表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

240/256

第229話 神聖ルギアナード帝国の決断

神聖ルギアナード帝国謁見の間。


今ここでは多くの国よりの通信が殺到しており、重鎮を始め皇帝であるドイラナード陛下をはじめ、第一皇子であるハインバッハまでもがその対応に苦慮していた。


今回の事件。

当然多くの国が承知していた。


何より神聖ルギアナード帝国は大国であり、飛び抜けた軍事力を持つ強国だ。

他の大陸の多くの国は様々な理由で帝国内での情報網を構築しているし、何よりそれは皇帝の許可を得てのことだった。


世界に動揺が走る。

今回の事件、まさに帝国へのテロ行為だ。


当然だがこれに対し行動を起こす帝国に対し、正直文句を言う国は無かった。

そして。


台頭してきたガザルト王国に対し、各国は緊張感を持っていた。

そして混乱している今。


世界は神聖ルギアナード帝国の決断を、静観していた。



※※※※※



「…我らは今回の件、手を出してはおらぬ。何より我が国は甚大な被害を受けたのだ…むしろ報復するのは我々であろうに」


吐き捨てるように通信石を睨み付ける陛下。

まさに今言ったように、今回甚大な被害を受けたのは間違いなく神聖ルギアナード帝国だ。


未だ激しい破壊により被害状況が確定できていない。

そしておそらく…数万人の無辜の民が巻き込まれていた。


何より今回ルギアナード帝国は、ガザルト王国の飛空艇を救助すべく動いていた。

それをあざ笑い、卑劣な人間爆弾によるテロ。


許すことのできない非道。

皇帝ドイラナードの瞳に決意が浮かぶ。


「…ハイン」

「…はっ」


「ガザルトを…滅ぼすぞ」

「っ!?」


決意を込めた皇帝の瞳。

まさにこれは悪魔のシナリオ、それに他ならないのだが…


世界最高の軍事力を誇る帝国が、いきなりのテロ行為により帝国民数万人を殺された事実。

むしろここで蜂起しない方が世界から訝しく思われてしまう状況だった。


「…しかし…これはまさに美緒さまたちが仰っていた、一番選んではいけない選択では」

「…数万だ」

「っ!?」


怒りに震え、唇を食い破り出血する陛下。


「…確かにこれは何者かによる陰謀なのだろう…だが。…無辜の民が…一瞬で数万…殺されたのだ…しかも何の声明もなく…これを許せるのなら…皇帝なぞ何の価値もない」


皇帝の存在理由。

それは帝国を守り発展させる、そして帝国民を守る。


まさにそれを土足で踏みにじられた。

決して許してはいけない事だった。


「…美緒さまにはワシから報告する…ハイン」

「…はっ」

「ともに行くぞ…転移門を使う…宰相、準備を」


数多の反応する通信石。

それを横目に宰相であるルオーニ侯爵は静かに跪き、そして。


今まで封印を施していた美緒の居るギルドへと続く転移門、そのカギを手渡した。


「…ご武運を」

「うむ」


カギを受け取るドイラナード。

その瞳が徐々に色を無くしていくさまに、ハインバッハは背中に冷たいもの感じていた。



※※※※※



帝国の北方の都市ノイニジルデ、まさにこの瞬間多くの人民の命が失われたその時―――


「っ!?」


エレリアーナの目覚めとほぼ同時に起きてしまったそれ。

その場にいた美緒は突然顔を青ざめさせ、その身体からはとんでもない魔力が立ち昇る。


その様子に思わずファナンレイリは美緒を見つめ…


そして彼女もまた波動を拾う。

とんでもない悪意の籠ったそれを。


「っ!?美緒?…うぐっ?!…こ、この魔力…まさか?!」


「…人間爆弾?!……ううっ、数万の人が…一瞬で…」


咄嗟に千里眼を発動し、状況を探る美緒。

突然崩れ落ち、打ちひしがれる。


そしてその瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。


余りの出来事に、治療室にいた全員は凍り付いてしまう。


しばらく蹲っていた美緒だが…

どうにか立ち上がり、皆に視線を向けた。


「…レリアーナ」

「…は、はい」

「あなたはしばらく…回復に努めてね…アラン、エスピア…あなた達も…特にエスピア、あなた精神と言うか…まだ安定していないでしょうに…休みなさい」


「うあ…流石ですね、美緒さま…休ませていただきます」


突然エスピアを覆う魔力が不安定になっていく。

ファナンレイリも心配そうにエスピアに視線を向けた。


「うん。アラン」

「う、うむ」


じっとアランを見つめる美緒。

そしてジンワリとした魔力で包む。


「…あなたも…大昔の怪我…完治していないのね…オーバーヒール!!…そして…エクストラキュア」


突然美緒から爆発的に迸る清廉な魔力。

それに包まれたアランは目を見開く。


「うおっ?!……うぐっ…な、何だ…頭に…声が?!」


アランが忘れていた怪我。

そして組み込まれたギミック。


それはまさに竜帝になるための器官。

それへの接続が阻害されていた。


「…ふう。まったく。…おばあさまも性格が悪いわよね…」


アランが竜帝へなるための一番の条件。

それは龍姫であるエスピアの愛だ。


そして。


実はすでにエスピアの愛は彼に届いていた。

何も身体を重ねること、それだけが愛ではない。


相手を真摯に想う気持ち。

すでにエスピアの想いは…彼に大いなる祝福を与えていた。


「ううう、うお…ち、力が…」

「…うん。…あなた、新たな称号、きっと近いうちに得ることになります。…期待してます」

「…はっ。このアラン…ゲームマスターに絶対の忠誠を」


跪き美緒に対し平伏するアラン。

心の底から湧き上がる歓喜。


アランは流れる涙を止めることが出来なかった。



※※※※※



こうして目覚めたエレリアーナ、そして龍姫エスピア。

さらには覚醒のきっかけをつかんだアラン。


その処遇は決定した。


そして翌日。

ついに封印を解き、神聖ルギアナード帝国皇帝であるドイラナードがギルドを訪れる。


世界は。


新たなステージに進もうとしていた。


「面白かった」

「続きが気になる」

 と思ってくださったら。


下にある☆☆☆☆☆から作品への応援、お願いいたします!


面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!


ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ