第61話 聖騎士ロッドランド
東方の大陸、ムナガンド大陸。
ムナガンド大陸には7つの国がそれぞれ栄えていた。
獣人族の国エルレイア。
聖王国フィリルス。
ダラム王国。
ノイド公国。
古代エルフの王国ブーダ。
商業国家ジギニアルダ。
ゾザデット帝国。
7つの国はお互いに友好的な関係を築き、連携を深めるため評議会を設立しその議決で奴隷制度を禁止している国々だ。
また数人のメインキャラクターたちが生活している場所でもある。
シナリオでは暴走し力を蓄えた神聖ルギアナード帝国の飛空艇部隊の襲撃により蹂躙されてしまう大陸だ。
もちろん回避させるけどね。
比較的安穏な空気に包まれているムナガンド大陸の国々。
温暖な気候で食料事情に問題はない。
ここ数十年大きな争いもなく、平和に時を刻んでいる国々だった。
そう思っていたし、そう見えていたんだ。
※※※※※
今回の目的、ロッドランド。
彼は現在、聖王国フィリルスの騎士候補生だ。
私とドレイクは彼の住むフィリルスの第3の都市、ウィリナークへと訪れていた。
「ねえドレイク。彼はどんな感じだったの?まだ16歳くらいよね」
「ああ、そうだ。……確かあいつ『最強の聖騎士』なんだよな。ちょっと信じられんが」
念話を試した日、彼はイニギアとともにロッドランドと会話をしていた。
取り敢えず道を聞き、案内してもらったそうだ。
「あー、確かに心優しいとは思うぞ?だけど全然強そうじゃなかった。あいつオーラがまるっきりねえ。下手すりゃまだアリアの方が強そうだ」
「えっ?嘘でしょ?ゲームの彼、すっごく強かったよ?多分今のレルダンくらいには」
「はあっ?!……人違いか?同姓同名とか……そりゃ在りえねえぞ美緒」
えっ?
どういう事??
私が悩んでいると警備用の軽鎧のような物を着込んだ一人の男の子が手を振りながら走ってくるのが視界に入ってきた。
「あれっ?ドレイクさん?わあ、やっぱり。この前は大丈夫でしたか?……うあ、可愛い」
「お、おう。ありがとな。この前は助かったよ。ああ、こちらは俺の姪っ子の美緒だ」
優しそうな茶色の瞳を瞬かせ、まるで女の子のような中性的な美しさを持つ彼はにっこりとほほ笑む。
……間違いない。
ロッドランドだ。
ロッドランド・イシュターク
イシュターク伯爵家の嫡男でいずれ世界最強の聖騎士になるはずの男性。
身長は160cmくらい。
ゲーム登場時は確か180cmくらいだったから、きっと今から伸びるのだろう。
何より彼を包むオーラ……
まったく感じることが出来ない程微弱だ。
(……いったい何が?……分かっている私でも不安になっちゃうくらい弱い……大丈夫かな?)
「初めまして。美緒です。この前は叔父がお世話になりました」
「は、はい。……ロッドランド・イシュタークです。……うあ、やばい、本当に可愛い……はっ?!……ご、ごめんなさい」
私は手を差し出し彼に挨拶をする。
私の手を恐る恐る握り緊張に顔を染めるロッドランド。
(……間違いない。………彼の奥に流れる聖気……確かにある。……でも……拒絶?阻害?!)
「うあ、そ、その……あうう」
彼の手を取り思わず見つめていた私は顔を真っ赤にさせ湯気が出そうになるロッドランドの手を放した。
「あ、ごめんなさい……長く握っちゃって……あの?……大丈夫?」
「う、うん。……君みたいにかわいい子……見たことなくて……えっ?…瞳…黒い……?」
顔を染め俯く彼。
急に私の瞳を見つめ動きを止める。
ん?
私は咳払いをして情報を集めようと彼に問いかけた。
「コホン。…あの、ロッドランド様?あなた騎士なのですか?」
「っ!?……う、うん。……もっともまだ候補生なのだけどね……はは、は」
照れる彼だけど……手の平にはしっかりと剣ダコが出来ていた。
努力を続けている、戦士の手だ。
「ああーん?ノロマのロッドじゃねえか?お前何してって……すげえ、めっちゃ可愛い。……お嬢さん?こんなつまらないやつ放って置いて、俺と遊ばない?いいところあるんだ……ふあー、君、めっちゃいい匂い♡」
私がロッドランドと話をしていると、同僚なのか彼と同じ軽鎧を身に纏っているいかにも軽そうな男が突然私の肩に手を回してきてささやいた。
そして顔を近づけ、私の髪の匂いを嗅いでいる?
背筋に寒気が走る。
「っ!?は、放してください。私今ロッドランド様とお話ししているんです。失礼ですよ?女性にいきなり触れるなんて……きゃっ?!」
男性はおもむろに肩から手を滑らせ私の胸に…
とんでもない嫌悪感に私は包まれた。
「っっ!?」
気持ち悪い……
全身を鳥肌が覆う。
「ふわー♡……小ぶりだけどいいもん持ってるね♡」
「い、いやっ、やだっ」
「っ!?てめえ、死にてえのか小僧」
ドレイクがまるで鬼のような殺気をあふれ出させながら男の腕をひねり上げる。
「いででっ?!な、何する?ぐうあっ、や、やめっ……」
ボキイッ!!!
「グギャアアアアーーーーーーー!!?」
まるで獣のような声を出しのたうち回る男。
オロオロとするロッドランド。
「……美緒、すまん。……平気か?」
「う、うん。……気持ち悪かっただけ」
「そうか。本当にすまなかった………おいっ、貴様」
涙を流し震える男。
ドレイクの殺気に完全に恐怖した表情で見上げる。
「殺されないだけありがたく思え…サッサと消えるんだな?……ポーションだ。これで治るだろ」
そう言いポーションを男の頭から浴びせる。
男はまるで逃げ出すように叫び声をあげながらその場から消えていった。
なぜか涙をにじませ震えているロッドランド。
(……この場面、泣くのは私なのでは?!)
私は思わず心の中で突っ込んだ。
そして彼のその様子に何故か逆に冷静になっていた。
どうやら大分精神的に強くなっていたようだ。
以前の私なら蹲って泣いちゃっていたかもしれない。
(……良い傾向……だよね???)
よくよく考えたら私…初めて異性に胸を触られちゃった……
(まあリンネとかレグとかリンネとか……いっぱい触られちゃってはいるけど…)
ショック、というより。
ただただ気持ち悪かった。
そして怒りがこみ上げる。
むうっ。
…犬か何かに噛まれたと思って、諦めよう。
そうしよう。
……帰ったらリンネのおっぱい、いっぱい揉んで癒されよう!!
この前のリベンジだ!!
記憶を書き換えよう!!
絶対にっ!!
私はそう心に誓った。
※※※※※
「美緒さん、ごめんなさい……ぼ、僕男なのに…‥守れなくて……」
うなだれ下を向くロッドランド。
私はつい苦笑いを浮かべてしまう。
今私たち3人は近くのお店に入りお茶を飲みながら話を続けていた。
「ねえ、顔を上げて?別にあなたのせいじゃないでしょ?」
「そうかもしれないけど…でももし僕が強ければ…ダランなんかに…美緒さんが酷い事されずに済んだのに…」
因みにさっき私に不埒な真似を働いたのはダラン・リッケル。
リッケル侯爵家の3男で、この町の領主でもある親の爵位を笠に威張り散らしていて、格下の伯爵の息子であるロッドランドにちょっかいをかけている男らしい。
「ねえ」
「っ!?は、はい」
「私を見て?……悲しい顔してる?」
「!?……ううん。……うん、ごめん。分かった」
「ふふっ、よろしい。……それよりも私貴方のこと知りたいんだけど。貴方はどうして騎士になりたいの?伯爵さまの跡取りよね?……ごめんね、あなた男性にしては体も大きくないし……優しすぎる気がして」
私大分悪い女だ。
分かっているくせにどうしても彼の口から聞きたい。
ロッドランドはなぜか遠い目をした。
多分……彼女の事を考えているのだろう。
彼が幼き時に出会った、妖精、ティリミーナの事を。
再び出会い、彼が覚醒するきっかけとなる、彼女の事を。
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