第247話 『鉾』の意地
目も開けられぬ強烈な光。
ザッカートの意地、
渾身の“乾坤一擲”が放たれた。
「ぐうっ?!ウグワアアアアアッッ――」
すでに神槍ブリューナクに、半身を滅ぼされていたレイザルドの絶叫が響き渡る。
光の粒子まで洗練された圧倒的な研ぎ澄まされた魔力。
細胞レベルまでをも蹂躙、レイザルドはその存在の維持に全力を注いでいた。
「……クソッたれが…」
しかし――
かの悪魔は肉弾戦特化。
超絶なダメージを受けつつも、凄まじい笑みを浮かべ。
かつてないほどの魔力を解き放つ。
すでに肉体はズタボロ。
あちらこちらは分解され、まさに透けてしまっている。
だが。
「うぐっ?!ぐあああっ?!!」
「っ!?アルディ!?」
瞬間吹き飛ばされるアルディ。
腹に大穴が空き、口からは赤黒い血があふれ出す。
「…ふん…やっと一匹…いや、2匹目か」
凄まじい踏み込み。
まさに光を凌駕するそれは、
隠匿し、隠れていたアルディを貫いていた。
スキルの反動で急速にその生命を失っていくザッカート。
瀕死のアルディ。
エルノールの脳裏に“全滅”の文字がよぎる。
「ったく。…マジでしんどいんだよ手前ら…覚悟は良いか?」
猛獣のような獰猛な笑みを浮かべるレイザルド。
彼だって相当のダメージを受けているが。
まさに瀕死の魔獣のような危なさを纏い、さらなる行動へと移る。
「っ!?」
「てめえだな?…回復師は」
貫かれる腕。
エルノールの胸元に深々と刺さるそれは、まさに命の動きを終焉へと導く。
「かはっ」
崩れ落ちるエルノール。
全滅――
まさにその様相に、レイザルドはほっと息を吐き自らに魔力を巡回。
回復を図っていた。
「…ふん。ヒューマン族ごときにこの俺様がな…グラコシニアに文句言われちまう」
正直舐めていた。
絶対者である悪魔。
当然圧倒しての完全勝利、そう信じていた。
「…まてや」
「…ほう?」
既に回復が済み、ほぼ問題のない状況まで持ち直したレイザルドに、地の底から響くような声がかけられる。
最初に瀕死に陥ったランルガン。
その瞳には決意と覚悟が灯る。
「ふん。キサマか。…おとなしく寝ていれば助かったものを」
「そういう訳に行くか。…俺は鉾。…貴様を貫く鉾だ」
ゆらりと立ち上がるランルガン。
その腕には神槍ブリューナクが握られていた。
「…確かにな。それは厄介だ。…だが武器の力、てめえじゃねえ」
「…そうかよ」
突然消えるブリューナク。
その様子に何故かレイザルドの背に怖気が走る。
「俺はドラゴニュート最強の戦士、ランルガン」
「……なんだと?」
「俺の使命――果たして見せる」
爆発的に漲るランルガンの魔力。
覚悟が、
意地が、
何より命を賭しこの状況を作り上げた仲間への想い。
そして。
美緒への想い――
ランルガンの腕がレイザルドを貫く。
「がはっ?!!」
「…てめえは許さねえ」
吹き飛ぶレイザルド。
膝が笑い、体が震える。
恐怖。
経験のないその感情に、レイザルドの精神は激しく動揺する。
「な、なんだと?…ぐはああっ?!!」
「許さねえと言った!」
続けざまに薙ぎ払われるレイザルド。
かつてないダメージに、彼の脳内に戦慄が走る。
(くそっ、さっきまでのダメージ…完全に回復しちゃいねえ…)
ザッカート渾身の乾坤一擲。
確実にレイザルドの精神体にまで、拭いきれぬ大ダメージをもたらしていたのだ。
「…てめえは止める……鉾である俺がな!!」
「くそが…がああああああああっっっっ?!!!」
大地が揺るぐほどの振動、
振りぬく拳が空間までをも切り裂いていく。
(クソッたれ……一番厄介だったのが…コイツ…)
レイザルドにかつてない感情が支配していく。
根源にある恐怖。
抗えない圧倒的な力。
そして。
消えゆく意識。
ついにランルガンは。
ガチンコのタイマンで。
物理戦闘最強のレイザルドを蹴散らしていた。
頬を撫でる風は既に異常な熱を放っていた。
一面がまるで死の荒野、
黒煙がもうもうと立ち込め、呼吸すらままならない。
ドカッと腰を下ろすランルガン。
その瞳からは涙があふれ出す。
(…すまねえ…ザッカート…アルディ…エルノール……)
最期のこの時のため、ブリューナクを自らと同化させていた。
キャパを超える破壊の力。
それは遂に宿主であるランルガンまでをも滅ぼし始める。
まさに禁呪。
ランルガンはすでに覚悟を決めていた。
まごう事なき死。
魂の消滅。
彼は既にそれを受け入れていた。
やがて全身から抜けていく力。
そして細胞レベルで始まる分解。
(……最期に……美緒に……あいたかっ――――)
閃光が迸る。
緑の神聖な、まるでオアシスのような温かく優しく包み込む光。
そして目に入る美しく愛おしい姿。
(……俺は……死んだのか?…っ!?…体が……)
「ばか。…無茶しないって、約束したでしょ?」
包み込む愛おしい感触に心ひく香り。
美緒がランルガンを抱きしめていた。
「……み…お?」
「うん。お疲れ様。あとは任せて…ミリナ、お願いね」
「ああ。任されよう…“アマテラス”――極限の再生!!」
大地を包み込む鮮烈な光。
大気が歓喜の色に塗り替えられていく。
倒れ伏すエルノールとザッカート、そしてアルディが光に包まれる。
「…う…ん?…マール?」
「うむ。師匠…酷くやられたな……修行が足りぬのではないか?」
「ははっ。…そう、かもね」
皆の命――
おそらく失われたであろうその光。
まさに美緒の異常な幸運値、そして覚醒したミリナのスキル。
そんな中美緒は――
悪魔レイザルドを吸収。
爆発的にレベルが上昇していた。
『壊せ――破壊しろ…全てを…』
心の奥に、悍ましい破壊の衝動を獲得しながら――
歪む表情。
美緒はそれを誰にも見せないよう、天を見上げていた。
※※※※※
ガザルト王宮最奥の秘匿された寝室。
まるで凍り付いたような静寂の中、ベッドのきしむ音が響く。
眠りについていた悪夢。
ついに目を覚ます――
「ついに……この時が来た…」
凄まじい魔力があふれ出す。
部屋の物理法則は塗り替えられ、濃密なそれはまさに絶望を纏う。
最強の悪魔、グラコシニア。
その枷、つまり対象である美緒のレベルアップ。
遂にその段階に美緒はたどり着いていた。
激戦は最終章へと突入していくのだった。
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