第218話 成長していく若い力
ルナイデ大陸の北方に位置するダンジョン『黄泉の頂』
エルノールの転移により連れて来られた6名。
メインの攻略組であるレストールたち『陽光の絆』4人と『ブルーデビル』からレストールとラミンダ。
彼等は今順調の踏破を進め、7階層に到達していた。
※※※※※
6人を睨み付ける魔物の体が仄かに揺らめく。
バフ『身体強化』と『魔障壁』。
どちらも程度は低いものの厄介だ。
「シャアアアアアアアアッリナッ!!」
「まかせてっ!!はあっ『深い眠り』
襲い掛かってきたのはジャイアントサーペント、およそのレベル70。
カナリナの精神魔法により行動が阻害される。
見る間に眠りに落ち、同時に魔物を覆っていた障壁が解除された。
「はあっ!!」
「おらあっ!!」
「くらえっ!!」
ズドン!!
ズバアッ!!
シュン――!!
まさに一閃。
レストールとダグマ、ルノークの剣戟が煌めく。
首のあたりを刎ねとばされ、しばし痙攣したのち3体のジャイアントサーペントはその身体を光に変え、ダンジョンに吸収されていった。
「やるな、レストール」
「ルノークの誘導のおかげだよ」
すでにダンジョンに突入して半日。
ギルドで鍛え上げた6人は、順調に攻略を続けていた。
「ねえ。少し休もうか。お腹も減ったしね」
「うん。ねえねえラミンダ。今日のお弁当って何?」
「うふふ。秘密♡でもメリナさん特製だよっ」
しっかり打ち解け仲の良くなったラミンダとカナリナ。
可愛い女の子二人がきゃぴきゃぴしているのを見ると、まるでピクニックなのではと勘違いしてしまいそうだ。
「こらこら。一応ここはダンジョンだ。まずは周辺の確認と安全確保。飯はそれからだ」
相も変わらず慎重なエルフ族の男性ルノーク。
しかし冒険には危険がつきもの、ダンジョンならなおさらだ。
彼のこの安定した安全主義。
実は攻略に欠かせないものだった。
「ルノーク、こっちはいいぞ…この先5ブロックに敵はいない」
斥候としての力を増しているロミューノが声をかける。
「助かる…ダグマはどうした?」
「…こっちも問題ない」
ルノークの問いかけに、やや遅れて反対方向の偵察に行っていたダグマが声をあげた。
彼もまた鍛えられ、重戦士ではあるものの索敵のスキルをすでに取得していた。
「よし。一応各自体調の確認をしてくれ。問題ないなら昼飯にしよう」
※※※※※
通常ダンジョンアタックは、非常に厄介だ。
なにしろ陽の光が届かぬ場所。
中には擬似太陽が照らす場所もあるのだが。
何より時間の確認が難しい。
さらには通常のフィールドと違い、ダンジョンにはそれぞれ特有の縛りがある。
特に魔物関係に至っては、ある時間ごとにリポップ、すなわち再配置される。
苦労して攻略したダンジョン、帰りにリポップした魔物によって全滅なども珍しい事ではないのだ。
「レストール、レベル上がった?」
「ああ、すげえな。ギルドの鍛錬のせいか知らないけど…メチャクチャ効率良いぞ。…もう7つ上がって今68だよ」
この世界実はレベル上昇に関しては一定の縛りが存在していた。
転移直後に美緒が語ったように、通常一つのジョブをカンスト、つまり99まで上げるのには2年が必要だった。
理由は一日における成長上限の設定。
さらには一か月単位での縛りが影響していた。
ヒューマン族の成長上限はひと月およそ5。
もちろん例外もあるが基本はそう言う摂理に縛られていた。
だが美緒のギルドの皆は、彼女がリンネのスキルを習得しパッシブで発動。
全員にその効果が適用されていた。
経験を積めば素直に伸びていく。
それこそがまさにチート集団に礎となっていた。
※※※※※
「俺も。もう4つ上がったよ」
クマ獣人族とヒューマンのハーフであるダグマがつぶやく。
彼は重戦士のジョブを取得している、元々前衛特化だ。
ただ美緒のギルドに来てから彼は自分の弱点、特に視野の狭さを克服しようとイニギアの指導を受けていた。
そして新たに生えた『斥候』のジョブ。
今までほとんど前しか見えていなかったダグマ。
視界が広がったことによりその戦闘スキルは著しい成長を遂げていた。
一方元々斥候だったロミューノ。
彼もまた自身の弱点である火力不足を解消するため、サブジョブとして精霊騎士を取得。
一部の魔法と、『タメ』などの縛りはあるものの十分な火力を手にしていた。
若い仲間の成長。
一番の年長であるルノークはなぜか親目線でそんな彼等を眺めていた。
「そうだな。事前にもらった情報を見るに、しっかり最深部まで行けば。レストール辺りは上限まではいくかもしれないな」
「上限?それって99か?」
「ああ。お前らも説明受けただろ?美緒のスキル、元になるリンネ様のスキル。まさにチートだよな」
改めて皆は思う。
美緒のギルドに来れてよかったと。
特に今回のメンバーであるレストールたち4人やルノークとラミンダ。
彼等は違うグループとして活動していた時のことを思い起こしていた。
「まあうちは超絶チートのナナが居たからな。あいつは称号があったからその摂理は無視できていた。それに引っ張られていたはずの俺たちのレベルが上がらないから不思議に思っていたものさ」
今なら理解できる。
ナナが一回の戦闘で、5も6もレベルが上がることがあったが。
自分たちはせいぜい1。
しかも連日戦闘に身を置いた時には上がらない日もあったくらいだ。
「…改めてゲームマスター…とんでもないな」
「うん。私もそう思うよ」
感嘆の言葉を漏らすレスト-ルとカナリナ。
でも彼らはたどり着き、そして仲間として認められた。
その事実にレストールに熱いものが込み上げる。
強くなる。
絶対に。
その想いのまま彼は立ち上がり、まだ踏破していないダンジョンの奥に視線を向けた。
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