第252話 私は原神を超える
激しい破壊の閃光――
そしてそれを凌駕する優しくも悲しい清廉な水の魔力。
激しく拮抗する極大な力。
全てを飲み込むそれは――ついに凄まじい魔力と悪意に包まれ。
大精霊フィードフォートの祈り。
それをあざ笑うかのように――
瞬間でファナンレイリたちを消し去る――はずだった。
「極限再生!!旭日の大輪!!」
「破壊の調べ――終章『スサノオの咆哮』!!」
「っ!?」
認識が。
現実が。
現象が。
まさに反転していく。
時間軸が軋みを上げ、空間の摂理が塗り替えられる。
かつてない異常な魔力の高まり――共鳴しモノクロに包まれるそれは。
――ノルノールを飲み込んだ。
「うぐ、きゃああアアアア…アアアッッッ??!!!」
刹那はじけ飛ぶ、ノルノールだったモノ。
精神を引き裂くような凄まじい絶叫をあげ地面に叩きつけられ。
“ぞぶり”と見たことの無い魔法生命体が痙攣、離脱しようと数多の触手のようなものが地面を這いずりだす。
「レイリ!!無事?」
「う…あ…み、美緒?…はっ?!…フィーが、フィーが!!」
優しい腕。
それに抱きしめられ、ファナンレイリは大粒の涙をこぼす。
ほぼ全滅の悲惨な状況。
倒れ伏す、既に原形をとどめていないガナロ。
全身を激しく引き裂かれ、どうして立っているか理解のできない状態のミコト。
種族特性の羽を引きちぎられ、マルレットを守ろうと彼女に覆いかぶさる、既に意識のない3人の妖精――
余りの惨状。
美緒は涙をこらえつつ、キッとその顔を上げ。
ノルノールだったモノを睨み付ける。
心の奥底から湧き上がる憎悪。
弾ける怒気、そして練りあがっていく不協和音を奏でる超絶魔力。
「…許さない…私の大切な…お前は、お前は!!」
ゆらりと立ち上がり、ファナンレイリの抱擁を解き歩を進める美緒。
だが――
「美緒、ダメだ…破壊に…怒りに飲まれるな」
後ろから美緒を強く抱きしめるマールデルダ。
その瞳には慈愛がまとう。
優しくも覚悟を纏う強い腕。
精神の奥底から美緒を想うその気持ち。
幾重にも美緒を中心に渦巻いていた魔力が霧散していく。
「っ!?…ふう。…ありがとう、マール」
「ふむ。…大丈夫だ。みな生きている」
「うん」
※※※※※
極限の再生――アマテラスを顕現させたミリナ渾身の祈り。
深く包み込む慈愛の想い。
かつて誰も経験しえなかった光はまさに伝説を紡ぐ。
一瞬の静寂、そして…
※※※※※
「うぐう、痛い…痛い痛い痛い!!!この、この、コノク…ソド…も!!!」
破壊の魔女ノルノール。
彼女は人ではなかった。
悪魔の実験。
それにより作り上げられた“異物の集合体”。
おそらく万に届こうかと言う、魔力に特化した生物たちの成れの果て。
そこに与えられた虚無神の祝福。
破壊しか成すことのできない生命体――
呪いそのもの。
「…虚無神……いや、鳳乙那…許せない…こんな」
マールデルダの抱擁。
それにより飲まれかけた意識を取り戻した美緒は、そのモノに視線を向ける。
すでに精神は崩壊。
そしてあふれ出すすさまじい魔力。
ノルノールだったモノは、禁呪を紡ぐ。
「げらげらげら…滅べ…すべて…キャハハハハ…っ!?」
「『吸収』……もう、終わりにしよう…」
手をかざす美緒。
凄まじい光が爆発的に迸る。
「ひうっ?!ひぎいいいいいっっっ…… 」
「……っつ」
美緒の体を起点に、誰も経験のない術式が構築されていく。
悪夢のような光景。
すでに吸収した悪魔はノルノールで4体目。
その力と想い…狂ったそれは、美緒の精神を蹂躙していく。
しかし。
(…負けない…絶対に……私は…)
自らを抱きしめ、渾身の解呪を自らに付与する美緒。
途端に経験のない重圧、物理的なそれは軋みを立て、美緒の全身を壊していく。
耳障りな骨の折れる音。
舞う血しぶき。
「うあ?!美緒?…美緒――――!!!!」
「う…あ…み、美緒ねえさん…?!!」
刹那――
次元そのものが色を無くし概念を失う。
この場に居る皆の脳裏に声が届く。
(…大丈夫だよ…信じて…私を…守山美緒を…)
カッ!!!!!!!
全てを巻き込む極大の閃光。
戦場はその情報を失っていた。
※※※※※
「…む」
「??…グラコシニア様?」
ガザルト王城、最奥の部屋。
そこでついに目覚めたグラコシニアは目を細めた。
「ふん。…主も人が悪いな…これを捕縛だと?……無理だな」
「グラコシニア…様」
既にミュナルダーデも感知したすさまじい魔力。
この城から3キロほど離れたノルノールが赴いたであろう場所。
最強の悪魔。
古参の圧倒的強者である2柱。
彼らは自分たちが震えている事――それに気づくことが出来なかった。
「…想定外…だが」
「……」
二人は魔力を纏う。
そして。
「…すまんが貴様を守る、それすら敵わぬぞ?」
「承知しています。でも…私の使命、果たさぬ理屈はありません」
覚悟を決めた2柱の悪魔。
その姿は、まるで幻のように最奥の部屋から消えていた。
※※※※※
隔絶され秘匿されたどこかの次元――
見渡す限りの草原。
優しい風に包まれたガゼボで、美しい少女はうっとりとした顔で紅茶を口に含む。
「あら。…力、得たのね」
「……まあ、ね」
黒髪の少女。
あどけなさの残るその少女は、にこりと笑みを浮かべ、目の前の少女に親愛の瞳を向ける。
「ふふ。可愛い顔が汚れているわよ?」
「……あなたには負けない」
上品にカップをソーサーに戻す少女。
その身体から爆発的に魔力が迸る。
「ふふ。…宣戦布告――そういう事かしら?」
「そうね」
刹那はじける二つの極大な魔力。
瞬間で切り替わる景色――
真っ暗な底の見えない大穴の上、二人は魔力を纏い対峙する。
「まったく。せっかちね…まだでしょうに」
「知ってる…でも…」
もう一人の黒髪の少女――美緒は瞳に力を宿す。
「私はあなたも取り込む。いつか、絶対に!!…あなたの好きにはさせない」
「ふうん」
気付けば…すぐ横で、美緒の黒髪を掬う少女。
背中に激しい恐怖が駆け抜ける。
「…あら。…傷んでいるわ…ふふ。…待っていてあげる…早く来なさい?」
「……くっ」
(…届かない…今は…)
美緒は唇をかみしめる。
でも。
『…美緒ちゃん、悪魔を吸収するんだ。…そして…』
脳によぎる、真のゲームマスター黒木優斗の言葉。
(分かってる…だって……)
全身を覆いつくす、かつてない恐怖。
美緒はそれを振り払い、美しい表情を顔に張り付けた。
「待っていなさい…私は…私、守山美緒は――」
「……うん?」
そして解き放つ――
美緒がレリウスリードで獲得した大いなる愛。
「私は――原神を超える」
※※※※※
光が弾ける。
世界はその情報を無くし――
やがて美緒は。
大切な仲間。
ファナンレイリ、ミコト、マルレット。
ティリミーナたち3人の妖精に大精霊フィードフォート。
彼女たちに抱きしめられ、その瞳を開けた。
かつてない闘志。
その命の輝き――瞳に宿しながら。
レリウスリードの時間、
それは最終章へ向け静かに時を刻んでいた。
大晦日ですね。
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