第89話 リンネの初体験?いやいや、あんた死にたいの?
最下層である70階層を攻略した美緒たち。
今その一角で美緒は聖魔賢者で得たチートスキル『真相解明』で封印されている扉を調べていた。
そしておもむろに魔力を込め何かをつぶやく。
「……なるほどね。マールが諦めるわけだ」
「美緒、解呪できるの?」
「うん。問題ないよ?……もう術式は組んだからすぐに解ける……あー、一応リンネはエルノールとドレイクの後ろで隠れていてくれる?いきなり襲われちゃうかもだから」
「う、うん」
今から救い出すノーウイック。
その素性を知らないエルノールとドレイクは美緒の不穏な物言いに不安を募らせる。
「美緒さま?そ、その、ノーウイックというのは危険なのですか?」
「……リンネ様が危ねえ?……どういうことだ?!」
「あー、そ、そのね?えっと……」
思わず言い淀む美緒。
その時封印が音を立て崩れ落ちた。
「っ!?」
美緒たち以外の気配が膨れ上がる。
そしてリンネの悲鳴が響き渡った。
「キ、キャアアアアアアアアアアアア―――――――――――!!???」
「はああああああっっ!?お、女あ、女あああああああーーーーーーーーー!!!!!」
「い、いやあ!!…くっ、こ、このっ!!…放せ―――!!!」
突然リンネの後ろに出現し、後ろから羽交い絞めにしようとする男性。
咄嗟にガードするリンネ。
しかし男の手はリンネの体に触れようと、とんでもない手数で襲い掛かる。
必死に往なすリンネ。
大切なところはどうにかガードするものの、どうしても腕や背中などは触られてしまっていた。
「はあはあはあ…なんて極上の女…た、たまらん!!」
恍惚の表情を浮かべ鼻の下がとんでもなく伸びている?
そしてとんでもない速さでリンネに密着する男性。
おもむろに匂いを嗅いでいる?!
「はあははあ…なんていい匂いだ…くんかくんか」
「ヤメロー!!!このド変態っ!!!」
必死に抵抗するリンネ。
しかし。
その男の執念、半端ではなかった。
※※※※※
……何これ???
突然のことに反応が遅れてしまった私とエルノール、そしてドレイク。
取り敢えず命の危機のような状態ではない事で、危機感知が反応しなかったことも頷けてしまう。
しかしリンネにとってはたまったものではない。
いきなり襲い掛かられ、一瞬ではあるが胸を…コホン。
大切な場所はガードしたとはいえ、すでに体中触れられ匂いまで嗅がれてしまっている。
うん。
リンネ羞恥で顔真っ赤だ。
涙目だし。
「お、おい、美緒?助けなくていいのか?」
なぜか赤い顔をしてドレイクが私に問いかける。
確かにリンネの表情、とっても色っぽい。
「っ!?はっ!?…う、うん」
何故か呆けていた私。
私は力づくでリンネに襲い掛かっている男、ノーウイックを取り敢えずぶちのめすことにした。
※※※※※
両手をこれでもかときつく縛られ、下半身が地面にめり込み原形が分からないくらい顔を腫らした男を美緒とリンネが睨み付ける。
実は私がぶちのめす直前、彼、とんでもない事をしようとしたのよね。
いきなり服を脱ぐとか。
バカなのかな。
取り敢えずリンネの頑張りで、ほぼ未遂だったから…
お仕置きしようと思った私はそれを見て思わずブチギレちゃったよ。
まったく。
…少しやりすぎ?
コホン。
でも。
しっかりと仕上げをして、分からせないとね。
※※※※※
美緒の掌打とリンネの打撃を数十発喰らったノーウイック。
むしろ良く死なないものだ。
男二人は違う意味で感心していた。
「分かったかな?……ノーウイック。私とリンネには絶対服従。返事!!」
「……ふぁ、ふぁい」
遠目で震える男性二人。
美緒とリンネの纏うオーラ。
怖すぎる。
「もし次私の仲間においたをしたら……」
美緒はすらりと超元インベントリから悍ましい大きな鋏を取り出し、刃先をねっとりと可愛らしい舌で舐める。
もちろん演技だよ?
勘違いしないでよねっ!!
「ちょんぎるからねっ!!!」
「ひ、ひいいっ!??」
涙目のノーウイック。
すでに伝説の男は美緒とリンネには頭が上がらなくなっていた。
完全に調教(笑)が完了です。
※※※※※
ついにメインキャラクター8人目の男、ノーウイック。
彼の封印を解くことに成功した。
これで今認識しているのはレストールと、まだ会えてはいないもののロナンを含め10名。
ようやく半分だ。
あと10人。
私は思考を巡らせ彼らを想う。
町娘エレリアーナ。
竜帝アラン。
竜の咆哮ランルガン。
極光の深紅の華真祖マキュベリア。
古代エルフの秘宝マルレット。
導かれし侍十兵衛。
呪われし妖魔の頭領九尾ミコト。
大精霊フィードフォート。
奇跡の大軍師コメイ。
神人より落とされし只人レギエルデ。
(ここまで来れた。……あと10人、それで準備が整う……今は帝国歴25年、あと数日で26年。……間に合う。大丈夫だ)
私はさらに決意を深めていた。
※※※※※
取り敢えずノーウイックは回復させました。
今は何故かやたらドレイクと罠の事とかで盛り上がっている。
私は彼を鑑定してすさまじい力に少し驚いていた。
彼、レベル150だった。
そしていくつかの私の知らないスキルも習得していた。
性格というか悪癖のある彼だけど……
うん。
心強いのは間違いない。
「ねえ、みんな。私もうちょっとで修行僧カンストしそうなの。ちょっとだけ戦ってもいいかな?」
「うん?美緒、因みに今ジョブレベルは?」
「えっとね…93だね」
「っ!?……相変わらずあなたの上がり具合頭おかしいよね。良いよ。皆も良いよね」
「もちろんです」
「ああ、構わねえぞ」
「む?美緒……い、いや、美緒さま、あんたすげえな」
うあ、ノーウイック話しにくそう。
ふう。
まあいっか。
「ねえノーウイック?いいよ、呼び捨てで。言葉遣いも気にしないで。……えっちな事しないなら私は怒らないし?まあ帰ってギルドに着いたら自由時間あげます。娼館にでも行ってきて?……男の人って溜まると体に良くないんでしょ?……絶対にギルドの他の女の子に手を出したら許さないからね!!」
「お、おう。すまねえ。……ふっ、美緒はいい女だな。理解が深い」
「はあ?」
「普通お前さんみたいな美しい女性、口が裂けても『娼館に行ってもいい』とは言わないぞ?ドレイク、お前たちマジで運が良いな」
「ははっ、まあな。……美緒は最高の女だ。もちろんリンネ様もな」
「ええ。娼館はともかく美緒さまは世界で一番美しく可憐で可愛らしい女性です。ノーウイック?もし美緒さまに触れていたら、美緒さまが許しても私がお前を殺すからな」
相変わらず言葉の端々に私を盛るエルノール。
慣れたとはいえ思わず赤面してしまう。
「コホン。じゃあ少し戦うね。っ!?ん?……えっ?どうして……」
「っ!?美緒??」
「あ、ごめんね?ここにいないはずのモンスターの気配が……っ!?」
瞬間消える美緒。
そして悍ましい気配が皆を包み込む。
「「「「っ!?」」」」
そして黒光りする鱗で覆われた禍々しい邪竜の咆哮が響き渡った。
在り得ないとんでもない気配。
恐らくレベル300前後。
全員から冷や汗が噴き出す。
「……邪竜フェブニール……だと?!!!」
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