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第206話 工作部隊へのお仕置きと削がれるガザルトの力

音もなく侵入する数人の男性。

廊下の柱の陰に身を隠しながらもつい言葉が漏れてしまう。


「静かだな…くそっ、筒抜けか」


建物に侵入したノードルドは自身の魔力を隠蔽の技術で変化させ、徐々に下の階から上へと伸ばす。


(…誰もいないだと?…っ!?まさか…伝説の転移魔法の使い手がいるのかっ?!)


ノードルドは背中に嫌な汗を大量に流してしまう。


転移できるものがいるとするのなら…

そしてそれを戦略として組み込んでいるのなら…


(くそがっ!罠だ…っ?!…くうっ?!!)


突然全身を駆け抜ける、今だ経験したことの無い濃密な魔力。

突然目の前に現れる恐ろしいほど美しい少女。


「ふん。下郎が…わが目を見よっ!!」

「っ!?………はっ」


魅了。

真祖であるマキュベリアのそれはレジスト不可能。


ノードルドは目をうつろにさせ跪き、首を垂れる。


「お主、名は?」

「……ノードルド…でございます」

「ふむ。役職と所属は?」

「ガザルト王国諜報部隊長…でございます」


ビンゴ。

マキュベリアはにやりと顔を歪める。


「アザーストよ首尾はどうじゃ」


音もなくマキュベリアの眼前に跪くアザースト。


「はっ。すべて無力化に成功しました。…外も…む?…どうやら掃討が終了したようですな」


完全勝利。


既にすべての暗殺者、斥候部隊、そして後方支援の数十名。


無力化し、さらには魅了の魔刻石、そしてマキュベリア渾身の魅了。


仕事を終えたマキュベリアは外にいるスフィナの目を通し、あたりの様子を覗った。

既に無力化され縛られているガザルトの兵たち。


マキュベリアは自身を纏う魔力を霧散させた。


「ふん。思ったよりも温いの…む?…っ!?スフィナ!!防御じゃ!!!」


突然悍ましい魔力が外で膨れ上がる。

美緒との同期、それで得た情報。


間違いない。


『人間爆弾』だ。


刹那凄まじい魔力と超高温が、激しい衝撃波とともに建物を揺るがす。


ズドオッ!!!!ズガガガガガガガ――――ンン…


「スフィナアアアアアアア――――――――??!!!!!!」



※※※※※



建物を望める高台。


距離にしておよそ1キロ。

悪魔の一体、神官のような衣をまとったゼギアノードはにやりと口角を上げた。


「おやおやおや~…自信たっぷりでしたが…ふむ。これはいい機会です。少しだけでも減らしておきましょうか」


そして杖のような物に悍ましい魔力を纏わりつかせるその男。


「ふん。仕方あるまい。…やるなら早くするのだな。我の転移はいわば諸刃の剣だ。しばらく動けん。…早く休みたいものなのだが?」


「ククク。まあ仕方ありませんねえ。破壊痕、見てみたかったのですがねええ。…起動しました。良いですよ?」


「…ヒューマンなぞどうでもよいが…一応ザイルルドのお気に入りだ。…良いのか?」

「ええ。今回のおもちゃ、ビット君のよりも弱いですし?それに彼は建物の中。せいぜいゲームマスターの配下に守っていただきましょう」


「…なるほど。吸血鬼の真祖…強いな。…まあ死ぬことはあるまい。行くぞ」

「はあーい」


消える二人の悪魔。

実はこの判断、美緒の幸運値のなせる業。


建物は壊せずとも多くのゲームマスターの仲間たち、その数名は殺せると踏んでいた悪魔たち。


しかし美緒のギルドメンバー。

誰一人怪我すら負う者はいなかった。


なぜなら…



※※※※※



爆発の直前。

悍ましい魔力が膨れ上がったとき、その対象のすぐ近くにはサンテスがいた。


実は恐らく使われるだろうと読んでいたコメイ。


単体で爆心地にいたとしても傷すら負わぬ超絶防御力特化のサンテスに、捕虜となる敵兵の監督を任せていた。


「っ!?コメイの言った通り…流石は美緒さまが認めた軍師。ならおらっちがやることは決まっている…はああっ、アーツ『金剛無双』アーツ『蟻地獄』」


サンテスの体から魔力があふれ出す。


「おまけだあああっっ!!!アーツ『ダイヤモンドの心』!!!!!」


そしてさらにそれを凌駕するとんでもない魔力が、ノーウイックの隠ぺいに包まれその様子を完全に秘匿していた。


刹那膨張し弾ける人間爆弾。

アーツを発動したサンテスが光に飲まれ、衝撃波のみがあたりを蹂躙。


そして数秒後。


サンテスの居た半径2m。


中央で無傷で佇むサンテスの周りには底が見えないほどの大穴が一瞬で現れていた。


「ふうむ。問題ない、な。へへっ、美緒さまに褒めてもらえるかな?」


とんでもない防御力。

さらにはあの破壊の力、全て自身に向けさせる蟻地獄。


そして。


ダイヤモンドナイトへとジョブを変えたサンテスが新たに取得したアーツ『ダイヤモンドの心』


己の信じるもの、それが壊されない限り絶対に壊れない鉄壁の結界。

まさに今その効果、ギルドの皆は目撃していたんだ。


「…凄まじいの。…のうアザーストよ」

「はっ」

「お主、あやつに勝てるか?」


絶対者であるマキュベリア。

彼女は美緒以外のヒューマンに初めて尊敬の瞳を向けていた。


「いえ。負けはしませんが…絶対に勝てませぬ」

「ふん。お主も成長したの。カカッ。それを言える、まさに成長じゃ。楽しいの、アザーストよ」

「御意」


建物から出てきたマキュベリアとアザースト。

本来ここら一帯が吹き飛ぶほどの破壊の力。


僅か2m位の破壊痕を残している今の現状。


改めて感嘆の念を抱いていた。



※※※※※



ガザルト王国貴族街の一角。

寝静まる深夜。


開発部の責任者で新造船の工場所長であるバロッド伯爵は自室で、苦虫をかみつぶした表情で『国王よりの親書』いや『出頭命令書』をまさに穴が開くほど見つめていた。


「『…貴殿の怠慢、目に余るものがある。…よって明朝9時、謁見の間へ来られたし…王より直接の査問、遅れることこれは反逆と心得よ…』…くそっ、くそがああっっ!!…ワシのせいなのか?…違う。ワシのせいではない…だが…明日ワシは間違いなく処刑される…もう二度と研究ができない?…嘘だ…嘘だ…イヤだ…いやだあああああああっっっ!!!!」


みっともなくベッドで転げまわるバロッド伯爵。


何より彼は既に国王や国家にはみじんの忠誠心も残っていなかった。


「…逃げる、か?…し、しかし…どこへ?」


彼はまさに研究一筋。

実はこの数十年、彼は工場と自宅をただ往復していただけだった。


酒も飲まず女も買わず。

ただひたすらに研究にそのすべてを捧げていた。


そして今回の仕打ち。


処刑される恐怖よりも怒りが、何よりも研究を奪われることにまさにはらわたが煮えくり返っていた。


『…そんなに研究したいの?』

「っ!?な、なんだ?」


突然響く声。

バロッド伯爵はあたりをきょろきょろと見渡す。


『ねえ。あなたはさ、人を殺すものの研究がしたいの?それとも新しい技術とか?どっちなの?』


なぜか直接脳裏に響く声。

そのあまりに非科学的なそれに、却って彼は落ち着いて来た。


おもむろにベッドに腰をかけ目を閉じるバラッド。

そして脳裏に言葉を並べる。


(人を殺す?ふん。それは結果だ。飛空艇は人殺しの道具ではない。ヒューマンの夢じゃろうが)

『へえ。じゃあさ…これ、どう思う?』


突然脳裏に浮かぶ、美緒のギルドにある電子レンジ。


驚愕がバロッドを包み込む。


「おおおっ?!!!!な、なんじゃ?この箱は…むむ、周波数?そうか、振動を与えるもの…おおっ、まさに神の技術…学びたい、学ばせてくれるのかっ?!!!」


『うあっ?!…圧すごっ?!…コホン。…祖国を捨てることになるけど?…生半可な覚悟じゃ…』

「連れて行ってくれっ!!国なぞ何の執着もないわい!!さあっ、さあああっっ!!!」


ガザルトの頭脳とまで言われたバロッド伯爵。

かの国は知らぬうちにその力を失っていた。



※※※※※



そしてこの加入。


美緒たちのギルドの『とんでもない科学の進化』をもたらす結果となるのであった。


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