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第57話 この世の終わりの最終魔法。ん?結界でオッケーだね

陛下の衝撃発言に変な空気に包まれる執務室。


(なっ、なっ?!……くそっ、うかつだった……いきなり型にはめてくるとは…)


苦虫を噛み潰したような表情のザッカート。


(美緒が帝国の皇子と?……くっ、いかん。すぐに連れて逃げねば…)


レルダンは体内で魔力を練り始める。

最悪“殺して”でも離脱する覚悟を固める。


「へ、陛下?おお、なんという……私は幸せ者です。……ああ、美緒さま……ついに…」


思わず口にするハインバッハ。

そして今度はゆっくりと美緒の手を取り跪き、手の甲に口づけを落とした。


「あうっ?!ハイン??!!……もう、恥ずかしい。……勘違いしてるみたいだけど?……私婚約なんてしないよ?もう」


「ふふふ、照れるあなたも可愛らしい。……陛下、婚約の儀の日取りを決めねば」

「うむ。そうであるな……美緒、どうか末永くよろしく頼む。宰相段取りを」

「はっ」


んん?

どうして話が進むの?


私承諾していないのだけれど……


「カ、カシラ?!良いのか?……確かに殿下はいい男のようだが……その……」

「美緒が望むのなら止めはせん。しかし国や政治的な意味だとするのなら……このレルダン、断じて認めん」


二人から戸惑いと決意の魔力が吹き上がる。


急転直下する状況に私の思考は停止。

おもわず念話でリンネにお伺いを立てた。


“助けて”という気持ちをいっぱいにして。


もちろん同期で一部始終を伝えることも忘れない。


(リンネ?助けてっ!……なんか変なことになってる)


(………やっぱりね。あんた一人で行かせなくてよかった。………あのさ美緒?いやならはっきり言わないと。大体どうして手の甲のキス、受けちゃうかな……まったく)


ものすごくリンネの“呆れた感情”が伝わってくる。


(……ここは異世界だし、彼らは貴族の頂点。言葉遊びは熟練しているの。今の美緒の言葉だと…ただ照れていると取られちゃうわよ?……あんたなし崩し的にハインに奪われちゃうかもね。――純潔)


(ひいっ。えっ?そ、その……あうう)


えっ?

何それ……怖すぎる。


(嫌ならガツンと言ってやりなさい)

(う、うん)


私はおもむろに魔力を練り上げる。

空間が軋みを上げ、濃厚な可視化できるほどに立ち昇る私の魔力。

勝手に話が進んでいるところに問答無用で叩きつけた。


話し合いでは太刀打ちできそうもない。


――こうなったら力づくだ。


かつて誰も経験しえない、呼吸すらままならない圧倒的な魔力が男性4人に襲い掛かる。


「「ひぐいい?な、こ、これは?!」」

「カ、カシラ?…ぐうっ!!?」

「くう、な、なんという魔力圧!?」


跪く4人。

私は冷たい目を作り、見下ろしながら言い放った。


「…私前言いましたよね?『この世界の常識に疎い』って。いい加減にしてください。私、今誰ともお付き合いする気ありません。まったく」


そしてオロオロしているハインバッハの瞳を睨み付ける。


「ハイン」

「は、はい」


「色恋よりもちゃんとしゃっきりしてください。貴方にはやるべきことがあるでしょう。……私のあなたに対する期待、間違いなのでしょうか?」


「っ!?」


「レルダン、ザッカート」

「お、おう」

「うむ」


私は二人に親愛の表情を浮かべ悪戯そうに問いかけた。


「私この国に嫁いでも良いの?……あなた達の私に向ける感情…私の勘違いなのかな?」

「「うぐっ」」


そして今度は寂しそうにつぶやく。


「ふう。……なんか寂しいな」

「「!???」」


がっくり膝をつきうなだれる二人。

お仕置き完了です。


「陛下」

「う、うむ」


「世間知らずの小娘をからかわないでください。転送ゲート、封鎖しちゃいますよ?」

「す、すまぬ……だ、だが、からかっていたわけでは…」


「へ・い・か」

「ぐうっ」


消沈する陛下。


まあ――過大な評価、嬉しくはあるけどね。


くすぐったいけど……

でも。


今はそんなことにうつつを抜かしていい時じゃない。

何より……


「……陛下、広い場所ありますか?できれば結界を張っても問題ないような場所」

「ん?あ、あるにはあるが……急に…どうされたのだ?」

「今の私の魔力、どうやら『釣れて』しまったようです。皇居を破壊されたくなければ速やかに移動しましょう」


「は、破壊?……ただ事ではないな。宰相、美緒たちを武舞場へ」

「はっ。美緒さま、皆さま、どうぞこちらへ」


私たち3人とハインバッハ、陛下、それから。

何故か宰相はじめ数人の重鎮、さらには近衛兵を引き連れ皇居の屋外にある武舞場へと私たちは移動した。



※※※※※



私たちが到着してすぐ。

ほぼ同時にありえないような強烈な魔力反応が出現する。


「はー。来ちゃったな」

「なっ?!!」

「……っ!?ガーダーレグト…殿?!」


空間を引き裂くように魔力が湧き出し、迸る魔力に長い紫色の髪をなびかせながら美しい女性が出現。


当然皇帝の住む皇居。

それなりの結界は常に稼働している。


しかしそれをまるであざ笑うかのように全く抵抗なく破壊し現れる女性。

ルビーのような紅いその瞳は獰猛に輝き、真直ぐ私を射抜いている。


「素晴らしい……まさかここまでとは…ふふっ、ルーダラルダよ、あなたの言う事は正しいのだな」


ぶつぶつと何かを口にするガーダーレグト。

そして濃密な魔力が溢れ呪文を紡ぐ。


「っ!?いきなりっ?!!!もう、えっと……よし、結界君EX無敵バージョン、えいっ!!」


私はインベントリの中から合間に研究して、ドルンと作り上げた魔刻石の完成品を取り出し天に放り投げた。


上空5メートルくらいのところで魔刻石は光を放つ――

幾何学模様の文様が展開され、あり得ないほどの莫大な魔力を周囲から吸収し結界を構築していく。


そこにガーダーレグトの、もはや伝説の中にしか存在しない古代魔術。

究極広域殲滅魔法『レア・ギガリディウム・アルテ』が炸裂。


刹那周囲が視界をなくすほどの極光と爆音に包まれた。

呼吸すらできない研ぎ澄まされた魔力。

皮膚に突き刺すような鋭い超高温があたりを蹂躙していく。


カッ!!―――――――――――

ズドオオオオオオオオオオッッッ―――――――

バキベキグシャアアアアア――――


余波で周囲の樹木が吹き飛ばされ、深いクレーターを形成。

結界の形を残し土が巻き上げられる。


効果範囲を集約したのだろう。

かろうじて皇居の建物は破壊されずに済んでいた。


陛下と帝国の重鎮、近衛兵たちはまるで魂が抜けたようにへなへなと崩れ落ちた。



※※※※※



数瞬後――


魔法の放出を終え、自らを結界で守り見ていたガーダーレグトがゆっくりと地上に舞降り言葉を漏らす。


「――効果範囲を集約させたが……む?魔道具だと!?…わらわも見くびられたものだな……そのようなもので…?!……ははっ、まさか無傷とはっ!」


やがてはれていく、大量の土煙と霧散していく濃厚な魔力。

私は改めて彼女の美しい瞳に視線を向けた。


「こんにちは。……ガーダーレグトさん?私は美緒。一応ゲームマスターやっています」

「これはご丁寧に。……ふむ、どうやら自己紹介は不要のようだな……先ほどの魔道具、貴様が作ったのか?」


「ええ、まあ。……私が本気出しちゃうと……“弱い者いじめ”になっちゃうんで」


ガーダーレグトの額に青筋が浮かぶ。

そして悍ましくひきつった笑顔を顔に張り付け、私を睨み付けた。


(っ!?今の彼女……まだ感情あるのね……良かった。――まだ、間に合う)


「ほう?わらわの聞き間違いか?『弱い者いじめ』と聞こえたが…まさかそんなたわごと、言ってはおらんよな?」

「いいえ?言いました。だってあなた……私より“だいぶ弱い”ですよ?」


そう言いつつ私は魔力をほとばらせた。


事実だ。

今のレグはまだ弱い。

つまり『シナリオは始まっていない』という事だ。


私は内心大きく安堵の息を吐いた。


「むうっ、凄まじいな……確かに。……貴様の魔力、底が見えん。なるほど、わらわを凌駕するか……だがしかし、それだけが力と思わぬことだ。ふうう、魔力変換『金剛神速』」


ガーダーレグトは自身を纏っている魔力を秘術で物理と俊敏値に変換、一瞬で私の間合いに入り拳を振りぬいた。


ゴガアアアーーーーーーン!!!


まるで爆発音のような音が私のすぐ近くで炸裂。

私は数歩足をよろめかした。

衝撃とあまりの踏み込みの速さで視界が砂埃に奪われる。


「っ!?美緒っ??!!!!」

「ぐう、許さぬ、美緒――」


ザッカートとレルダンが思わず口にする。

だが――


「くっ、貴様……いぎっ?!……フ、フハハ、フハハハハハハ……完敗、だ…な……」


そう言い残し気を失うガーダーレグト。

砂埃が落ち着き、視界が開けたそこには――


在りえない方向にねじ曲がり、激しく破壊されたガーダーレグトの腕を掴んだ無傷の美緒が佇んでいた。


「ふう。久しぶりだったけど…うまくいったね。……あっ、後でドルンに報告しなくちゃ。もう少し効果範囲、広げたいよね」


私は荒れ果てた皇居の広い庭を感情の籠らない瞳で見つめ独り言ちた。


それを目撃したレルダン、ザッカート、そして皇帝以下重鎮たちの顔には驚愕の表情が張り付いていたのは言うまでもない。




皇居の庭、どうしよう?


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