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第219話 マザーレナデル

第10階層―――


今までと様子が変わり、まるで街のような様相。

幾つもの視線がレストールたちに突き刺さる。


「…どういう事だ?ルノーク」

「情報では…この階層の主はラミアのはずだ…この視線…本能によるものではない。…知性を感じる」


9階層に今まで居なかったはずのミノタウロス(推定レベル90)をどうにか倒し、降りてきた6人。

10階層に来た今、彼らは違和感に包まれていた。


「…心配?不安?…これまるでヒューマンの感情じゃん」


耳に魔力集中させ、ラミンダがつぶやく。

彼女が鍛錬で新たに取得したスキル『精霊調和』

他種族との交信に特化したスキルだ。


ジトリとした意思を含む視線。

まさにヒューマンの視線に酷似していた。


「いきなり襲うっていう感じでもないな。…俺が行く」

「お、おいレストール」

「大丈夫だ。待っていてくれ」


そう言いレストールは剣を鞘にしまい込み、両手を上げてゆっくりと歩きだす。


「敵意はない。俺達はここに調査に来たんだ。困っている事、不安な事…どうか教えてくれないか?」


レストールはシナリオでは革命騎士と言う称号を得る。

それは囚われない心。

つまり彼は何物にも染まらない、まさに純白の心を持っていた。


やがて皆から離れることおよそ50m。


レストールに近づくものが現れ、皆に緊張が走る。


「…俺達を殺しに来たんじゃないのか?」

「…ああ。今の俺は武器を持っていない。分かるだろ?」


ホブゴブリンの幼生体。

それがレストールに近づき声をあげた。


「…お前…面白いな。…なんでワクワクしているんだ?」


何かのスキルを持っているのだろう。

その幼生体のホブゴブリンはニコリと顔を緩めた。


「…名前とかあるのか?」

「うん。おいらはサッタ。マザーレナデルの仲間だよ」

「マザーレナデル?…それは誰なんだ」


サッタと名乗ったボロだが衣服を着用している魔物。

彼の様子はまさに人間。


皆の緊張感が薄れていった。


「マザーレナデルはさ、俺達を守ってくれている長老だ。…『ラミア』とお前ら人間は呼ぶんだろうな」


情報にあった魔物。

恐らくマザーレナデル、その人なのだろう。


「今マザーレナデルは毎日泣いているんだ。好きな人がいなくなって…そして変な魔物がおいらたちをいじめることに」


「好きな人?…お前たちをいじめる魔物?…俺達に協力できるだろうか?」


正直魔物の言葉。

信じるのは愚かな行為だ。


中には言葉巧みに獲物を呼び寄せる魔物もいる。

そして高確率でそういうものは悪魔の眷属の可能性が高かった。


だが。


レストールは興味を引かれていた。

ホブゴブリンは本来低位の魔物。


ここまで流暢に話が出来る個体。

おそらくユニーク級だろう。


「…お前達強い。…頼んでもいいのか」

「ああ。俺達の目的は踏破だが…調査も請け負っている。…ここにはたくさんの鉱石があるのだろう?ヒューマンたちはそれを欲しているんだ」


「わかった。着いてきて…でも怖いから二人だけだ…お前と…あとお前に発情している匂いを発しているあのメスだけが良い」


「うん?発情?!…コホン…ローブを纏っているものか?」

「そうだ」


レストールは大きな声でカナリナの名を呼んだ。

実は魔力で聴力を増大させていた皆。

今の内容を聞き、思わず顔を赤らめていた。


そしてカナリナに突き刺さる生暖かい瞳の数々。

いきなり公開処刑を受けたカナリナは真っ赤な顔だ。


「なあサッタ」

「うん?」

「遠いのか?今から行く場所は」

「ううん。あの先の陰だ…すぐにつく」


そんな会話がなされてるところにカナリナがたどり着き、3人はサッタに連れられ『マザーレナデル』と呼ばれる魔物に会う事とした。



※※※※※



一方ギルド。

フィムに嫌われて落ち込んでいたルデーイオだが。


黄泉の頂のことについて美緒から問われ、サロンで話し合いを行っていた。


「ラミア?ああ。いるぞ。俺の友だ。マザーレナデル…確かそんな名前だった」

「ネームドなの?強いのそのマザーレナデル?」

「うん?強さの機銃がいまいちわからんが…少なくともヒューマンに対して害意はないはずだが」


ラミアは祖先にナーガ(竜神族の亜種)を持つ場合がある。

何気にエンシャントドラゴンとは相性がいい。


「ほかにあなたがいた黄泉の頂、危険はないのかしら」

「…危険かどうかはわからんが…怪しい連中は侵入してきていたな。それこそ力は大したことはないが…おそらく美緒の言う悪魔の眷属…その仲間だろうな。嫌な気配を纏っていた」


「ふーん。ねえ」

「なんだ」

「そのマザーレナデルって…美人さんなの?」


なぜか若干顔を赤らめるルデーイオ。

咳ばらいをし、モゴモゴとつぶやく。


「一度抱いたことはある。懇願されてな…まあ。いい女ではあるな」

「…抱いたの?エッチなことしたってこと?」


「え、エッチ?…ヒューマンはそういう言い方をするのか?…番っただけだ。それに俺はフィムルーナと言う将来の伴侶を探していたからな…なぜ美緒は俺を睨む?意味が分からん」


まあね。

きっとそれは魔物としての本能。


いくら高位の存在だとしても、本能の欲求には逆らえないのだろう。


「ねえ」

「なんだ」

「それ…フィムには絶対に言わない方がいいからね?ますます嫌われるわよ?」


目を白黒させるルデーイオ。

全く分かっていない様子にわたしは思わずため息をついていた。




※※※※※



「っ!?…念話?…美緒?」

「どうした?ラミンダ」

「私のスキルの影響なのかな…今頭に美緒の声が…って…聞こえるよ?…でも」


どうやらラミンダのスキル『精霊調和』

通信と言うか念話などの効力をも増大させるようだった。


大きくかぶりを振り真直ぐルノークを見つめるラミンダが口を開く。


「さっきサッタ?が言っていた『愛おしい人』…エンシャントドラゴンのルデーイオらしいわよ」

「なっ?…おいおい。じゃあもしかしてそのマザーレナデルが探している人って…」

「ルデーイオね。きっと」



サッタに連れられ姿を消したレストールとカナリナ。

なぜか危機感知が働かなかったルノークだが…


違う意味で、背筋が寒くなっていたのは彼だけの秘密だ。


(…荒れなきゃいいがな…種族を問わず女性のそういう純情…美緒ではないが…きっと何らかのトリガーになりうる)


そしてそれは的中する。


マザーレナデル。


彼女の想いは誰もが想像できないレベルで一途だった。


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