大気が魔力に塗り替えられる。


同時に美緒の結界に包まれる気絶している男性。

どうにか確保。


瞬間世界から色と音、そして時がその意義を失う。


見たことのない、怖気を誘うスライム。

言葉にならぬうめき声と、怨嗟の魔力――


美緒は今自身が放てる最高温度を出すべく呪文を紡いでいた。


(生半可では消滅させられない)


訴えかける彼女の本能。


瞬間岩石の沸点をゆうに超える超高温の地獄が、半径40メートルほどの空間をまるで削除するかの如く消し飛ばしていた。


ぽっかりと出現した広大な真ん丸な空間。

消失した空間を修復するかのごとく突風が吹き荒れる。


美緒の凄まじい魔法コントロール。

まさにその真髄が発揮されていた。


「はあ、はあっ、はあっ……さすがに……×20はきつい……魔力80%くらい使っちゃったよ」


座り込む美緒。


そして静寂。

鼻を衝く岩石の焦げた匂い。


今の激戦――それは既にまるでなかったかのように優しく時が動き出す。


ドサッ。

ドサドサっ――


静寂を破り落ちてくるドロップ品の数々。

そして脳内に電子音が流れる。


『ピコン……レベルが上がりました……『時渡(極小)』のスキル獲得しました……修行僧のジョブ、カンストしました……生命変換(極)獲得しました……』


「……時渡?……なんだろ。……はあ、修行僧、コンプだね……っ!?さっきの人…無事みたい」


確認し、そのまま後ろに体を投げ出す美緒。



「美緒―!!」


慌てて駆け付けるリンネ。

心強い仲間たち。


美緒の心に温かいものがあふれ出す。


「美緒、大丈夫?……って、うあ、私たちも経験値が……って、えええっ?!!」

「はあっ?!お、俺……レベル……177?!!」

「っ!?完全回復スキル?……おお、奇跡だ…」

「……はは、とんでもねえ……あんた、マジですげえ……」


あー、みんなもカウントされたんだね。

うんうん。

強くなるのは良い事だ。


私はにっこり微笑んだ。


「「「っ!???」」」


真っ赤に染まる男性3人。


うん?

いっけない。

全力で戦ったから、パッシブ発動してた。


私は慌ててパッシブを切り、深呼吸をした。


「美緒ってば……」

「あーごめん」



※※※※※



こうして不帰の大穴の攻略、完全終了。

多くの秘宝と伝説級の武具、そしてなぜかメインキャラクターのおまけ付き。


私の初めてのダンジョン攻略は終わりを告げたんだ。



※※※※※



ギルドの治療室。


今私は目の前のベッドで寝ているレギエルデをリンネとルルーナ、ミネアとともに見下ろしていた。


何故か不帰の大穴に『おそらく転移してきた』メインキャラクターであるレギエルデ。

取り敢えず彼の目覚めを待っているところだ。


大きな怪我とかはなく、取り敢えず気絶状態。

一応治療を施したので直に目を覚ますだろう。


「ねえ美緒?この人誰なの?」


ルルーナが私に問いかける。

ミネアも不安げな表情だ。


――神人より落とされし只人レギエルデ。


設定上ではあるものの、元神の血を引く超人。

今は二度と解けない封印を施され、力の無いただの男性。


でも彼は世界随一の頭脳がある。

そして――“ナナ”が恋に落ちる男性だ。


「あのね、本来はずうっと後で仲間になるはずのメインキャラクター、レギエルデ。戦いのすべてを司る超絶な頭脳の持ち主だよ」


「……強くはないの?」

「うん。彼は元伝説の種族である神人。シナリオの設定ではこの宇宙の禁忌に触れてしまった大罪人。でも、凄く優しい人よ?……ナナが惚れるくらいだからね」

「っ!?ナナが?」


「うん。あっ、内緒にしてね?まだナナ、この人の存在すら知らないし」

「う、うん」


私たちが話をしていると、レリアーナが食事を用意して部屋を訪れてくれた。


「美緒、その人目覚めた?」


食事をサイドテーブルに置き、ちらりと寝ている男性を見てレリアーナが私に問いかける。


「ううん。まだ。……でも…っ!?」

「……う……」


ピクリと反応し言葉を漏らす。

そしてゆっくりと彼の目が開かれた。


「……ここ…は……?……っ!?……てん…ごく?……女神様……」

「えっと……気分はどうですか?……レギエルデさん」

「っ!?……名前?……どうして……」


まだ呆然としているレギエルデ。

私はしばらく彼の回復を待った。


やがてゆっくりと上体を起こし、改めて私たちを見渡す。


「……貴女達は……やはり、天国なのか……美しい女神が……こんなに…」

「あー、その。ここはリッドバレーです。……ご存じですか?」


「っ!?リッドバレー?……禁忌地……」


混乱の最中であろう彼。

しかしその優秀な頭脳は正解にたどり着く。


「っ!?まさか?!……ゲームマスター?」


さすがはメインキャラクターで頭脳特化。

僅かな会話で私がゲームマスターであることを理解したようだ。


「そうか……じゃあ、フェブニールは……君が?」

「ええ。……いったいどういう流れであなたは襲われていたのですか?」


彼の瞳が輝きを取り戻す。

なぞるようにゆっくりと口を開いた。


「……僕は精霊王の依頼を受けていたんだ」

「……ファナンレイリ様の?」


「っ!?はは、さすがはゲームマスター。あの精霊王の名前までご承知か。コホン、まあそれで僕は『時戻しの秘宝』を探して…ジュルムール樹海を探索していたんだ。Aランクパーティー2チームを雇ってね」


ジュルムール樹海。

デイオルド大陸のルディード大森林の奥地にある秘境の地。


彼が探していた『時戻しの秘宝』は神が作ったとされるアーティーファクト。

数回約1時間――対象の時を巻き戻すと言われているものだ。


「それでどうなったのですか?」

「ええ。……そうだ、あなたは僕の名前を知っていた。でも僕は君の名を知らない。いつまでも称号呼びは失礼と思うが……名を聞いても良いだろうか?」


にっこり微笑むレギエルデ。

メチャクチャ優しげな彼は超イケメン。


思わず私の顔が赤く染まる。

鼓動が跳ねる。


うあ、他の皆も?


……これはなんか危険な香りがする?!


「コホン。…あ、そうですね。まだ名乗っていませんでした。私は美緒、守山美緒です。……異世界からの転移者です」


「ありがとう。じゃあ“美緒さん”と呼んでも?」


「美緒、で。年上の方に敬称で呼ばれるのは……少しくすぐったいです」


「分かったよ。美緒?よろしくね」

「ええ」



※※※※※



こうして私はレギエルデの話を聞くことになった。

以前ティリミーナが私に伝えた依頼。


意外なところで繋がっていたことに、この時の私はまだ気づいていなかった。


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