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第178話 皇女たちとの会話

暫くして。


改めて皇帝と宰相。

グラード侯爵、それから新たに加わった軍務大臣であるサナラジータ伯爵。


こちらからはエルノール、それからマキュベリアとアザースト、スフィナ、ドレイク。

この9名で、ゾザデットの戦力との合同作戦について打ち合わせを行ってもらっていた。


当然私も出ようと思っていたのだけれど…


『たまには私たちにも見せ場をください』


そうエルノールに押し切られてしまっていた。


まあ。


確かに1から100まで私がしてしまえば、それも問題なのだろう。

何より私の仲間たちは優秀だ。

任せたとしても最高の作戦を練ってくれるはずだ。


私は信頼し、任せることにした。


一方私とリンネとナナ、それからファナンレイリの4人は、今何故か第一皇女ミュライーナの自室に招かれているのだけれど…


うん。


どうしてそんなジト目で私を見るのかしら?


「コホン。改めまして美緒さま。この度はわたくしを救っていただき感謝いたします…じいい」


あうっ。


えっと…


すっごく美しい女性であるミュライーナ皇女殿下。

なぜか私に対しやたらと近いのだけれど?


私を美しい瞳で見つめるミュライーナ殿下。

あと数センチで触れてしまうほど近くに彼女の顔がある。


既に…そ、その…触れちゃってますけど?!


「…美緒さま…ああっ、なんて可愛らしいの♡」

「うあ、で、殿下?そ、その…うわっ?!」


おもむろに私を抱きしめる皇女殿下。

何気に色気を纏わりつかせている?!


ひいっ。


ど、どうして私の体、撫でまわすの???


「ああ、なんて瑞々しい…むうっ、ジナール、ズルい!!」


私を撫でまわしながらもさらにジト目をし、ジナールを睨み付けるミュライーナ皇女殿下。

さらには同じようにナナまでをも睨み付ける。


「ハハ、ハ。相変わらずだね、ミュラねえ」

「もうっ。イケずですわエルは。どうしてジナールのわがままばかり…わたくしも美緒さまのギルドに行きたいですわ」


うう、

あ、あの…


取り敢えず、私を解放して―――!!!



※※※※※



どうにか私を開放してくれたミュライーナ皇女殿下。


すっごく満足そうなのだけれど?!


コホン。


何はともあれ。

今私たちは彼女の専属侍女が淹れてくれた紅茶でのどを湿らし、くつろいでいるところだ。


「…それで私たちにお話とは?」


あの会談の終盤、ずっと沈黙を守っていた皇女殿下が私たちに提案していた。


「女性のみで共有すべきことがあります。非常に重要な案件。どうか時間を」


と。


並々ならぬ決意を浮かべた彼女。

そういう訳で作戦から外された私たちは二手に分かれていた。


「ええ。美緒さま…『モナード女史』…記憶にございますか」

「…モナード女史…っ!?あなたに呪いを付与した、ナナを殺そうとしていたアンデットの女性ですね?」


マギ山山頂。

私のパーフェクトヒールで一瞬で浄化された女性だ。


彼女の暗躍、それはこの帝国の根幹である『契約』を歪めていた大罪だった。


「あの女性。実は叔父であるグラリアド公爵の養女でした。そして今叔父は姿をくらましております。きっと叔父上は何かを知っている」


ミュライーナ皇女殿下は非常に優秀な女性だ。

彼女は独自ルートでこの帝国の闇、相当深いところまで掴んでいた。


「…お姉さま、何か分かっているのですか?」

「ええ。…まあ、だから命を狙われたのだけれどね。エル」

「はい?」

「…ラギルードはあなたを心の底から愛していた。わたくしは何度も相談を受けていたわ…でも彼は間違えた。そして禁忌に触れてしまったの」


繋がる真実。

どうやら既に相当数の貴族が、そのグラリアド公爵の息がかかっているようだった。


「グラリアド公爵、叔父は皇帝になりたかった…でも彼は凡庸。父上に才能という面で悉く劣っていた」


静かにカップに口をつけるミュライーナ。

そしてその瞳が冷たく沈んでいく。


「そして…母様を、皇妃であるハマーサ様を…彼女を穢し殺した男」

「っ!?なっ?…お姉さま…私、それ…知りません…本当なのですか?!」


皇帝の家族。

父親であるゾルナーダ、そして二人の娘。


すでに彼女たちの母親は儚くなられていた。


「わたくしがまだ8歳のころです。あなたはまだ4歳だった。…思えばあなたがおてんばになったのもあの頃からですわね。もっともエルのおかげで…あなたは変わりましたけど」


美しく聡明だった彼女たちの母親。

ミュライーナの脳裏に浮かぶ優しい笑顔…


欲と憎悪に飲み込まれていたグラリアド公爵によって散らされていた。


「な、なぜ?そもそもどうしてその時叔父は断罪されなかったの?」

「証拠がないのです。状況証拠は間違いないし、わたくしだって確信している。…でも物的証拠が全くない。『まるで記憶を消されたみたいに』…美緒さま、これって何かに酷似していませんか?」


先ほど思い出したマキュベリアの眷属、ザナンク。

確かにミュライーナの話す内容、悪魔の権能に酷似している。


でも…

私ミュライーナ殿下には伝えていないような…


「コホン…『伝心』のスキル…ご承知ですよね?」

「っ!?ま、まさか…」


「ごめんなさい黙っていて…私は伝心のスキル、実はすでにカンストしております」


私は納得してしまう。

彼女ミュライーナの逸話。


それはまさに人知を超えるようなことが数多く語られていた。

誰も知り得ないような情報、そしてその慧眼。


チートであるスキル『伝心』

それをカンストしていたのなら頷けてしまう。


「子供の頃でした。いきなり人の心が聞こえるようになって…怖かった…悲しかった…でも…お父様やジナール、そしてエル。…あなた達は本当に美しい心を持っていた。わたくしはあなたたちに救われたの」


「お姉さま…」

「ミュラねえ…」



※※※※※



ロナンがいつか言っていたことがある。


他人の純粋な心の奥の声。

それは魂が引き裂かれるほど悍ましいものだと。


きっと彼女は絶望していた。

でも。


彼女を思う父である皇帝、そして劣等感を抱きながらも心の奥で常に敬愛を向けていたジナール。


さらには恐ろしいほど純粋だったエルファス。


彼女はそれに希望を見出していた。


そして。


彼女はその力をこの帝国に捧げると誓っていた。


「…残念ながら悪魔に憑りつかれたものにはこの力届かないのです。だからモナード女史と初めて会ったとき、わたくしは警戒心をあらわにしてしまった。だから彼女、わたくしを殺そうとしたのでしょう。まさか食事に呪い、想定できませんでした」


食事に呪いを混ぜる技術。

この世界でそれの到達したのはガザルト王国だけだ。


「ミュライーナ様、この話、皇帝には?」

「もちろん共有済みですわ。ですがお父様にも考えがあるご様子。ふふっ。お父様はとっても可愛いのです。わたくしの体、欲情と親愛の瞳でいつも見ますもの。…少しくらいなら触れても構いませんのに…」


何故か顔を赤らめる皇女。

貴女婚約者居ますよね?!


思わずため息をつくジナール。

そして残念なものを見る目で私に告げる。


「あー。お姉さま、婚約はしているのですが…もう5年、未だにそのままなのですわ。もう閨は共にされているのですが…そ、その、性癖と言いますか…」


驚愕の事実。

確かに第一皇女はいまだ独身。


身を固めない事に、実は帝国内外でも幾つもの噂がささやかれていた。


「あら。性癖だなんて。わたくしはただ、お父様を愛しているだけなのですよ?もちろん婚約者であるダラムの第2王子、サイデルド様だって嫌いなわけではありませんもの」


そしてその瞳が鋭さを増していく。


「何よりも…ダラム王国ですら既にガザルトの手の物に言いように操られておりますの。そんな国の方との婚姻、闇を払うまでは承服できませんもの」


「っ!?」

「…お姉さま…それは…真実なのですか?」


「ええ。残念ながら。…ですから美緒さま、どうかこの大陸に潜む悪魔、打ち払ってはいただけないでしょうか」


驚いた。

既に皇女殿下は自国のみならずこの大陸に対し想いを馳せていた。


「残念ですが、わたくしには感知する力しかありません。それに私を心から信じてくれる力、未だ少数です。…このままではこの大陸、そして世界。…混乱に包まれてしまう」


きっと頭の回転の速い彼女。

今ここで話している内容も、気付けば在り得ない展開を見せている。


余りにも支離滅裂だ。


…警戒している?


何故か彼女は警戒をしている?

…まさか?!


私は魔力を練り上げる。


「…なるほど…ハアアッ!!『絶無結界陣』!!!」


刹那美緒から爆発的に迸る魔力―――

空間が遮断され、空気と時間が一瞬その存在を書き換えられる。


「…ふう。これでよろしいですか?」

「っ!?ふふふ。流石はゲームマスター様です。このタイミング。完璧ですわ」


私渾身の結界。

一瞬全ての繋がりが断たれていた。


そして。


彼女は本心を語り始める。


ゾザデット帝国第2皇女ミュライーナ・ルナド・ゾザデット。


称号『報告者』リポーターの保持者。


そしてシナリオではない、この世界の真実の一端が私たちに告げられた。



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