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第242話 スサノオ

「うぐっ、うあああああああっっっ――――!!!!!」


大気を震わせるマールデルダの絶望の雄たけび――

崩れ行くミリナの亡骸を抱え、マールの悲しみがあふれ出す。


その様子に。

細切れにされたゼギアノードは復元しながら心の底から満たされていた。


(クフフ…ああ、いいっ!…この絶望と無力感…滾る…ひぐうっ?!)


一閃――


マールの凄まじい剣戟が、再生を許さない。

しかし。


「…くくく…どうしました?…剣が乱れてますねええ」


爆発的に吹き上がるマールの魔力。

しかしそれには。


絶望がまとっていた。


「っ!?…マール殿っ!!…だめだ、飲まれるな!……ミリナ殿の死を…無駄にするな!!」


「っ!?」


世界が止まる。

感情が消えていく。


(…ミリナ…………ミリナ………俺は……)


腕の中で冷たくなっていくミリナ。

既に美しかった面影はみじんも見られない。


悲しみ

怒り



何より目の前で殺された――無力感


「……俺は…………」



ドクン


マールデルダからかつてない威圧が吹き上がる――



※※※※※



――「まあさ…最終的にはやっぱり“愛”かな。…世界を救うのは愛なんだよ」

「…愛?」


脳裏によぎる少年だった頃の会話。

何故か達観し、そんな世迷言を宣うアルディの言葉が鮮明に浮かぶ。


「無敵だからこそ愛に狂う。――うんうん。ロマンだね」

「…アルディ君はもう知っているの?」


真直ぐな疑問。

実にマールは多くの“親の愛”に包まれていた。


期待され。

望まれ。

そして与えられ。


満たされているが故に気づけないその“愛”と言う感情。


マール少年は首をかしげる。


「うーん。お子様には難しいかな?…フフン。いつか君に大切な人が出来たら――わかるかもね」



「…大切な…人?」


リフレインするその言葉




分かってしまう


もっと早く――



知りたかった




※※※※※




―――ああ。


師匠。


『愛に狂う』



理解してしまう。


俺に本当の愛を…

魂が求める愛おしい人


最愛の女性――ミリナ


真直ぐで

不器用で

優しくて――


でも


俺を心から愛し――受け入れてくれた大切な人


彼女の居ないこの世界――

失われた世界。



要らない



もう。





消えてしまえっ!!!





力の権化が――産声を上げる。



※※※※※



星を揺るがす波動。

呼吸すらままならない圧倒的な圧。


マールを中心にそれはこの星を覆いつくしていく。


「くうっ?!…なんという…悲しみの魔力…っ!?いかん!」


凄まじい方向性を持ったまさに暴力。

それは目の前にいたゼギアノードをチリのレベルまで分解していた。


「っ!?」

「ぐうっ…ぐがあああああああっっっっ!!!!」


絶叫し、苦しみ悶えるマールデルダ。

しかし止まらない魔力の膨張。


大気は怒りに塗り替えられていく。

色を無くし、悲鳴のような次元の軋みが響き渡る。


溜まらず全力でガードする十兵衛。


『…十兵衛……殺して…くれ…』

(っ!?…マール、殿?)


目の前でまさに改変していくマールデルダ。

その身体は既に膨れ上がり、激しい憎悪が迸る。


悪寒。

絶望。


そして…拒絶。



刹那空間がぱっくりと裂け――

異質なものがその姿をマールと同化させていく。



それはまるで悪夢の光景。

原初の恐怖を思い起こさせる、抗えない激しい恐怖。


かつて最強だったマール。


彼はもはや。



全てを根底から消し去る力――


伝承にある最終忍術――『スサノオ』


荒ぶる破壊の神。

次元の殲滅者。



改変してしまっていた。



解き放たれるそれは。

すでに人知を超える絶望を振りまき始めた。


『…キエロ』

「っ!?」


手を振り払うそれ。

十兵衛の後方…およそ数キロ先の大地。


凄まじい爆音と衝撃波――

まるで世界の終わり、あり得ない光景。



見渡す限り、底の見えない大穴が地平線の彼方まで形成されていた。



「…悪魔どころでは…ないな」


目を閉じる十兵衛。

意志を交わしたムラマサ。


全てを包み込む研ぎ澄まされた闘気が――



死を覚悟した十兵衛から迸った。



※※※※※



「っ!?」

「美緒?!…どうしたの…ひぐうっ?!」


到着と同時にガザルトの王城へと突入していた美緒たち。

突然立ち止まり、自らを抱きしめ崩れ落ちる美緒。


刹那皆を包み込む絶望を纏う経験のない魔力――


「まさか?…これは…『スサノオ』?…」

「っ!?スサノオ?…レギエルデ、説明してくれ」


すぐさま美緒を抱きかかえたレルダンがレギエルデに問いかける。

今のこの異常な事態。


そのカギを知っているのは恐らくレギエルデだけだ。


即座に結界を展開させるリンネ。

ようやく息が出来るその状況に、ガーダーレグトが口を開く。


「レギエルデ、貴様…『スサノオ』と言ったな?…まさか」

「うん…最終忍術…存在の改変…破壊の体現だよ」


既に王宮の謁見の間にはルギアナード帝国の精鋭たちが突入済みだ。

同行しているコメイが場を抑えたはずだが…


「…ダメ…だめだよ、マール。…それは不完全だ…」

「美緒?」


今わかった。

世界は2面性。


『破壊と再生』


それは同時に存在しないと駄目な力なんだ。


美緒は歯を食いしばり、マールの居る場所に感知を飛ばす。


「……っ!?うそ…ミリナ?…うああ、ミリナがっ…ミリナがっ!!」


膝を崩し蹲る美緒。

その瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。


「っ!?ミリナ?……ま、まさか。美緒?」

「……死んだ…」

「「「っ!?」」」


絶望が支配する。

対悪魔。


皆覚悟を持って臨んでいた。


しかし残酷な現実。



美緒の精神は。


ありえないほど混乱に包まれてしまっていた。



脳裏によぎるミリナの美しい姿。


失われた事実。



「うあ…うあああ…うあああああああっっっ!??」


美緒の絶叫。



皆は立ち尽くし。



希望は音を立てて崩れ始めていた。


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