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第243話 神槍ブリューナク

ほぼ同時刻。


悪魔ミュナルダーデの構築した“物質移動”の魔法によるトラップ。

それにより飛ばされた対レイザルドのアルディ達4人。


その筆頭であるランルガンは。

超絶武器である“神槍ブリューナク”ごと、右半分の体を吹き飛ばされ口からは赤黒い血を吐き出していた。


「ふん。脆いな…よくその程度で俺様と戦おうなんて思ったもんだぜ」


次元が歪むほどの魔力を纏った拳を掲げ、レイザルドが冷めた瞳で独り言ちる。


額に傷のある悪魔、レイザルド。

肉弾戦特化の超絶者。

修行僧のさらに上、マスターモンクを極めていた。



「ぐうっ、がはっ!?」


「ん?…おいおい。なんだよ?死なねえのか?……回復だと?」


鮮烈な緑のオーラがランルガンを包み込む。


回復を始めたランルガンを守るように立ちはだかるザッカートとアルディ。

その二人に隠れながら、エルノールは完全回復スキルをランルガンに施していた。


(…美緒さまの言ったとおりだ。スキルの通りが悪い…くそっ。時間がかかる)



エルノールの額に嫌な汗が流れる。



本来彼のスキル“完全回復”は事象の改変。


術式を伴う魔法ではない。

しかし阻害されている事実。



「このっ!バケモンが!!」


刹那レイザルドに飛び掛かるザッカートとアルディ。



超絶バトルが幕を開けた。



※※※※※



「ヘルフレイム」

「コキュートス」

「デスインパクト」

「秩序崩壊」


瞬時に響き渡る超絶スペルの呪文。


破壊の魔女ノルノール。

その猛威が、極限まで研ぎ澄まされた魔力コントロールが“九尾”へと変態したミコトに牙をむく。


『がああっ?!!』

「…ふうん。レジストするんだ…キャハ。――これは楽しめそうね♡」


ぺろりと可愛らしいピンクの舌で、整った自らの唇を舐めるノルノール。

吹き上がる怖気を誘う魔力に可愛らしいその姿。


非現実なビジョンが“絶望の現実”を際立てる。



「くうっ?姉さま」

「…とんでもないわね…ミコト!大丈夫?」


(…ダイジョブ…少し驚いただけ…)


美緒の施した対魔法絶対障壁。

それはまるで紙屑のように突き破られ、少なくないダメージをミコトは刻み込まれていた。



「天地崩壊!!」

「っ!?…“アンチショック”…んふ…おもちゃがいっぱい♡」


僅かな隙。

見逃さなかった破壊神ガナロ。

全てを打ち砕くほどの物理攻撃――


しかしそれをまるでハエを払うかのように瞬時に対応し無効化。

ニヤリと身の毛もよだつ笑みを浮かべ、全身を歓喜で振るわす悪魔。



(――桁が違う)


精霊王であるファナンレイリは冷静に分析していた。

フィードフォートも思わず身震いしてしまう。



「行くよ!ティリ、ディーネ」

「むう、何であんたが仕切るのよ!!こんのおおおおっっっ!!!」


ネリアの号令の下、3機の妖精族に託された美緒渾身の超絶ゴーレムが音を置き去りにするスピードでノルノールへと突貫していく。


「はああっ!!神槍光激!!」

「メテオインパクトオオオッッッ!!」

「斬――天波!!」


大気が断絶するがごとく、放たれる渾身の一撃。

しかも3連発。



だが――


「んー♡…なになに?すっごーい。…そのゴーレム、欲しいかも♡」

「っ!?ひぐっ?!」


悉く結界により無効化。

醜悪に歪むノルノールの引きつる笑顔。

さらには見えない手につかまれたように、ネリアのゴーレムが動きを止める。


「うぐっ、動けない?!あうっ?!」


今回のゴーレム、ダメージは搭乗者には伝わらない。

しかし直接圧をかけられ、軋む空間。


ネリアはまさに、押しつぶされそうなほどの圧に囚われた。


――脳裏に死がよぎる。



「っ!?」


突然ノルノールを、この世の破壊全てを内包したような悍ましいブレスが包む。

ミコト渾身の、まさに神獣の咆哮。


そして戦場全体を包み込む、マルレットの称号『バナー』が幸運値を最大化していく。


さすがにバランスを崩したノルノールは距離を取った。



「フフン。やるじゃない」


しかし。


恐らくダメージは皆無。

対ノルノールを任された全員の背に嫌な汗が流れ落ちた。



「んふ♡…少しだけ…本気みせちゃう♡」


さらに今を凌駕する魔力が破滅の魔女ノルノールから吹き上がる。

物理法則を無視するほどの膨大な魔力。

空間が裂け、異質な次元が混在していく。


その魔力の一部が、マルレットの称号を書き換えて――


そして――彼女の肩の部分、新たな顔がビキリとイヤな音を立て顕現。

同時に詠唱を始める。

紡がれる究極魔法。


“12”の魔方陣が彼女を中心に、まるで地獄の花のように咲き乱れた。


「なっ?!…12…同時発動だと?!」


思わず言葉が漏れるガナロ。

全力で自らを魔力でガードする。


「フィー、全力で結界構築!!ティリ、ネリア、ディーネ!!最終形態へ移行!!」

「はい、お姉さま」

「は、はい」

「うおおっ!!最・終・形・態!」


『マルレット…我の後ろに』

「う、うん」


まさに顕現する地獄。


同時に発動する超絶魔法12が。

精霊王と大精霊渾身の結界を埋め尽くしていた。



※※※※※



次々に脳内に流れ来る、大切な仲間たちの窮地――


絶望に囚われていく美緒。

突然脳裏に笑い声が響く。


(……クスクス…ねえ。力貸そうか?)


『っ!?…あ、あなた…』


美緒の体から、かつてない魔力が吹き上がる。

その魔力圧――


美緒の周りにいた仲間をも吹き飛ばす。


『くうっ、ダメ…ヤダ…やめて…やめてよう…』


(…甘えたことを…すべて滅ぼす…いいでしょ?)



絶望。

超絶な力を秘めたる真の支配者――原神



美緒の中の3人目がついに表舞台に立つ――



※※※※※



ガザルト王国王宮。

秘匿された最奥の貴賓室。


深い眠りに落ちたグラコシニアの髪の毛を撫でながら、ミュナルダーデは微笑んでいた。


彼女の権能『現状確定』

彼女はその権能を全開で使用、美緒たちの行動すべてを“確定”させていた。


(…予想外に強い…でも)


神の権能と同等な悪魔の権能。

逆らえるものはいない。


本来彼女の権能は過去の出来事の都合の良い確定。


だが。


(…くっ…力、さすがに使い過ぎたわね…)


その核となる信仰心と恐怖。

彼女はそれを限界まで使い――


今起こっていることに“直接干渉”をしていた。


美緒の異常な幸運値。

それを全て反転。


最悪な結果、それに紐づけた。


(……はあ、はあ、…はあ。……これで勝ち。……ぐうっ?!)


いきなりまるで引き寄せられるかのように、全く違う場所に引きずり出されたミュナルダーデ。


突然彼女を、何故かランルガンが所持を許された『神槍ブリューナク』が貫く。


「がはあっ?!!」


引き裂かれ、体は四散。

消えゆく意識の中、ミュナルダーデは確かにそれを見た。


「っ!?な、なん…で……虚無…神……サマ……」


「…消えろ」


「っ!?――――――  」



消えゆくミュナルダーデ。

それを静かに見下ろす男性。


「…ったく。…それはズルだろ?…“真のゲームマスター”として…異物は除去だ」


つぶやき消えるその男性。


虚無神に乗っ取られているはずの黒木優斗だった。



(奏多さん…まずいですよ?……美緒ちゃん、起きてしまった)



祈りを込める優斗。

その身体からすべてを凌駕する神聖な魔力が立ち昇る。


(まだだよ…早い。――まだクライマックス…奏多さんは書いていないんだから)



光が弾ける――



対悪魔戦、クライマックスです。

是非感想など、作者泣いて喜びます!!


ブクマ・感想・レビューなども、是非!!

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