第44話 思い出との狭間で
楽しかった。
ああ、私本当に楽しかったんだ。
【魔に侵されし帝国】
夢中で遊んだ。
それこそ寝る間も惜しんで。
他の事はすべて置き去りにして……
流れ来る私の記憶――私の居た…私の生きる意味。
それは色を無くしていく。
※※※※※
はあっ。
さすがは世界一の聖騎士ね。
スッゴク強いわ。
まあこれは入門編、難易度はイージーだもんね。
ふう。
ロッドランド…カッコいいな。
※※※※※
ああっ、アリアが死んじゃう……
レストール?
どうして間に合わないの?
※※※※※
エレリアーナ……
貴方のお母さんは今でもあなたの味方なのに?
どうして?
ああ、お母さんが……
※※※※※
ふふっ、さすがドラゴニュートね。
凄いわランルガン。
そうよ、いま、ブレスをっ!!
※※※※※
素敵。
本当にあったのね……
伝説の空中都市……
レアリラードルード。
天使?
ああ、そうか、あなたは天使族の英雄……ミリナ・グキュート……
覚醒したのね……
悲しみを乗り越えて……
※※※※※
凄い!!
天を覆いつくす伝説の古龍の軍勢……
いよいよアランが本領を発揮したのね。
うう、龍姫エスピア……うっとりするくらい美人。
おめでとう、アラン。
お幸せに。
……ちょっと妬けちゃうけど……
※※※※※
さすが伝説の忍。
マールは安定感抜群ね。
うあ?その言葉遣い?
痛いよ!?
…どうしてこうも中二病っぽいの?
※※※※※
エンシャントドラゴンを女の子が手なずけている?
あれは……ナナ?
もう、侯爵家の淑女なのに、冒険者最強ってどういう事?
あーあ。
お父様も心配ね。
でもあなたの本名は……
※※※※※
そうよ、立ち上がって!!
貴方が自ら立ち上がらないと意味がない。
頑張って。
ううん、あなたはもう十分頑張ってきた。
出来るわ。
そうよ、あなたなら、ロナンならなんでもできるよっ!
※※※※※
ガーダーレグト……
恐ろしい。
でもなんで彼女は空っぽなの?
お母さんは?
お父さんもいないの?
ねえ、いくらシナリオでも酷いよ。
強さの代償が感情なんて……
このシナリオ…嫌だ。
※※※※※
ああ、みんな。
大好きだよ。
私はあなたたちを……
愛しています。
※※※※※
……くすっ。
いつも仏頂面のギルド長が、エルノール様も笑うのね……
……笑う?
私……いつ彼と話したの……
……リンネ………
ああっ、あああああっ!??
わたし……
そっか。
私は最初から……
異物だったんだ……
きっと私、東京のあの部屋で………
死んだんだ……
だからこれは夢……
そして思い出………
ああ、
楽しかった……な……
私の意識は暗い何もない場所へと落ちていった……
※※※※※
「ダメだよ?美緒ちゃん。……君はまだ許されない。足掻くんだ」
「………????」
「はあ。本当に奏多さんそっくりだね……まっすぐで一途で……まぶしすぎるよ。君たち親子は……」
「………おとう……さん…?」
闇に包まれていた私。
ほのかな光がまとわり出す――
「うん。きっと会えるよ?でも今はまだ駄目だ。さあ、戻るんだ……君を本当に愛してくれる、あの世界へ。――皆が待っている」
「……違うよ?だって私がいると……みんなが喧嘩する。憎しみ合う……嫌だ……怖い……いやあ……ヒック……グスッ……うあ、あああ、うああああああああああ…」
泣きじゃくる私……
ああ、本当に子供みたいだね……
………あれ?
何で私が私を見ているの?
わたし……誰?
今まで経験のない感情が流れ込んでくる。
知らない感情――
そして想い――
「人だって2面性で三つ巴なんだよ?美緒ちゃん。……君は善性が過ぎるんだ。それはいいことかもしれないね……でも心は2面性。もう一人の君が苦しんでいるんだよ?」
光が――
私の心からもう一つの光が仄かにその色を増していく。
「……怖がらないで。……受け入れるんだ。………だって君には……愛してくれる仲間がいる」
「仲間………でも、きっと……怒っている。……私もう、許されない……だって、逃げちゃった……」
“声だけ”の人は私を抱きしめる。
暖かくて心が溶けていく。
「美緒ちゃん?君は頑張ったでしょ?……信じて?仲間を……そして守山美緒、君自身を」
「……あなたはだあれ?………知ってる感じ………」
「今はまだかな。そのうち分かるよ?そうだ。今までいっぱい頑張った美緒ちゃんにご褒美をあげる」
「――ご褒美?」
私の体が虹色の光に包まれる。
ああ、あああ。
分かる……これが……
「賢いね。そうだよ。転移魔法だ。……これであの世界の使い手は6人目だね」
「……6人?」
「うん。君はもう4人は知っているはずだよ?残りの二人は……君はまだ知らない」
「っ!?……それって……ゲーム以外の人ってこと?」
何故か躊躇する感情が流れ込んでくる。
「あー、これ以上はだめだって……“兄さん”が警告してる」
「っ!?兄さん?……あなた……」
「おっと、それ以上はダメ。………美緒ちゃん、見えるものだけに囚われないでね。みな2面性があって三つ巴だよ?君を好きだからこそ仲良くもするし……本気だから……争うんだ」
私をいたわる想い。
消えていった心が再構築されていく。
「……君は優しすぎる……ふふっ、本当に奏多さんそっくりだ……聖域に送るよ?後は転移して………悲しみで死にそうなリンネを……彼女を安心させてあげて」
突然私の脳裏に、泣きじゃくっているリンネの顔が浮かぶ。
暴力的なまでの愛おしい感情――
それがあふれ出す。
「っ!?……リンネ……ああ、会いたい。会いたいよっ!!」
きっと離れたのは一瞬だと思う……
でもいま彼女がいないこの空間……
私の大切な……妹。
心が張り裂けそうだ……
「さあ、答えは出たね」
「……うん」
顔の見えない男性はにっこりとほほ笑んだ。
そう伝わってきた……
見えないのに不思議……
「じゃあね、美緒ちゃん。……今度は自力でおいで」
「うん。……ばいばい……『またね』」
「っ!?ははっ、やっぱり君は最高だ。ああ、いつまでも待っているよ……」
私の心は――
闇に溶けていく。
でもそれは。
安心の、そして。
再生の始まりだったんだ。
※※※※※
皇居――控室。
私は…ルルーナは。
なぜか冷静にその様子を瞳に映していた。
※※※※※
「いやあああっ――――美緒??!!美緒っ、ああっ、あああ、ああああああっ!!!!」
リンネ様が狂うほど泣いている。
魔力をほとばせながら……
なんて悲しい魔力。
まるで命その物を削るかのよう……
打ちひしがれるエルノール。
レルダンも、カイマルクも…
スフォード、レイルイド、ファルカンの3人も。
皆まるで――
死んだように消沈してしまっている。
自死しようとしたレルダンを押さえ、ミネアが怪我をした。
今アリアの魔法で治しているけど……効果が驚くほど薄い。
美緒がいないからだ。
「美緒……ごめんね…守るって、力になるって……ヒック、あなたを支えたいって……グスッ、おもって…いたのに……うああ、ああ、あああああああああああああ」
私はたまらず…嗚咽をあげる。
レリアーナは涙を浮かべ静かにエルノールに近づいた。
「兄さま?これで満足?……兄さまの勝手な想いが……美緒を消したの。……返してっ、返してよっ!!私、美緒のこと好きだった……大好きだったのにっ!!うわあ、あああ――――」
「……すまない……私は…何と愚かな……美緒さま……終わりだ……もうだめだ…グッ…うあ、ううあっ……」
悲しみがあふれ出す。
希望の灯が……
消え……
「みんな、ごめんなさいっ!!」
作者、うかつにも泣きそうでした。
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