第224話 ワシの愛おしい人
まさに青天の霹靂。
突然の出会いにより覚醒したレストール。
色々と混乱したもののどうにか落ち着き。
本来の目的である調査のことについてマザーレナデルと話し合いを行うことにした。
「…確かにの。最近嫌な気配を纏うものがこのダンジョンに侵入しておる。…奴らはヒューマンではないのか?」
マザーレナデルはラミアではあるがどうやら上位種のようで。
様々なスキルを保持していた。
彼女のスキルの一つ『真実の目』
それによると…どうやら侵入しているのは『悪魔の眷属』となり果てたヒューマンのようだった。
「一体…何の目的なんだろうか」
「ふむ。分からぬな…何よりこのダンジョンの主であるルデーイオ様が行方不明じゃ…愛おしいかの君…どこへ行ったのやら」
なぜか顔を赤らめるマザーレナデル。
今は擬態をし、30歳前後の優し気な女性の姿なのだが…
突然とんでもない色気が噴出し始めた。
「うあ?!」
「…むう。この人…めっちゃエロい」
思わず素で文句を言うカナリナ。
なぜかレストールを遮るように体を割り込ませる。
「…っ!?…すまぬ。…ふう。ワシもまだ乙女と言う事か…」
「ハハハ、ハ。…コホン。因みに…ルデーイオとは面識があるんだな?」
「…ルデーイオ様じゃ。…む?」
突然目つきが鋭くなり、レストールとカナリナを睨み付ける。
そしてわなわなと震えだした。
「…お主ら」
「…お、おう」
「ひうっ」
そしてなぜかカリナに抱き着き、ひたすら匂いを嗅ぎ始めるマザーレナデル。
余りの事に二人はフリーズ、カナリナは顔を真っ赤に染める。
「ひゃん♡」
「くんかくんかくんか…ああっ♡」
そして恍惚の表情を浮かべるマザーレナデル。
とんでもない事を言い出す。
「そなたら…ルデーイオ様に会ったな?」
※※※※※
一方10階層でレストールたちを待っているルノークたち4人。
索敵スキルに全く反応がない事から、いくつもの気配を感じるものの。
拠点を設営し、休息の準備を進めていた。
「それでラミンダ。美緒は何だって?」
「うん。それがね…」
修練の末、新たに獲得したスキル『精霊調和』
それにより感知能力がとんでもなく成長した彼女はそっとルノークに耳打ちをした。
「……たぶんだけど…ルデーイオ、連れてくるみたい」
「…はあっ?…コホン。スマン…マジか」
「なんかね…『乙女の感』?…たぶんそうじゃないと解決できない気がするって」
何しろ慎重で優秀なルノーク。
今のわずかな会話、先ほどのサッタの言葉…
ルノークは正解にたどり着いていた。
「…恋煩い…か?」
「…似たような物かもね…でも。きっと」
何故か二人、思わず遠い目をしてしまっていた。
※※※※※
「ふん。ゴミめ。…死ぬか植物になるか…選べ」
怒りに目を細め、右往左往する獣人族たちを威嚇するガーダーレグト。
その様子をなぜか諦めた目でドルンは見ていたのだが。
いい加減話が進まないので、生贄にされそうになっていた少女をかばいつつ、ドルンは魔力をたぎらせ、おそらくリーダーであろう狐獣人の男性を睨み付けた。
「お前ら。逃げるか平伏するか早く決めろ。いい加減俺も飽きてきた。…楽にしてやるぞ?」
そういい掌に超高温の青い炎を出現させ、にやりと顔を歪ませる。
「ふん。横取りとは良い度胸だな。ドルンよ」
「なに。コイツらは小者。あんたが出張る程じゃないってのが俺の判断だ。今回のパーティー、俺がリーダーだ。分かってんだろ?」
「ふん。……カッコいいではないか」
「なっ?!……コホン。…とにかく」
一瞬顔を赤らめたドルンだが、とことん冷めた目で遂に捕らえた12人の獣人族を睨み付ける。
あの一瞬。
すでにドルンは束縛の魔刻石を発動していた。
「で?どうすんだよ。お前ら…国王の指示…そうなんだな?」
「ひ、ひいい。そ、そうだ…お、俺達は頼まれただけだ」
もちろん嘘だ。
ドルンもガーダーレグトもすでにコイツらの胸の内、すでに把握していた。
美緒錬成の『ロナンのスキル』を模した魔刻石。
すでにほとんど解決していたのだった。
※※※※※
今回のオーダー。
その根幹であるダンジョン内の調査に、ザッカートは二チームを作り対応することにしていた。
もちろん別動隊についてはルノーク達には知らせていない。
知ってしまえば。
どうしてもわずかに頼る気持ちが湧いてしまう。
今回のダンジョンアタックは正直美緒のギルドにとっては大した案件ではない。
だが目ざといザッカート。
ここは若いレストールたちの力を増すのにいいと踏んで、今回のオーダーを確実にこなすためにその様なプランを練っていた。
別動隊の隊員は二人。
禁忌の魔女ガーダーレグトとドルン。
この二人なら万が一すら起こらない。
なんならあっさり解決するだろう。
そう思っていた。
そして。
その読みは大正解だった。
※※※※※
黄泉の頂。
この大陸に国は3つある。
ドワーフ族を中心とする工業国ライデル王国。
多種多様な人種が多く存在し、基本は力ある獣人族がそのほとんどの重責を占める多種族混合国家メルサーチ。
そして今回の依頼主である、独裁国家マルデ。
その中のメルサーチの一部の実力者が、今回のエンシャントドラゴンの騒ぎを聞きつけ、まさに火事場泥棒のようにダンジョンに潜っていた。
黄泉の頂は確認されている最下層は20階層。
そこには隠匿されているルデーイオの住処があった。
もともとエンシャントドラゴンは恐ろしく長寿の生物だ。
一度眠りにつけば数百年は目を覚まさないことだってある。
そんな中フィムと龍姫の波動により目を覚ましたルデーイオ。
元々ヒューマン族とは違い、彼らは宝物に対しての執着がほとんどない。
『竜種は光物が好き』
そんな逸話が色々な物語で語られるが。
おおむね間違ってはいなかった。
ルデーイオの去った後の寝所。
多くの財宝が残されたままになっていた。
数多あるアーティファクト。
それによりとんでもないお宝があることを知ったメルサーチの重鎮、獣王族の長老ルカブティが数人の裏家業を雇い、探らせていた。
さらには保険として確保した少女。
最悪の場合それを餌にして逃げるつもりだった。
そしてそれはガーダーレグトの逆鱗に触れる。
あっという間の制圧。
少女も無事確保に成功していた。
何はともあれ。
ダンジョンの調査。
ルノーク達が攻略する前に、すでに終わっていたのだった。
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