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第245話 乾坤一擲

(くそがっ!格上とかそんなんじゃねえ…存在の次元が違う)


視認できない速度での数多の攻撃。

確実に捉えているそれは、目の前の絶対者には効果が見られないようだ。


「ふん。やるじゃねえか。

…この俺様に怪我を負わすなんてな」


左腕を根元から切り飛ばされたはずの悪魔レイザルドはその顔に獰猛な笑みを浮かべ。

噴き出す圧倒的な魔力と闘気。


瞬時に回復し、凄まじい打撃を繰り出す。

空間が軋みをあげる。


かわすザッカート。

しかし直撃していないにもかかわらず余波により吹き飛ばされ、ダメージが蓄積していく。


(ちいっ!?躱したはずなのに…マジで厄介だぞこれは)


レイザルドの打撃。

マスターモンクの神髄。


つまり虚を伴う実の拳。

見た目の実体を纏う膨大な闘気が、その攻撃範囲を著しく増していた。


ズドオッ!!!


「があっ!?」


ありえない破壊力を秘めた正拳付き。

周囲を巻き込みザッカートを捉える。


全力のガードをあざ笑うかのような出鱈目な破壊力。

完璧に防御姿勢をとったザッカートは今の一撃でほぼ瀕死の状態へと陥っていた。


「ゴフッ」


口から吐き出される大量の赤黒い血。

臓腑は既にぐちゃぐちゃ、しかし眼光はさらに鋭さを増していく。


「ほう?直撃でも死なねえか。…なあ、お前ら」


その様子を冷めた目で見ながら、隠匿を使い陰に隠れ魔力を練るアルディの瞳を射抜き問いかける。


「…軍門に下れ」


突然の提案。

思わずすがりたくなる、友愛に満ちた物言い。


「…わりいようにはしねえよ?…なあ」


(っ!?…コイツ…)


絶望的な戦場。

繰り出す攻撃は想定を超え。

与えるダメージは悉く回復され。


そんなタイミングでの投降を促す言葉。


揺れる。

すがりたくなる。


だが。

その“感情”こそが、レイザルドの力を増していく。


「ギャハハハ!!最高だよお前ら。…全殺しだ。…肉体ごと喰らってやる」


さらに増していく闘気。

ランルガンをかばいながら瞬時の転移を繰り返しているエルノールに絶望が襲い掛かる。


(くうっ?!…まさか、これほどとは…)


刹那――


全てを凌駕する魔力が空間を引き裂き。

レイザルドの半身が消し飛ぶ。


「がああああっ?!!」


避ける空間。

神槍ブリューナクがレイザルドを捉えていた。


(っ!?今だ…今しかねえ!!)


集約する魔力。

ザッカートは、砕けた全身の痛みを無視して目を閉じる。

思い浮かんだのは、美緒の笑顔だった。


――守りたい。


その想いが、最後の魔力を震わせる。



ザッカートが光に包まれた。



「乾坤一擲」



命の光。


輝きを増すそれが、レイザルドを包み込む。




世界から音が消えた。



※※※※※



空間が歪み、あまりの魔力の流れで法則自体が捻じ曲がる――


破滅の魔女ノルノール渾身の極大魔法12発同時詠唱。


すでにその場所には底の見えない大穴が、黒煙に包まれ視界が完全に失われていた。

発生したプラズマが、あたりを青白く染め上げる。


「…ふうん♡…まだ生きてるの?…キャハ。すんごいねえ♡」


両肩に生えた二つの顔が、ぞぶり――と湿った音を立てて口を開く。

よだれが地面に落ち、じゅっと蒸発した。

恍惚の表情を浮かべたノルノールはまるで獲物を見るかのようにその瞳を細めた。


「くうっ?!」


渾身のガードと結界術。

しかしファナンレイリたちはかつて経験のないダメージを受けていた。


すでに魔力は底をつき、全身を覆う酷い火傷と裂傷。


皆を守るように身を犠牲にしたミコトはすでに気を失い、少女の姿で倒れ伏していた。

マルレットも瀕死の重傷、妖精たちのゴーレムはすでにその原型をとどめていなかった。


「この化け物があああっっ!!」


黒煙を突き破り、手負いのガナロが渾身の攻撃を繰り出す。

しかし――


「キャハ♡…まだ動けるの?……いい加減飽きたんだけど?」

「っ!?」


閃光――


捕らえたかに見えた瞬間、ガナロは全身を焼き尽くす青く輝く炎に包まれる。


「ぐうっ?!うあああああああっっっ!??」


瞬時に焼き尽くされていくガナロの体。


「絶無結界陣!!」


かろうじて届くファナンレイリ渾身の結界陣が、ほぼ焼き尽くされたガナロを包み込む。

ボロ雑巾のように崩れ落ちるガナロ。


その様子をノルノールは興味を無くした瞳でちらと見降ろした。


(…勝てない)


ファナンレイリの背中を、経験のない怖気が支配する。

余りにも隔絶した実力。


そもそも法則自体、違う。


極大魔法の連続――

それ自体本来この世界の摂理を凌駕しているのだ。


大量に消費された魔素はその復元のため、ファナンレイリをはじめ、この戦場にいる全ての魔力を吸収。


つまり。


ノルノール以外の者達。

ほぼすべての魔力を奪われた状態となっていた。


「…じゃあね…バイバイ♡」


そして――


さらに紡がれる12の極大魔法の詠唱。

軋みを上げ空間の悲鳴が響き渡る。



絶望。

だが。



「…ここまでか…レアニディー…わらわもすぐに行く…」


大精霊フィードフォートは瞳をぎらつかせ、禁呪を紡ぐ。

残された神聖な生命力、濃厚な魔力へと変換されていく。


その様子にファナンレイリは目を見開く。


「っ!?ダ、ダメよ、フィー!!!」


「……姉さま」


涙をこらえるように微笑みながら、フィードフォートは続ける。


「たくさん笑って、たくさん怒って……楽しかった。

私は、幸せでした」


精霊界顕現――

大精霊渾身の最終秘術。


世界の改変、そして掌握。

対価は――生命力。


空間に清廉な水の粒子が沸き上がり始める。



全ては目も明けられぬ閃光に包まれた――


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