第253話 伝説のギルド、総力戦
呼吸も出来ぬほどの濃密な悪意を纏う魔力。
黒煙とともに戦場を満たすそれに、ドルンは顔をしかめる。
彼らの任務――
無辜の民を救う事。
「…くそが…結局…全員……誰ひとり助けられなかった…」
虫の息でぐったりとするライネイトを抱え、彼は決断をする。
目の前で幸福な表情を浮かべ、自らを爆弾へと変貌させ命を散らす少年たちの顔。
焼き付く心を冷やす絶対に承服できぬ現実。
その事実がドルンの心をかき乱す。
「戻るぞ…ここはもう終わりだ」
「ドルン…た、確かに」
疲弊し、肩で息をするラムダス。
最期の結界魔刻石、それに魔力を注入しドルンたち3人は新造飛空艇へと駆け込んだ。
※※※※※
「にゃ?…ライネイト?…ひ、酷い怪我にゃ」
「すまん、ミネア…ライネイトを頼む」
新造飛空艇壱番艦。
美緒達ギルドの拠点として、改造を重ねたまさに魔導科学の結晶の搭乗デッキ。
すでに臨戦態勢で待機していたミネアは、優しくライネイトは抱きとめた。
「…情報は?」
「うにゃ。なにもないにゃ。…全然通信、来ないにゃ…そんな余裕なさそうにゃ」
「…ああ」
ちらと今は入ってきた方向に目を向けるドルン。
壁越しですら、怖気を誘う圧倒的魔力が暴れ狂う。
改めて、ドルンの額から冷や汗が流れ落ちた。
※※※※※
今回の作戦。
当然だが過去一過酷だし、全員が相当の覚悟を決め臨んでいた。
何しろ相手はこの世界の常識を凌駕する悪魔たち。
当然皆“希望”を胸に抱いていたものの、付きまとう不安。
「全滅」
その脳裏によぎる文言が、ミネアとドルンの顔をしかめさせる。
だが。
まだあきらめずに戦っている大切な仲間たち。
二人は唇をかみしめた。
※※※※※
「こらこら。そんな顔するんじゃないよ。さっさとライネイト、手当てするよ」
「う、うにゃ。分かったにゃ」
一瞬凍りかけた空気。
それを一言でファルマナさんがぶち破る。
本来非戦闘員のファルマナ。
でも彼女は今回の遠征、回復役として志願していた。
「なんだい。大の男が。…あんたレグといい仲になったんだろ?しゃっきりしな」
「うぐ…お、おう」
「あんたの愛おしいレグは今美緒と一緒だ。グダグダしてんなら、出来ることを探すんだね」
吐き捨てテキパキと応急処置をし、ライネイトを担ぎ上げるファルマナ。
とても60過ぎの女性の動きではない。
そんな時、デッキに魔力があふれ出す。
エルノールとアルディ、そして装備品をズタボロにしたザッカートとランルガンが転移してきた。
「うにゃ?!親方!!…よがった…無事だったにゃ」
「うおっ?!ちょっ…うぐう」
突撃する勢いで、ザッカートにしがみつくミネア。
ミリナの超絶スキルで傷が癒えたとはいえ、ついさっきまでザッカートは全身ボロボロにされていた。
鈍い痛みに思わず唸ってしまう。
「うにゃ?痛いにゃ?」
「うぐ…ま、まあな」
どうにかミネアを放し、眼光に鋭さが戻るザッカート。
デッキにいる仲間に、今の状況を伝える。
「美緒は無事だ…マールさんたちもな。…今美緒はファナンレイリ様のところへ行った…美緒は悪魔、すでに2体…吸収済みだ」
「っ!?」
驚愕の事実にミネアは声を失う。
だが。
実際に美緒は、以前のザナンクを含めすでに4体の悪魔を吸収済みだ。
ノルノールの顛末を知らないザッカート。
彼の認識ではここまでだった。
「…そうかい。ありがとうね…あんたらも辛そうだ。エル坊」
「う、うむ」
「…あんた、早く休みな…美緒のところ、行くんだろ?ほら」
そういい、超絶回復役を投げるファルマナ。
それを受け取ったエルノールの瞳に覚悟の色がにじみ出る。
回復役を飲み干すエルノール。
その場に座り込み、精神を集中させる。
『瞬間回復』
その効率をとことんあげる、秘術の一部だ。
「なあ、ファルマナさん」
「…ダメだよ」
「くっ」
その様子に、ザッカートも請うような瞳をファルマナに向ける。
しかし即座に拒否されるザッカート。
「…あんたは既に役目を果たした。違うかい?」
「だ、だが…」
「…あんたはザッカート盗賊団の頭領だ。どっしり構えるんだね。…みな命をかけてるんだ。…そうだろ?」
「…そう、だな」
運ばれたライネイトは大怪我だ。
それに数人の仲間はすでに医療ルームで治療を受けている状況。
自分の希望だけで…
命の保証のない場所へ行くのは――頭領として失格だ。
「皆は生きているのか?」
「当り前さね。今アリアとサクラ、それからマイが必死に看病している。あんたも顔を出してやんな」
※※※※※
まさに総力戦。
実に今ギルドで留守番をしているのはザナークとハイネ、里奈と幸恵、そして琴音とトポの6名。
そして休息を取り眠っているエレリアーナとアラン、エスピアの3名のみ。
そして。
ダンジョンアタックに赴いているレストールたち4人以外、
非戦闘員を含め、全員が。
この一番艦で皆のサポートの為、その魔力を噴き上げさせていた。
世紀の決戦。
この世界の命運をかけた戦い。
当然だが美緒は最後まで反対していた。
最悪の事態、それを考慮せざるを得ない今回の作戦。
だが。
『バカをお言い。あんた。それだけは承服できないよ。もしおいていくのなら…歩いてでもあたしゃ駆け付けるからね』
ファルマナの真剣な言葉。
美緒は顔をしかめつつも――心の奥底から凄まじい安心感を感じていたんだ。
※※※※※
続々と一番艦に帰ってくる、美緒のギルドの精鋭たち。
多くの怪我を負い、それでも無辜の民を守り他の艦へと案内するその姿。
ファルマナの瞳に涙が滲む。
「すごいよ…あんたたち…帰ったら大盛り、サービスしてやるからね」
けが人の手当て。
それは過酷を極める。
普通なら即死していてもおかしくない大怪我。
ギルドの皆は、笑いながらも――
誰一人諦めることなく、その任務を全う。
ついに飛び立つ6隻の新造飛空艇。
安息の地、ルギアナード帝国第2拠点。
多くの救われた民たち、彼らは後世に伝える。
「伝説が繰り広げられていた――俺たちは…救われた」――と。
伝説の美緒のギルド。
その戦いは、まだ終わらない。
そして――
最強の悪魔との邂逅。
それはまさにこの星を揺るがす、かつてない衝撃をもたらす。
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