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第184話 悪魔ザナンクとの戦闘

決戦当日の朝。


準備を終えた私たち。

転移と転送ゲートを使い、幾つかの『超絶武具』を開放。


戦いへと赴いていた。


もちろん一番最初に帝国全土を覆う結界と隠蔽を施したよ?

ノーウイックの『隠蔽』も私と相乗りで付与できたのよね。

これで幾つかの懸念は解消、出来る準備は完璧に整った。


さすがは伝説の義賊。

本当に頼りになる。


そんなわけで私は今、決戦の前に状況のすり合わせを行っているところだ。



※※※※※



昨晩行った搦め手と言うか策略。

あり得ないほどの混乱をゾザデット帝国の叛意ある貴族たちに齎していた。


帝国のほぼ中央、グラリアド公爵の領地。

事前の調査と策略で、すでに居場所を掴んでいた私たち。


侯爵の隠れ家である別邸、帝国軍近衛兵団により包囲が終了していた。


「お疲れ様です。サナラジータ伯爵様」

「お、おはようございます。ゲームマスター美緒さま」

「…布陣は完璧のようですね」


別邸を見下ろす立地に設営された本部テントの中。


ゾザデット帝国の精鋭である軍務大臣の彼。

さらには陣頭指揮として参戦しているグラード侯爵が膝をついた。


「凄まじいですな」

「えっ?」

「あなた方の昨晩の策略…すでに多くの貴族連中はすべて無力化に成功。これで航空戦力による逃亡は無いでしょう」


実はグラリアド公爵に通じていた有力貴族たち。

そのすべてを昨日急遽作成した怪しい魔刻石により、航空戦力を運用できる操縦士を含むほとんどの男性たちが使い物にならなくなっていた。


「…聞いた話ですが…どうやら年老いたものまでもが…そ、その…」


何故か顔を赤らめるグラード侯爵。

うん。

まあ…


一応コメイからは聞いているのよね。

私の『魅了』を込めた後に『魔改造』したことを…


当然その効果も…


まったく。


なんか私まで『めっちゃエロい女』みたいじゃないのよっ!


「さすがはゲームマスター様です。私どもの想定を超える効果…いやはや…」


ううっ?

なんか…


目つきが居た堪れないのですけど?!


…あとでコメイ、お仕置きですからねっ!!


コホン。


何はともあれ。

グラリアド公爵になびいた貴族連中による、航空戦力での逃亡の心配はなさそうだ。


きっと帝国兵の皆さんの被害は大きく減らすことができる。

私は満足げに頷き、本陣における指揮権をコメイにお願いした。


本命である悪魔ザナンク。

それに集中するために。



覚悟を決めた私たちはノーウイック渾身の隠ぺいを全員に再度付与した状態で転移した。



※※※※※



かつての世界線、そして幾つものルート。

私に不埒な真似を、そして隠蔽されていたけど…


マキュベリアに酷い事をしたザナンク。


絶対に許さない!!


そして今までのルート。

一度もなかった悪魔そのものとの戦闘。


ついに幕を開けた。



※※※※※



静寂に包まれたシベリツール、マキュベリアの館。

刹那光と轟音に包まれた。


「っ!?ぐうっ?!て、敵襲だと?!!…がああ、なんだ?この束縛…なあっ?!!」


いやらしい顔つきで惰眠を貪っていたザナンク。

何故かマキュベリアのベッドの上でほぼ裸、さらに彼女の枕を抱きしめている姿にマキュベリアがブチギレた。


「キサマ…このド変態がっ!!…死んで詫びろ!!」


ザナンクを包み込むマキュベリアの超絶魔力。


彼の防御結界を突き破り、蹂躙する洗練された魔法。

血しぶきが舞い、端から凍り付いていく。


しかし。


急所を避け、凄まじい身捌きで躱していくザナンク。

致命傷を与えられない。


さらには膨れ上がる異様な魔力。


(…強い…確実に絶封の魔刻石で捕えているのに…っ!?)


「マキュベリア!!よけてっ!!!」

「っ!?ぐぬ?!」


氷の大地。

そこからいきなりはえてくる悍ましい死霊の群れ。


その中からひときわ大きな魔物が咆哮を上げる。


「くっ、アイスカオスドラゴン?…8体?!」


呪いを含む絶対零度のブレスがマキュベリアぎりぎりを突き抜けた。

瞬間、姿がぶれるザナンク。


(っ!?逃がさない!!…ハアアっ!!!)


「っ!?ちいいっ!??くそがっ、美緒か?…以前のルートより強いだと?!!」


転移は使えないザナンク。

だが、幾つかの秘術で逃亡を図っていた。


でも捕らえた。


私は渾身の魔力で彼の精神を捕縛する。


嫌だけど…

悍ましいけど…


(絶対に逃がすもんか!!)



※※※※※



今この瞬間―――


絶対に逃がさないために私は彼の精神とリンクをした。


刹那―――


私の精神世界は色を無くす―――



※※※※※



寒い…


どうして誰もいないの?


おかあさん…

お父さん…


こわいよ


グスッ…


(美緒…)


鼠色の世界―――

一人佇む私。


私を呼ぶ声が聞こえる。


「…だれ?」


やがて黒い塊が私の目の前に現れた。


『ミツケタ…美緒…おいで』


「…だれ?」


『…いいから…おいで』


背中に嫌な汗が噴き出し、沸き上がる原初の恐怖。

心細さで足が震える。


「っ!?……だれ?」


『おいで…こい…こいっ!…こっちに来いいいいいいいっっっっ!!!』

「いやあああああああああっっっ!!!」


分からない世界

分からない自分


そして迫りくる怖い黒いモノ


「あああ…ああ……」


黒いものが私を包み込む。

消えていく私


何もない私が消えていく―――

何もない私?



わたし…




……



『美緒っ!!!』

『みおっ!』


『ダメだ美緒!』


突然包まれる、優しく温かい魔力と届く声。


暖かい…


優しい声。

愛おしい声。


心が震える


暖かいものがあふれ出す


ああ


あああ


あああああああああああああっっっ



※※※※※



刹那―――


時間が止まる。


全力の時渡。

3人目の私が笑いかける。


『…こんなところで終わる?…許せないわね…踏ん張りなさい?…私と『遊ぶ』のでしょ?』

「っ!?」


ああ。

そうだ。


私にはもう一つ使命がある。


全てを終わらせる。

でもそれは。


彼女―――

『3人目の私』の前に立つ、条件に過ぎないんだ。


『ふふっ。いい子ね…でも早い。仲間には教えさせない…認識もさせない…『足りないあなた』に試練を…恐怖をあげるわ。壊される恐怖…』


優しく微笑む3人目の私。

でも。


その張り付く笑顔、なぜか悲し気な光をその瞳は湛えていたんだ―――



※※※※※



一瞬の邂逅。

私は完全に『今の瞬間の事実』を消去された。


そして刷り込まれる。

ザナンクの権能を。


本当なら『効くはずのない悪魔の権能』を。



時は動き出す―――



※※※※※



時は数瞬遡る。

私が『3人目の私』と邂逅する直前。


妄想空間の中―――


ザナンクの術中にはまり、ほぼすべての精神を壊された私。

その事実に、ザナンクは下卑た笑みを浮かべ、さらに悍ましい魔力を揺蕩らせていた。



※※※※※



くくく。


まさに清廉な泉のような清らかな美緒の精神。

それを出鱈目に汚す快感。


たまらねえ…


美緒が俺の精神にリンクした瞬間に。

俺は自身が最も得意とする『惑わす魔力』


それにより構築した『妄想空間』の中に美緒を引きずり込んだ。


妄想空間は俺様のテリトリーだ。

此処では何人も俺には逆らえねえ。


流石は伝説のゲームマスター様だ。

そんな状況にもかかわらず、抵抗をつづけていたが。


くくく、ハハハハ。


俺様は遂に。

美緒の精神の奥深く、もろく無防備な場所を遂に捕らえた。


「…みいつけた」


最期の一手、これでコイツの精神は―――





「ごはあっ?!!!」


『させんっっ!!!』

『このっっっ美緒を開放しろおおおおおおっっっ!!!!』



※※※※※



ブチン!!


「ひぎゃあああああ――――――???!!!!!!」

「この下種が!!!」

「許さない!!!」


すでに私の仲間と悍ましい魔物たちとの戦闘、激しさを増していた。

しかしすべてに聞こえるほどのブチギレる音…


そして血しぶきを上げキリモミ状に吹き飛ばされるザナンク。


私の保険。

レルダンとルルーナとの精神共有。


私の危機に、彼ら二人が究極の覚醒を果たしていた。



「…う、うあ…ル、るるーな…レ、レルダン…」


どうにか危機を脱した私。

言葉がうまく出てこない。


危なかった。

もしあと一瞬でも…

遅れていたら…


私の精神はザナンクに完全に壊されていた。


もろい、そして大切な場所を壊されていく恐怖。

どうにか耐えていた私は仲間の心に触れ泣き崩れてしまう。


「美緒っ!!しっかりしてっ!!はあああっっ『聖なる加護』」


瞬間包まれる優しくも神々しい光の魔力。

ファナンレイリ渾身の聖魔力が私を包み込んだ。


「美緒っ!!」


そしてすぐさま私を抱きしめてくれるルルーナ。

私もたまらず彼女に縋りつく。





「ひぎゃああああああああああああああ―――――??!!!!!」


その瞬間。


アザーストとスフィナの全精力を吸収し、覚醒したマキュベリア渾身の究極魔法がザナンクを捕らえていた。



そして。




「セイグリットおおおおお、フルバーストおおおおおおおおおっっっ!!!!」

「はああああっっっ『魔装神装、光の槍!!!!』

「くらええっっ!!!『Ωヘルフレイムっっっ』!!!!10連発だああああああっっっ!!!」


怒りに震える勇者ロッドランドの渾身の一撃と妖精二人の最大奥義。



大地が光の奔流と凄まじい魔力に包まれその情報を失う―――


物理法則がその機能を放棄していた。



※※※※※



数秒後。

シベリツールの厳寒の大地。


寒風吹きすさぶ中―――


まるで何もなかったかのように静寂に包まれていた。



大量のドロップ品。


それがここであった激戦を証拠づけていた。



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