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第225話 マザーレナデルの恋

マザーレナデルとの話し合い。


そのため、ここの住人でもある『ホブゴブリンのサッタ』に連れて来られたレストールとカナリナ。


突然の出会いといくつかの過去の事実。

そのおかげでレストール自体とんでもない覚醒に到達することが出来ていたのだが。


本命であるこのダンジョンの状況と今後のヒューマン族による鉱石類の採掘などの打ち合わせ。

すでに破綻していた。


彼女は長寿であり、数多のスキルを持ついわば絶対者だ。

そしてこのダンジョンの真の主であるルデーイオがいない今の状況。


彼女との話し合いこそが唯一の突破口であるのだが。


「ひゃん♡…ちょ、ちょっと…あうっ♡」

「ハアハアハアハア♡…んあ♡ルデーイオ様の匂い♡」


話し合いどころか…

目をハートにしたマザーレナデルに、体中の匂いをかがれているカナリナ。


かなり際どい状況に、レストールは顔を赤らめフリーズしてしまっていた。



※※※※※



実はカナリナ。


このダンジョンに来る直前。

情報を得ようと美緒の許可を取りルデーイオと面会をしていた。


何より彼はここの主。

聞けば数千年はここの最奥を根城にしていた。


しかし。


色々と執着のない彼。

実際には大した情報を得ることはできなかった。


話し合いと言うか一緒に居たのはわずか数分。


接触など当然ないし、何なら同じ空間で話をしただけだ。


そして当然その場にはレストールもいたのだが。

彼はカナリナの後方でその話を聞いていただけだった。


そんなわずかな時間の面談。

その残り香に、マザーレナデルは我を忘れ興奮状態に突入してしまっていた。


「あうっ、た、助けて…レスト…やん♡」

「ハアハアハア…クンカクンカ…ルデーイオ様♡」


抱きしめられ体中を嗅ぎまくられるカナリナ。

今だ経験のないとんでもない抱擁にカナリナは既に涙目で…しかもなぜか興奮し始めていた。


マザーレナデルの発するとんでもない愛欲のオーラ。

耐性のないヒューマン族なら即失神するレベルだ。


美緒特性の装備品を得ているカナリナは何とか耐えることが出来ていたのだが。

余りの強力なそれに徐々に浸食され、カナリナはすでに精神維持に全力を使う必要に迫られていた。


しかし。

流石は長寿でとんでもない力を秘めるマザーレナデル。


その力に遂にカナリナは自身の思いまでをも暴露し始めてしまう。


「うあ…あんっ♡…はあはあはあ…レストール…好き♡」


「か、カナリナ?…お、お前、なに言って…」


突然の飛び火。

メチャクチャ色っぽくなっていくカナリナに対し顔を赤らめていたレストールは思わず挙動不審に。


そんな様子をサッタはなぜか諦めたような瞳で見ていた。


「…はあ。またか…今回は特にひどいね」



※※※※※



実はあの事件。


ルデーイオのブレスにより半壊したヒューマン族の採掘集団。

当然だが生き残りがいた。


あの現場にいて生き残った者達。

彼等には濃厚なルデーイオの魔力の残滓が付着していた。


彼等は当然その事は思いも当たらなかったのだが。

マザーレナデルにとっては愛おしい人の残滓。


今回のカナリナほどではないものの、強い興味と執着にさらされてしまっていた。


いわゆる調査に赴いた指名依頼を受けた冒険者たちが二度と行きたくなくなった理由。


案内役としてついて行った彼らとともに、マザーレナデルによるあまりにも濃厚な接触にさらされていた。


しかも我慢の効かなくなっていたマザーレナデルは、本来の住処である10階層ではなく、5階層にある小部屋へまで赴く始末。


そんなわけで彼らの調査は5階層までしかできていなかった。


耐性のないヒューマン族にとってそれはまさにあり得ない快感であり同時に悍ましい体験。

彼女の『いくつかのスキル』によりその記憶自体無くなり。


ただ『二度と入りたくない』という強迫観念だけが残っていた。


故に聞かれても何も答えることができない。

何しろ記憶自体がない。


漠然としたとんでもない体験への恐怖。

それが刷り込まれた結果、遂に誰もがここへ来ることが出来なくなっていた。


マルデの国王であるニアルデが零した内容。


『何を聞いても…もう行きたくないの一点張り。ほとほと困っているのだ』


と合致していた。


そこまでの執着にさらされ、そういう反応になってしまった彼等だが。


その付着している魔力の残滓には彼、ルデーイオの怒りと言うか荒い感情―――

つまり攻撃性を含んでいたためマザーレナデルもここまでおかしくなることは無かったのだが。


つまりこの状況を治める唯一の方法。

それは本人であるルデーイオによる説得。


様々な経験を積み、ある程度そういう事にも理解を得始めた美緒の直感。

まさに大正解だった。



※※※※※



「はあ。…ねえリンネ、伝わった?」

「うん。…こりゃダメだよね…ルデーイオ、愛されているのね」

「…むう」


ギルドの執務室。


今ここには美緒とリンネ、そして件のルデーイオがソファーに座りお互い顔を見合わせていた。


そして千里眼のスキルで今の状況を確認した美緒が思わずジト目を向ける。


「…ねえ、ルデーイオ。彼女はあなたの恋人なのかしら」

「むう。恋人、という関係ではないぞ?…確かに何度かは…抱いたことはあるが」


彼等はいわば高位の存在。

全てにおいてヒューマンを上回る彼等だが。


つまりは動物としての本能。

周期的に訪れるいわば繁殖期。


その本能に赴いてそう言う行為をしていたにすぎない。


やはり『そういうもの』に対する考え、美緒たちの常識とはかけ離れていた。


「……正直なんとも言えないけど。とりあえず今回は責任取ってよね」

「当然だな。…本能の赴くまま欲を満たし放置とか…ルデーイオ、あんたサイテー」


「ぐうっ?!」


思わず言葉に詰まるルデーイオ。

さらに美緒が畳みかける。


「ねえ。まさか他にもそういう女性…いるのじゃないでしょうね?」

「……う、うむ……いる…な」


まるでゴミを見るような瞳にとんでもない魔力をのせる美緒。

ルデーイオは、本気で死を覚悟してしまう。


そんな様子に美緒は大きくため息をつき、改めてルデーイオに問いかけた。


「まあ。確かに私たちヒューマンとあなた達高位の存在は考え方が違うのでしょう。理解も納得もできないけど。…でも…それでももしフィムのことが欲しいのなら…せめて誠意は見せなさい」


フィムの名。

それを聞いたルデーイオの顔色が変わる。


「…誠意?」

「うん。…取り敢えず行くよ?…そしてあなたがマザーレナデルを説得しなさい」


「……う、うむ…承知した」



※※※※※



「はあはあはあ♡…ルデーイオ様♡」

「ひゃん…あう…うあ……♡」


まさにやばい状況。


レストールは顔を赤くし蹲り、サッタは既に遠くを見ていた。


「っ!?」

「くうっ?!」


突然弾ける魔力。

現れたものを確認してマザーレナデルの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。


「……ったく。…レナ、そのヒューマン困っているだろうに…」

「うあ…ルデーイオ様…」


うわごとのようにつぶやき、カナリナを開放するマザーレナデル。

そして優しく抱きしめるルデーイオ。


「…すまんな。…取り敢えず…落ち着け」

「…はい♡」



マザーレナデルの恋。


取り敢えず最初の一歩を踏み出すことに成功したようだった。


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