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第212話 封印された少女

マルデの国王、ニアルデの依頼を受けた私たち。

今はもう一つの案件である『エレナ』と言う少女を待っている状況だ。


「…今から連れてくる少女ですが…おそらくとんでもない封印を施されています」

「とんでもない封印?」

「ええ。私はスキル『観察者』と言うものを保持しております。それでの見立てではあるのですが…残念ながら私たちの手には負えません。…どうか、彼女を助けてやってはいただけませんか?」


真剣な表情。

きっと心の底から心配しているその様子に、私は思わずつばを飲み込んだ。


「ニアルデ」

「は、はい」

「…彼女エレナ…本名はエレリアーナではなくて?」

「っ!?…流石はゲームマスター様だ…ええ。そうです。…彼女の本名はエレリアーナ…我が国はまだ若く浅い国ではありますが…建国以前より我が家に受け継がれていた古き伝承があります。…この世界の根幹…おそらく失われし龍姫…その欠片である、と。…凄まじい呪いです」


私は理解する。

いや。


隠されていた真実、その一端に私はたどり着いていた。


そう。

彼女エレリアーナのゲームでの内容。


完全なブラフだった。


(道理で…ゲームの中で感じていた違和感…すべての説明がいまいち要領を得なかった。…そして…)


私は想いを馳せ、おもむろに念話を繋ぐ。

ファナンレイリ、おそらく深くかかわっているであろう精霊王に。

そして彼女もまた記憶を封じられていたであろうと確信を込めて。


『……繋がった…レイリ』

『っ!?美緒?…ふう。…うん。思い出したよ…ごめんね…わ、私…また美緒に迷惑かけちゃう…』

『もう。何言ってるのよ。迷惑だなんて…そんなわけないでしょ?…私エレリアーナを救いたい。そしてエスピアさんも…力貸してくれる?』

『っ!?……うん』


よし。

絶対に救う。


…おばあ様?

いくら何でも…

確かにそれだけ虚無神が強いのだとしても…


もう少し違う方法なかったのかな?


私は思わず遠い目をしつつ、出された紅茶に口をつけていたんだ。



※※※※※



「…レナ…エレナ…起きろ」

「……ん…っ!?…んあっ?!…ひうっ?!」


いつの間にか眠ってしまっていた私。

その私をリュナイデル様が肩を抱きつつ、真っ直ぐに見つめていた。


途端に染まる私の顔。

うう、リュナイデル様…カッコいいのよね…


「…まったく。お前は繊細なんだか度胸が据わっているのか分からんな。どうやらお呼びがかかったぞ?会いに行こう、ゲームマスターに」

「っ!?……い、いよいよ、ですね」


そう言い立ち上がる私とリュナイデル様。

知らせを届けに来た侍女が奇麗な所作でお辞儀をした。


「行ってらっしゃいませ…エレナ様」

「うあ、え、えっと…は、はい」


見送られ廊下を歩く。

ドキドキが高まっていく。


緊張?


いや。


なぜかわからないけど。

この時私は自分の運命が決まる。


何故かそう確信していたんだ。


「着いたぞ…失礼する」

「…し、失礼します」


開かれるドア。

そして中には。


今まで見たことの無いような美しく神々しい女性が私を見つめにっこりとほほ笑んでいたんだ。


「初めまして。エレナ、いえ、エレリアーナ。…私は美緒。守山美緒。…ゲームマスターです。そして…あなたを必要とするものです」


「うあ、え、えっと…は、はじめまして。…わ、私を必要?」

「ふふっ。可愛い。…ニアルデ、良いかしら」

「はっ。美緒さまにお任せいたします」


突然立ち上がり、私の手を取る美緒さま。

そして突然全身に走るいまだかつて感じたことの無い感覚。


「…うん。やっぱりね。…ねえエレリアーナ」

「は、はい」

「行こうか」

「はい?」


一瞬。


気付けば私は知らない場所で美緒さまと手をつなぎ立ち尽くしていた。


「おかえり美緒」

「うん」


そして周りにいるとんでもなく美しく可愛らしい女性たち。

…か、神様?


私の直感がそう伝えてくる。

冷や汗が止まらない。


「ふーん。その子がエレリアーナね。初めまして。私は創造神リンネ。よろしくね」

「ふあ、は、はい」

「…あら、可愛い子ね…私は精霊王ファナンレイリよ…よろしくね」


創造神に精霊王。

さらには今手を繋いでいる伝説のゲームマスター。


私は意識を手放した。



※※※※※



ギルドの聖域。

今ここでは私の時渡の能力で時間を止めてあるエレリアーナが静かに目を閉じていた。


「間に合った…かな?」

「そうね。…ごめんなさい美緒…忘れさせられていたとはいえ…この仕組みの首謀者は私なの…酷い仕掛け…何もなかったらこの子の命は無かった…謝っても許される事じゃない」


実は今回のギミック。


悪魔が世界の進化を防ぐため、龍姫を殺すことを前提に仕組んであった策だった。

龍姫がいない場合。


まずアランが竜帝になることができない。

つまりはシナリオの崩壊。

まさに虚無神の願いには反するものの最終的な目標に届く裏技のようなチート技だった。


さらには新たなエンシャントドラゴンの発生を防ぐ。

龍姫がいなければ彼らは番う事が出来ない。


つまり新たに生まれることが不可能になってしまう。


「…あれ?でも…フィムはどうしたのかしら」

「うん?ああ。フィムはきっとお母様のお腹の中で数百年いたのでしょうね。エンシャントドラゴンは非常に優秀なの。きっとこの仕組み、理解していたのでしょうね。だからきっと。フィムは実際には200歳オーバーね」


創造神であるおばあ様、ルーダラルダ様の渾身の賭け。

それは本当に余裕のない選択肢だった。


まず龍姫であるエスピアさんの魂を分割。

それを三つに分けていた。


ひとつはダミーである封印された龍姫。

ひとつは次元を超え今ここにいるエレリアーナの中。

そして。


最期の一つ、一番の人格。


大精霊であるフィードフォート。

彼女が保管している。


「ふう。おばあ様、分かっていらっしゃったのね。龍姫が狙われる事」

「うん。ルーダ様おっしゃられていた。『いいかい?絶対に切り離された悪魔はこの世界の破滅を望む。虚無神はね、あいつは滅びを望んでいるんじゃない。この世界の住人、そのすべてが最高の幸せを享受する事、それが一番の目的なんだ。そしてそのあとの絶望。…まったく。絶対者が性格破綻者とは…世も末だ。…だからねレイリ。辛いだろうがこれは必要なことだ。…悪いがあたしゃそこまでお人よしじゃない。守りたいんだ…だから…』…そして私は記憶を封印、改ざんされていたんだ」


語られる真実。

私はチクリと胸が痛んでしまう。


しょうがなかったこと。

でも。


だからと言って一人の少女を犠牲にしていい話ではない。

私はそう思うし、だからこそ絶対に救う。


「私今から無茶をする。この子を助ける」

「…美緒…ふふっ。あなたならそう言うと思った。ねえ美緒?」

「うん?」

「フィードフォートに会いに行こう」

「…うん」


「場所は…知らないよね?」

「そうだね。完全な秘匿情報…でもレイリは知っているのでしょ?」

「うん。もうすべてが分かった今、私は全力であなたを補佐する。もう縛りなんてあなたが解放してくれたんだもの。…今伝えたよ?行こう!!」

「うん!」


私レイリの手を取る。

迸る魔力。


次の瞬間、私とレイリは魔力の残滓を残し、姿を消していた。


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