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第187話 解放されるゾザデット帝国

私がマキュベリアと話をした翌日。


しっかりと公爵を捕らえた別動隊、その部隊長を務めたドレイクとザッカートはファナンレイリとナナとともに皇居ゾルジード宮殿の貴族牢を訪れていた。


「ご足労感謝します。ファナンレイリ様、ドレイク殿、ザッカート殿、エルファス嬢」


深々と頭を下げる皇帝ゾルナーダ。

そして同席している宰相のレリアレード侯爵が魔刻石を使い貴族牢の封印を解除した。


結界により中の様子が見えなかった貴族牢。

今そこの高級そうなソファーの上ではいかつい顔の中年男性が太々しくも大仰に座っていた。


「ふん。やっと結界を解きおったな?貴様ら、ワシをこんな目に合わせおって…ゾルナーダよ、覚悟はできておろうな?」


貴族牢は牢屋とはいえ高貴なものを捕らえる場所。

出入りの制限はあるものの、高級な部屋だ。


しかし捕らえられていたグラリアド公爵は怒りに顔を歪めていた。


「無実のワシを捕らえるとは…貴様この帝国を割りたいのか!!」


顔を赤く染め激昂するグラリアド公爵。

彼は自身が悪いとはつゆほども思っていなかった。


「グラリアド公爵。あなたには国家反逆罪、外患誘致財、そして皇女暗殺の嫌疑が掛けられております。さらには国内のみならずこの大陸における民の誘拐及び奴隷化…すべてが重罪。…どうか自白いただけないだろうか」


分厚い書類を見やり、レリアレード侯爵が問いかけた。

実はこれはこの男の罪の一部―――


さらに悍ましい事に彼は手を染めていた。

しかし。


「ふん。これは異なことを。貴様、狂ったか?…証拠なぞあるまい。なにしろワシは今言った事、全く係わりのない事だ。…ワシに対する侮辱、絶対に許さぬ」


この男の言う事。

まさにその通りだった。


状況的に間違いなくこの男は真っ黒だ。

しかしまったくと言っていいほど証拠がない。


間違いない。

この男は悪魔の権能を使っている。


思わずレギエルデから怒気が放たれた。


「ひぐっ?!な、なんだ貴様…ふ、不敬であろうが」

「…黙れ。…ファナンレイリ様…」

「ふむ。あくまでシラを切る、か。…素直に吐いておればよいものを…ゾルナーダよ。良いのじゃな?」


精霊王ファナンレイリの権能のひとつ。

真実の眼。


物の理を見抜く力、まさにレジストは不可能だ。

何よりファナンレイリだって頭に来ている。


大切な美緒。

その美しい精神を蹂躙したザナンク。

そしてそれの力を使い勝ち誇る目の前の愚かな男。


既に繋がりは途絶えているというのに。


「…はっ。ご随意に。…すでにこの男の罪、許せる範囲を超えておりますれば」


もちろん事前にスキルの説明は済ませてある。

そしておそらく。


スキルの影響でグラリアド公爵の精神が壊れることも。


「承知した。…グラリアド、と言ったな。我は精霊王ファナンレイリ。頭が高いわ。ひれ伏し懺悔せよ。『真実の眼』発動!!」


「なっ?せ、精霊王、様?…ば、馬鹿な?!ぐぎいいいいいいっっっ?!!!!!」


美緒にすべての束縛を解かれた全力のファナンレイリの真実の眼。

悍ましい情景がここにいる全ての脳裏にリンクしていく…



※※※※※



薄暗い上等な部屋の一角。

そこのあつらえられた高級なテーブルに、あの男ザナンクが腰を掛けていた。


「公爵。そろそろ皇女の命は終えるのだな?…ククク、いい女だ。死ぬ前に一度味見をしたいのだが?」

「ふはは。貴様も物好きじゃのう。まだまだガキだぞ?確かに体は素晴らしいがな。あいつの母親にそっくりじゃ…ククッ、すでに数多の女を抱いたワシじゃが…他人の愛する女を力づくで従えるあの興奮…愚かな弟にはもったいないあの女…クククッ、あの体、久しく忘れていた興奮が沸き立つわ。…最期まで毅然とした凛とした姿…それが最後は泣き叫び懇願してくる…震えてしまうわ」


恍惚の表情を浮かべるグラリアド公爵。

何故かむわりと嫌なにおいが充満する。


「ふん。貴様も人の事は言えんだろうが。この変態が…しかも楽しみながら切り裂いたのであろう?狂人が」

「くくく、これは異なことを。貴様だってそうするのだろう?」

「確かにな。…屈辱にまみれ命の火が消えるほどの激痛に泣き叫ぶ女…滾るな」

「であろうが」



※※※※※



脳裏に流れる下卑た会話。

その悍ましさに皇帝であるゾルナーダは唇をかみしめる。



※※※※※



「ところで。例のガキ、ラギルードと言ったか?いい感じで染まってきたようだが…」

「うむ。あの小僧はもうすでにわしらの同志よ。何でも婚約者にいたく執着しておる。自分の身の丈すら測れぬ小者…レリアレードの娘…あれは危険だ。…まあすでに手は打ってある。直にその躯すら残らぬであろう?」


「うん?ああ。俺様の『運命誘導』を使いやがったな?ったく。俺はお前の便利アイテムじゃねえんだよ。…対価は?」

「ああ。生娘を5人ほど用意した。…食うのか?」

「ふん。企業秘密だ。貴様は知る必要ない」


圧を纏いグラリアド公爵を睨み付けるザナンク。

思わず冷や汗が流れてしまう。


「コ、コホン…それで、いつワシは皇帝になれる?」

「ん?ああ、そうだな。…ゲームマスターが現れたからな。とりあえずあいつを無力化する。

それからだ。まあ、数年のうちにはすべてが終わる。しばらく身でも隠しておけ」


「ゲ、ゲームマスター?…伝承の…大丈夫なのか?」

「問題ない。俺様には多くの仲間がいる。既にガザルトの王は傀儡だ。クククッ今年の4月、そこで世界は戦乱に包まれる。少なくともあと1年。帝国歴27年にはこの世界は俺たちの手の中だ」



※※※※※



流れ続ける悪夢のような情景。

ナナは唇をかみしめ公爵であるグラリアドを睨み付けた。


すでに公爵は精神に深く侵入され茫然自失状態。

正直全力の『真実の眼』のスキル、おそらく彼の脳はもはや正常に戻ることはないだろう。


「エル」

「っ!?…は、はい。お父様」

「…どうしたい?…お前が望むのなら…ラギルードには恩赦を与えることはできるが…」


すでに拘束されているラギルード。

彼はもう2年前から禁忌である人身売買に携わっていた。

さらには多くの無垢な女性をその毒牙にかけていた。


もちろん許されざれる重罪。

しかし今ここでたどり着いた真実。


彼は弱い心を唆され、付け込まれていた被害者でもあった。


「…いえ。彼は付け込まれたとはいえ…非道なことをしています。許されません…法での裁きを」

「…そうか」


正直思うところはある。

優秀なエルファスに対し普通の男性であったラギルード。


彼は心の底からエルファスの事を愛し、そして同時に恐れていた。

此処にきてついに、エルファス嬢の初恋は完全に終わりを告げていた。


(さようなら…ラギルード…ラギ)



※※※※※



あの後さらに多くに事実が暴露されていた。

国宝級の秘宝での保存と検証。

何より精霊王であるファナンレイリの渾身のスキル。


さらには念話で共有した今世の創世神であるリンネのお墨付き。


ゾザデットの闇はすべて白日の下にさらされることになった。



※※※※※



グラリアド公爵に与していた貴族27名。


そのすべては断罪、そして隠されていた誘拐被害者である子供たち229名が解放され、長きにわたるゾザデットの闇は払われた。


そしてあらわになったこの世界の脅威。

ガザルト王国。


まもなく帝国歴26年2月になる。

齎された情報である4月まで、すでに2か月しか猶予のない状況が改めて確認されていた。



世界が動く。



その事実に、レギエルデは身震いを隠せずにいた。



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