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第222話 ザイルルドの嘆きと決意

一方サロン。


今ここではマキュベリアの真祖の力で絶対服従の状態になっている、ガザルド王国諜報部隊長であるノードルドが部下3名とともに、対象であるマキュベリアに跪いていた。


「ふむ。それでは今回の作戦は、その悪魔が主導したという事じゃな?」

「はっ」


一通り話を聞いた皆。

レギエルデは難しい顔をしていた。


「ノードルド。聞きたいことがある。…ガザルドにいる悪魔…何体いるのだろうか」

「……くっ」


正直いまノードルドは、マキュベリアの呪縛から逃れようと全魔力を巡らせていた。

その影響で体中の血管にはとんでもない青筋が浮かぶ。


なので基本マキュベリアの質問にしか答えない。

マキュベリアは面倒くさそうにレギエルデに告げる。


「…こやつら大した情報はもっておらぬ。すでに聞いた話、それと変わらぬわ…何より我の強制洗脳、こ奴レジストしておる…まさに王に対する忠義、目を見張るものがあるのう」


マキュベリアは既に数千年生きている。

何より絶対者。

ヒューマン族など彼女にしてみればまさにちり(あくた)、そんな彼女が思わず感嘆の言葉を零す。


「どうするのじゃ。我が直接聞いた悪魔の情報、頭領であり最強の悪魔グラコシニア…おそらく美緒ですらレベルでは届かぬ強者らしいの」


マキュベリアの言葉。

サロンの皆に動揺が走る。


「まさか?…美緒殿よりも強いものが存在するだと?」


冷や汗を流す十兵衛。

彼の横にいるミコトまでごくりとつばを飲みこんでしまう。


「ふん。じゃがそれはわらわのスキルでの確認。こやつが触れたその悪魔、その波動は今強制睡眠状態じゃ…おそらく龍姫を破壊したのもそいつじゃろう…ルデーイオの記憶とも合致しおったからの」


やれやれというように頭を振るマキュベリア。


「ねえ。そいつ実際どのくらいなの?マキュベリア…あなた数千年前直接見たのでしょ?」


不安そうにしているフィムの手を握り、ナナがマキュベリアに視線を向ける。


「…負けぬよ」

「…え?」


マキュベリアは妖艶な笑みを浮かべる。


「美緒はな、美緒は規格外じゃ。今のレベル、おそらく500前後と言ったところじゃの」

「…500前後?!…また強くなってる…」

「ふん。それに美緒のステータス値…はっきり言ってバグっておる。おそらくこの世界のレベル換算だと3000はとっくに超えておるじゃろ」


マキュベリアの見立て。

それはおおむね正しい。


通常のレベルとステータス値の整合性。

すでに美緒は破綻していた。


このギルド、今美緒に次いで強いのは。

新たな称号を得て覚醒したマキュベリアその人だ。

彼女のレベル402。


レベルだけで見れば覚醒したミコトの方が格上ではあるが。

何よりその戦闘に対する熟練度が段違いだ。


そしてマキュベリアはオールラウンダー。

各種ステータス値、非常にバランスが取れていた。


そして一番高い魔力数値、彼女マキュベリアは8500。


レベルに対し約20倍。

もちろん習得の条件にもよるしジョブによっても前後はする。


しかし。


美緒は既に10万を超えていた。

ステータス値だけ見れば。

彼女、美緒の推測レベルは実に5000だ。


「…なら楽勝…そう言う事でいいのかよ」


思わず口をはさむザッカート。

余りに乖離している今の美緒、少なからず悔しさもあふれ出す。


「ふん。小物が…そう簡単な話ではない。何より美緒ははるか格下であるザナンクによって命の危機に陥ったばかりじゃろうが…もちろんわらわが全力で守り通すがの…ザッカート」


「…なんだよ」


「貴様…スキルがあるであろう?主と認めし、美緒の危機に発動するとんでもない力…悪魔たちに無いと何故言える」


「っ!?」


マキュベリアの懸念。

この世界の法則と言うか摂理。


まさに根底を覆す多くのスキルがある事実。

簡単に勝敗を語る段階ではなくなっていた。


「だが…俺は何を投げうったとしても美緒を守る。それだけだ」


レルダンの体からとんでもない魔力が吹き上がる。


「ふはは。その意気じゃ。…ここのギルドはとんでもないの」


マキュベリアの言葉。

すでにここいたギルドの皆は。


自身の実力をはるかに凌駕する魔力を纏い、その目には覚悟が灯っていた。



※※※※※



「ふん。俺を裏切る、か。…くくく。それもまた一興」


ガザルド王国、王の間。

すでに従者すらいなくなった閑散とする部屋でザイルルドは静かに笑みを浮かべた。


「ねー。どうすんのさ。…ご飯も無くなっちゃったし?」

「ふん。キサマらは何も食わぬとて死なぬだろうに」


そんな中訪れる悪魔。

金髪の混じった煌めく銀髪の破滅の魔女、ノルノール。


「貴様らの親方…しばらく使い物にならぬのだろ?禁忌を破った…そう聞いているが?」


試すような物言い。

この瞬間にもザイルルドは自らの命の危機に何故か喜びを感じていた。


一瞬吹き上がるとんでもない魔力。

ノルノールの瞳が色を無くす。


「…ヒューマンのゴミが…」


動揺すら見せぬザイルルド。

しかし背中には嫌な汗がびっしり浮かび上がっていた。


本能で恐れてしまう存在。

まさに目の前の少女はその高みにある。


「ふん。まあいい…コホン。…で?ザイルルドちゃんはどうすんのよ」

「何もせん」

「……は?」


「お前ら絶対者である悪魔は…この世界、滅ぼしたいのであろう?俺はそれが見たかった。主導は誰でも構わぬ」


「…ふうん」


目を細め、まるで探るようにザイルルドの瞳を見つめるノルノール。

いつもの気配、そして。


突然ノルノールは花がほころぶような可憐な笑みを浮かべた。


「あんたは殺させない。それがグラコシニアの願いだ」

「…ふん。酔狂なことだ」

「…ほんと、それよね。……何かあったら呼びなさい?…あんたは守ってあげるから」


徐々に姿がぶれるノルノール。

転移ではない、自ら開発した新しい移動魔法。


やがて消える気配。

ザイルルドは静かに腰を下ろし、目を閉じた



※※※※※



「……よね…ねえ、聞いてる?ケヴィン」

「……っ!?…あ…ああ。スマン」


目の前のモニターには、つい今まで打ち込んでいたプログラムが表示されていた。

締め切り間もない案件。


三日目の徹夜になる今、一瞬意識が途切れていたようだ。


「さすがの天才ケヴィン様でも睡魔には勝てぬか…うむ。興味深いな」

「ははっ。そう言う李衣菜さんも相当来てるね…それ歯ブラシじゃなくて割りばしだよ?」

「む…コホン」


下請けである奏多の会社『レリウスリード』に出していた依頼、それがつい3日前届けられていた。


そして最終最後のチェック。

こればかりは自らの会社でやる必要がある。

何しろ生命線。


全てのシステムに直結する仕組みを構築していた。


「…ボス。いくら何でもこの案件、あそこの会社では酷ではないか?人員減ったばかりなんだろ?」

「まあ。…うん。…でもさ、奏多さんたちは信頼おけるんだよね…どうしても頼っちゃうよ」


支離滅裂。


優斗のこの言葉を聞いてケヴィンと李衣菜は脳裏にそれがよぎる。


最近の優斗はますますおかしくなっていた。

今のように理知的、いわゆる以前のような雰囲気の時は確かに多い。


しかし突然人が変わったような横暴を発揮するとき―――


確かにその頻度は増していた。


「…とにかく。チェックは終了だよ?…僕は一度帰らせてもらうけど…良いよね」

「もちろんだよ。…ケヴィン」

「うん?」


なぜか感情の籠らない空虚な瞳を向ける優斗。

だが一瞬、確かに光が灯る。


「頼んだよ…色々とね」

「…いろいろ?…分かった」


意味の分からない言葉。

ケヴィンは腑に落ちない思考のまま会社を後にしていた。



※※※※※



誰もいない王の間。


ザイルルドはゆっくり目を開けた。


「……そうか…そう言う事か……優斗」



そのつぶやきを聞く者は誰もいなかった。


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