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第216話 ルデーイオの困惑する一日

ルデーイオはなんだか肩の力が抜けてしまい、改めてまったく封印と言うか阻害するものを張られていない部屋を見渡していた。


(…これでは平野と変わらぬではないか)


ルデーイオは高位のエンシャントドラゴンだ。

長き時を生き、その力は神に迫る勢いだ。


そんな絶対者に対し、全く警戒すら必要としていない場所。


(俺も又…井の中の蛙、だったという事か)


なぜかおかしくなり声を上げ笑うルデーイオ。

そこに突然声が掛けられルデーイオは固まってしまう。


「…お前、誰だ?…フィムと同じ…エンシャントドラゴン…なんでお前がここにいる!」


突然憎しみにも似た感情をのせ吹き上がるとんでもない魔力。

ルデーイオは目を見開く。


何しろそこには…

ずっと番う事を夢にまで見た相手、フィムルーナがいたからだ。


「なっ?!…お前…風の…フィムルーナ?」

「っ!?な、何で?なんでお前がナナに付けてもらった名前を知っている?!」



※※※※※



本来エンシャントドラゴンは竜神の末裔の種族。

今この世界に跋扈しているのはそのほとんどが亜種、いわゆる混血だ。


そしてエンシャントドラゴンには使命と言うか運命がある。

来るべき最終決戦。


虚無神との戦いの為の力だった。


当然だが絶対者。

存在するためには多くの縛りが存在する。


その一つが繁殖に対する著しい制約。

龍姫であるエスピア。

その祝福がない場合、純粋なエンシャントドラゴン同士は『新たな命を育むことができない』という縛りが存在していた。


大精霊フィードフォートが話したように。

本人は忘れているがフィムルーナはまだエスピアが生存しているときに祝福され育まれた命。


番い、守り、数多の時を経て200年ほど前に母親の胎内で目覚め。

危機を感知し、自らにいくつもの術式を付与していた。


記憶を代償にとんでもない縛りを無視し、まさについ最近この世界に生まれていたのだ。


それを知らないルデーイオは困惑に包まれる。

いわゆる組み込まれた存在。

だから二人は出会えばお互いを求め、自然と結ばれる。


なのにどうだ。

目の前の番うべき相手。


自分に対しなぜか敵意を漲らせていた。


「お、おい…お前、フィムルーナなんだろ?俺はルデーイオ。お前の夫になる者だ」

「夫?…そ、それって…」


なぜか顔を赤らめいきなり挙動不審になるフィムルーナ。


「や、ヤダ!!なんでお前と…フィムはハイにいにが良い」


顔を真っ赤に染め、自身の欲望をぶちまけるフィム。

ますます混乱に包まれるルデーイオ。


「い、いやいや。おかしいだろ?…見るにお前は俺よりもさらに高位の存在。まさに竜神の生まれ変わりだ。…ハイにいに?…なんだそれは?」


ルデーイオの言葉に、今度は殺気をまき散らすフィム。

背中に嫌な汗が流れ落ちる。


(なんだ?これは?!!…俺は何かを間違えているのか?)


正直正しいのはルデーイオだ。

この世界の摂理と言うか仕組まれたプログラム。


ただ彼はそれに沿って行動しているにすぎないのだが…


「…殺す。お前邪魔だ。フィムとハイにいにの邪魔をするもの…」

「ストップ。…もうフィム」


突然優しい香りと大好きなぬくもりに包まれるフィム。

いきなり問答無用で迸った魔力に反応したナナが転移してフィムを抱きしめた。


「な、なあっ?!転移魔法?…お、お前はいったい…ひいっ?!」

「…はあ?お前?…あんた可愛い女の子に向かってどういう口の利き方してるのかな?」


にっこり微笑むが目は怒りを纏うナナ。

事情は分からないがフィムが激昂している事実。

ナナは親ばか。

つまりは今の状態、フィムの援護に他ならない。


ルデーイオは死を覚悟した。


「まったく。…あなたまでそんな魔力ほとばらせてどうするのよ」

「うえっ?!美緒?!」


さらに現れる超絶者。

ルデーイオはむしろ失神したかった。


「コホン。初めましてだね。私は美緒。ゲームマスターだよ?よろしくねルデーイオ」

「……ハハハ。…俺は死んだのか?…ここは何なのだ」

「うん?ここは禁忌地リッドバレー。…私自慢のギルドだよ」



※※※※※



美緒のギルドのサロン。

今ここでは、何とも言えない空気が充満していた。


「えっと…お前…エスピアなのか?」


なぜかめちゃくちゃ動揺しているアラン。

そのアランに対し澄ました顔を向ける、復活した龍姫エスピア。


「まあ。そうですわね?…あなたアランよね?…弱すぎでは?」

「ぐうっ?!」


300年前。

彼ら龍人族が滅ぶ前。


確かにアランとエスピアは共に生き、愛を育んでいた。

しかし実はそれは大精霊フィードフォートのスキルによる擬似人格。


説明を受けた今、確かにアランはあの時のエスピアを思い浮かべ、納得せざるを得ないとは思っていた。


何しろ思い起こされるかつてのエスピア。

いわばNPC。


まるっきり人格と言うか感情の薄い女性だった。


(…これが本当のエスピア?…確かにさらに美しいが…何なのだ?俺に対するこの対応?)


今復活した本当のエスピア。

まさに『ドS』だった。


もちろん300年前の、あの蜜月を彼女は自覚しているし覚えている。

それにアランに対する真実の愛。

それもまた、備えているのだが…


エスピアの瞳が怪しく光る。


「アラン」

「う、うむ」

「…私が欲しいのでしょ?」


突然噴き出すとんでもない色気。

思わず回りで様子を見ていた男性全員が蹲り顔を赤らめた。


「…私、可愛い?」

「あ、ああ」

「んもう♡…優しくして!」


アランの思考は吹き飛んだ。

卒倒し鼻血を噴き出し倒れ伏すアラン。


「…ふふっ♡…可愛い♡」


アランの竜帝への道のりは厳しかった。


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