第85話 婚約の解消と侯爵様の好み?
レリアレード侯爵家、エルファス嬢の部屋。
「婚約の解消、でございますか?」
「ええ」
先ほどの温かい雰囲気とは一転し、今は重苦しい空気に支配されていた。
「今のところそれにあたることが思い浮かびません。エルファス、何かあるのか?」
正直貴族にとって、婚約は重要な事項だ。
さらにエルファスは侯爵家、しかも一人娘。
それに相当する理由。
そうでなければ、数年にわたるまさに契約。
解除などできない案件だった。
「え、いえ。……ですが…」
「何かあるのなら言ってほしい。確かに侯爵家の令嬢、政治的なつながりでの婚姻は珍しくはない」
真直ぐにエルファスを見つめる侯爵。
その瞳に優しさが灯る。
「…だが私とて娘を愛する父親だ。もし理由があるのなら、可能な限りは尽力しよう」
ナナは下を向く。
そしてちらりと私に視線を投げてくる。
うーん。
まだ確信はないのよね。
でも……
私が悩んでいるとナナは覚悟を決めたように父であるアウグストに視線を向けた。
「お父様、実は……」
「うん?言ってごらん?何かあるのか」
「……そ、その…彼、ラギルード様なのですが……」
顔を真っ赤に染めるナナ。
訝しげに娘を見つめる侯爵。
「……巨乳好きなのですわ」
「……………は?」
そして恥ずかしさの上限を突破したのか、怒涛の如く話始めるナナ。
侯爵様は理解が追い付かない様子だ。
「あの方、いつもわたくしの胸を見てため息をつきますの。……『洗濯板』だの『君は本当に女性かい』とまで。…酷いのですわ!」
思い出したのだろう。
エルファスの顔が怒りでさらに上気する。
「それに婚約者であるわたくしがいるというのに…胸の大きな女性といつもイチャイチャイチャイチャと」
エルファスの怒りの圧。
思わず肩をすくめるアウグスト。
「わたくしとて侯爵家の娘。政略結婚について異議はございません。ですがあまりにも、わたくしの貧相な胸に対しあからさまなのです。悔しいのです。悲しいのです。きっと結婚しても白い結婚なのですわ」
そして。
やや諦めたような…悲し気に視線を落とすエルファス。
「…あの方はすぐに胸の大きな女性を愛人に据えることでしょう。……私は誇り高きレリアレード侯爵家が長女。――容認なんてできません」
怒涛の告白。
淑女らしからぬ、鼻息の荒いエルファス。
侯爵様は目を白黒している。
まあね。
これじゃ納得できないわよね……
私がさらに悩んでいると何故か侯爵から怒りのオーラが溢れてきた。
うあ、あまりに下らない内容に、怒ってしまわれたのね?
「あ、あの、侯爵さ……」
「許せんっ!!!!」
はい?
何故か怒りに震え、わなわなと体を震わす侯爵。
そんなに怒ること?
うああ、早くフォローを…
「あのクソガキ!!あろうことにお前のそのまるで神の造詣がごとく美しい胸を洗濯板だとっ!?……でかい胸じゃないと認めないだとっ!!?エルファス」
「は、はい」
「良く教えてくれた。……辛かったであろう?分かった。即刻婚約は解消だ。何も言わせん。父に任せるがよい」
怒りに震える侯爵様。
…親子よね。
怒り方がそっくり。
「お、おとう様」
「うむ。胸を張りなさいエルファス。お前の胸は貧相などではない。とても美しく高貴な胸だ。見なさい、美緒さまの胸を。まさにお前と同じ、神々しい美しい胸である」
あー。
そうなんだ。
何気に私までディスられたけど?
侯爵様……貧乳愛好家なのね?!
何故かむくれているリンネ。
うん、あなたとってもおっきいからね。
すると、エルファスの部屋に新たな人物が登場。
彼女の母、エリザベート様だ。
「ようこそおいでくださりました。美緒さま、リンネ様。……わたくしエルファスの母、エリザベートでございます。」
奇麗なカーテシーを披露する彼女。
思わず見とれてしまう。
そして気付く。
彼女もまた、貧乳だった。
※※※※※
えっと、ここで少しフォローを。
さっきから貧乳、貧乳と連呼していますけど。
一応私もナナも、お母さまも、“Cカップ”ですからね!!
ちょうどよい大きさなのです。
勘違いしないでよねっ!!
※※※※※
ひと段落し、今はナナの親子3人と私とリンネの5人でお茶を楽しんでいるのだけれど……
一応あの話もしておいた方が良いと、先ほどリンネと念話で確認をしていた。
「あの、侯爵様」
「美緒さま、アウグスト、と呼捨てに。是非お願いいたします」
「う、あう。……では、アウグスト?実はあなたに調べて欲しい事があります」
「はっ」
私は紅茶でのどを湿らす。
ほっと息を吐き、口を開いた。
「この国で――人身売買は違法ですよね」
「っ!?……はい。当然でございます……ただ…」
「ええ。…どうしても法の目をすり抜けるものが居る――そうですよね?」
侯爵の表情。
私は確信する。
――大きな組織が動いている。
「私はゲームマスターです。実は少しばかり私には不思議な力があります」
「不思議な力?でございますか」
「未来視、とでもいえばよいのでしょうか」
「っ!?……そ、それは……ま、まさか?!」
「ええ。残念ですが……先ほど話に出たラギルード様……3年後に違法人身売買の責任を問われ廃嫡されます」
「なっ!?……」
「しかも……すでに手を染めている可能性が高いです」
私のこの情報。
裏はとれていない。
でも……
最初のルートの時、ロナンから聞いた言葉。
『俺はもう5年ここにいたよ。酷い目に遭った。俺の妹は……あいつらに……』
ロナンのルートは帝国歴29年からスタートする。
愛する家族をすべて失い、絶望の中からのスタートだ。
今は帝国歴25年。
彼の記憶が確かなら。
すでに拘束されているはずだった。
私の置くティーカップの音が、カチャリと部屋に響いていた。
「面白かった」
「続きが気になる」
と思ってくださったら。
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援、お願いいたします!
面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!
ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




