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SS 死聖

ガザルト王国北方の寒村ブールズ。


そこにはその場にそぐわぬ荘厳な教会がその威容を誇っていた。


「…死聖様…また村民が…」

「…ふうむ。…どれ…連れてきなさい」

「…はい」


国教のないガザルト王国。

しかしそんな場所でも民の信仰心は根付くものだ。


ここ闇の神をまつる教会には多くの村民と信者が訪ねてきていた。


「死聖様…どうかわたしを…皆の食材に…」


ガリガリの老人に見える男性。

彼はまだ38歳の農業を営む男性だった。


ガザルト王国を包む食糧不足は実に深刻だった。

この教会のある北の地、ブールズも全く考えのない領主により、あり得ない年貢と言うか食糧の徴収によりここに住む村民はまさに飢餓状態にあった。


(愚かな…どうしてこうもヒューマンは…)


ため息をつく『死聖』と呼ばれた神官のような格好をした男性。

彼はそっと魔力を纏い、目の前の男性を包み込む。


「…おおっ…なんと心地の良い…うぐっ?!!………」


そして消えていく男性の命。

死聖と呼ばれる神官、ゼギアノードは秘術を紡ぐ。


『物質変換』


既に命の亡くなった男性とほぼ同量の新鮮な肉が眼前に現れた。


「ミーニュ…これを飢えている子供たちに…」

「…グスッ…は、はい…」


涙を流しながらも、テキパキと肉を切り分けるミーニュと呼ばれたシスター。

その様子にゼギアノードは悲哀の籠った瞳を向けていた。



※※※※※



悪魔ゼギアノード。

彼は元々この村で生まれた普通のヒューマンだった。


しかし。


彼はある時洗礼を受ける。

虚無神であるブラグツリー。


その奇跡をその身に受けていた。



※※※※※



およそ2000年前―――


彼ゼギアノードは殉教の為。

その身を北方の険しい山の頂上、そこでの瞑想に捧げていた。


(…どうしてもヒューマンは…お互いを傷つけあう…どうしてもその業は消えぬ…ならば…)


彼はまさに教義に命を懸けていた。

彼が信じる闇の神。


それはまさに邪教認定されている宗教だった。


何しろ死ぬことこそ生者の目的と言う教義。

ただ。


それには意味のある人生、すなわち他人に益をもたらしたうえでの死。

それをなさないで死んだ場合―――


闇の神による魂の消去。

そういうあり得ない教義を掲げていた。



※※※※※



瞑想を始めておよそ20日。

すでにゼギアノードは骨と皮状態、その命はまさに風前の灯火となっていた。


(……私は何の益ももたらさず自死を選んだ…だが…神は現れぬ…まやかし…だったのか…)


意識は既に朧気だ。

飢えも苦しさもすでに感じなくなっていたゼギアノード。


彼は諦めの中、その意識は消えていく…刹那。


彼を包み込むとんでもない闇。

彼は涙を流す。


『…お前…なぜ自身を捨てる…この狂った愚かな世界…その末を見たくはないか?』

「………あ、あな…た……は……」

『ふむ…すでにしゃべれぬか…我は虚無神…すべての物に幸福をもたらす…そして滅ぼすものなり』


明らかな矛盾。

もしゼギアノードの精神が健全であったなら即座に拒絶したであろう。


だが。


極限状態だったゼギアノードはこの悍ましいものに希望を見出してしまっていた。


「…おおっ…力が…魔力が…」

『…契約完了だ…お前は今から悪魔となる…超絶者だ…人民を率いよ…そして…』


現実なのか夢の中なのか。

はっきりと認識できないゼギアノードは1柱の悪魔と邂逅する。


「ブラグツリー様…このものが…新たな?」

『そうだ…上手く使え…こいつは良くも悪くも狂信者だ。2面性を付与した…あとは任せよう』


悪魔の統率者であるグラコシニア。

彼は今まさに覚醒を果たし、悪魔として誕生したゼギアノードに視線を投げる。


「貴様…我が神ブラグツリー様…虚無神に忠誠を誓うか?」

「…誓います…私は見たい…ヒューマンの…この世界の行く末を…」


「ふん。物好きめ…いいだろう。歓迎する…私はグラコシニア…ついてくるといい」

「はっ」


悪魔が誕生した。


そして2面性を付与されたゼギアノードは。


普段は民のため働く神官として。


そして。


悪魔ゼギアノードとしてこの世界、レリウスリードで暗躍を始める。


しかし彼はその目的を果たすことはできない。

邂逅するゲームマスター。



彼はそこで永遠の虚無に飲み込まれるのだから。


短めです。

きっとあとで文章足すかもしれません。


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