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第79話 勇者誕生?シナリオおかしいよね?!

「『隔絶解呪』!!………ふうん。確かに美人さんなのね」


ぴくりとも動かない邪神リナミスに、美緒は隔絶解呪を試みていた。

本来は殺すはずだった。

何より倒さなければ経験値は得る事が出来ない。


しかし殺す前に、どうしても聞きたいことがあるのは事実だ。

まず一つ。

ティリミーナの封印について。


あれは普通の人間では絶対に紡げない術式。

悪魔の眷属、しかも相当の力がないとできない芸当だった。


そして彼女の目的。

それ如何ではこれからの行動にも影響を及ぼす。


美緒の隔絶解呪で、元の姿に戻り倒れ伏すリナミス。

今度はその状態で美緒は鑑定を行った。


「鑑定………ふう。この人……少し可哀相かも……まあ、許せないし目を覚ましたらやっぱり……」


もちろん彼女は呪われていた。

でも……彼女はヒューマンを元々恨んでいた。


もう、改心とか言うレベルではない。

彼女は……


「……覗きおったな……ふっ、貴様こそ淑女として失格ではないか……」

「………そうね」


のそりと起き上がるリナミス。

瞬時に臨戦体勢に入るロッドランドとミリナ達。

美緒がそっと手を上げそれを抑えた。


「大丈夫。もうこの人には戦う力はない。……ねえ、消える前に教えてくれる?あなたの言葉で知りたいの」

「ふん。最後まで傲慢なゲームマスターめ。わらわに生き恥をさらせというか」

「……あなたはそれほどの事をしたの。……あなたが受けたことと同じ、関係ない人たちの心を弄んだ。……そうでしょ?」


邪神リナミス。

彼女は見世物として散々心無い扱いを受けていた。


余りにも酷い、目を覆いたくなるような仕打ち。

何度も弄ばれ死にかけたことは数えきれない。


そしてわずかに残された彼女の良心も……

本当に愛する人を目の前で殺され失ってしまっていた。


「……そう、じゃな。……確かにわらわは死しても許されまい。…あの世とやらでもわらわはあの人には会えまいよ?……彼はきっと極楽へと旅立った。わらわは永遠の地獄へと行くのだろうな」


そうして語られる、あまりにも悍ましい所業の数々。

皆は感情の置き所が分からなくなるほどのとんでもない内容に―――


気付けば涙が浮かんでいたんだ。



※※※※※



「…ふう。これで満足か?傲慢なゲームマスターよ」


すでに体の輪郭がぼやけ始めるリナミス。

話を聞いたロッドランドから怒りの波動が沸き上がる。


「……どうしてそんな酷い事が出来たんだっ!貴様のせいで、ティリはっ!!……」

「ふん。貴様選ばれし神の使徒か。……なるほど、わらわは利用されたようじゃの」


「……どういうことだ」

「簡単な事よ……人は危機に陥らねば覚醒なぞ出来ぬ。その侯爵はたどり着いた。それだけじゃ」


リミットが来たのだろう。

ついにリナミスの手と足が崩壊を始める。


悪魔と契約し、限界を超えた力を行使したその報い……存在の消滅……


「ふん。謝りはせぬ。わらわだって正しいなどとは思っておらん。じゃがもうわらわの心は限界じゃった。それだけだ……美緒、といったな」


「……うん」

「一つだけ情報をやろう」


「……」


「我と同じようなものがゾザデット帝国のマギ山におる。まもなく帝国の皇女が命を散らす。病気ではない。呪いじゃ。……救えるものなら……やって見せるといい……さらばじゃ…」


そう言い、チリとなり消滅するリナミス。

美緒の頭に電子音が流れた。


『ピコン……レベルが上がりました。……千里眼のスキル、習得しました。……聖魔賢者のスキルレベル上がりました……』


そして他の6人にも流れる電子音。

特にロッドランドは激しく動揺する。


「うあ、ぼ、僕……『勇者』の称号?……獲得しちゃった?」


「ええっ?!ロッドが勇者?」


……おかしい。


勇者はこの世界には一人のはず……

っ!?はっ、まさか……ナナが危ない?!


最強の冒険者でメインキャラクターであるナナ。

まだ出てこないはずの一人。


彼女は最後、勇者の称号を得たはず……

でも……ロッドがそれを獲得?


「……ゾザデット帝国って言っていたよね?」

「う、うん。……どうしたの美緒?顔真っ青だよ?!」

「リンネ、ゾザデットの冒険者ナナ、知ってる?」

「……冒険者ナナ?………っ!?メインキャラクター?」

「実はね、この世界『勇者』の称号は彼女一人だけのはずなの。もちろんシナリオではまだまだ先の話なのだけれど……今ロッドが獲得しちゃった」


リンネの背筋に寒いものが走る。

本来獲得するはずの称号が別の人に出現する可能性……


それは本来対象であるものの死だ。


この世界美緒は2回目。

リンネが誰よりもそのことを知っている。


もしも、メインであるキャラクターが死亡した場合―――

美緒のシナリオのクリアが不可能になる。


それは本来の目的、虚無神の封印が不可能になるという事だ。


「……行ってみる。私ゾザデット帝国に。……どうしよう、もしナナが死んでしまっていたら……」


美緒は正直、いま彼女が存在していること自体は確信していた。

この世界は元がゲームではあるが確実に現実の世界。

いつか出会うメインキャラクター。

絶対にいる。


そして美緒は思い出す。


彼女ナナが登場時、横で佇む人化したエンシャントドラゴン、フィムルーナを紹介されたときに、5年前にテイムしたと言っていたことを。

5年前、今だ。


テイムする場所……ゾザデット帝国、マギ山。

まさに今リナミスが話した場所だ。


そのタイミングで美緒にドレイクから念話が届いた。


(美緒、今良いか?)

(……う、うん)

(??どうした?まさか怪我とか…)

(ううん、大丈夫。……ドレイク、今ゾザデット帝国よね。どうしたの?)

(あ、ああ。実はその事でお前に聞こうと思ってな。この帝国の姫さん、珍しい病気で死にそうなんだ。美緒、この前のソーマ草、まだ持っているか?)


美緒は一瞬考えこむ。

ゾザデットの姫は病気じゃない。

そもそも今さっき、リナミスも言っていた。


(もちろん持っているよ?でも……)

(……でも?)

(……ねえ、今どこに居るの?)

(王宮の姫さんの部屋だ。……隣に皇帝もいる)

(っ!?……分かった。私も今から行くね)

(はあっ?!邪神はどうした?)


いうが早くリンネの手を取り転移する美緒。

残されたロッドランドたちは呆然としてしまう。


(………ルルーナ、聞こえる?)


「っ!?美緒?……もう着いたの?」


(ふふっ、私転移だよ。もう着いた。……ねえ、多分もう大丈夫だと思うけど、レルダンやザッカートの援護をお願い。私はもう一仕事してから帰るから)


「う、うん。任せて……皆、美緒からのオーダー。残りを掃除してギルドに帰るよ!!」

「にゃー、分かったにゃ」

「は、はい」

「承知。ふふっ、残りは私が倒そう。何しろたぎりまくっているからな!!」


そう言い踵を返し駆けていく4人の女性。

一人残されたロッドランドは思わずつぶやく。


「えっ?……僕、帰れないじゃん」



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