第175話 ゾザデット皇帝との会談
レリアレード侯爵との打ち合わせを終えた私とナナ。
夕刻になって帰ってきた私は執務室でルルーナとミネアからいくつかの報告を受けていた。
因みにナナはすぐにフィムに会いに行ったよ?
「へえ。マイはやっぱり特殊なジョブが現れていたのね?…『白衣の小悪魔』?…なんでそういうジョブ?…はあ。マイはとっても可愛いからなのかな」
「あー、まあね。でも『傾国の美少女』とか『魅惑のナース』とかよりは良くない?マイはどんなジョブでも必ず誘惑系が付きまとっちゃうのよね」
元々すっごく可愛いけど…
何故かマイは影があった。
本人曰く『男性が怖い』そうなのだけれど…きっと彼女の対になる性格…うん。
私もマイとは状況は違うものの…男性に対して恐怖心があったから…少しわかる気がする。
きっと思いが強すぎるのよね。
おそらく小さいころから異性の好奇の目を向けられ続けていた彼女。
防衛本能が強すぎて、反動でそういうものが発露する…
私は大きく息を吐いた。
「今度一緒にお出かけとかして…親交を深めようかな。…きっとマイはもっと可愛くなる。そして私は彼女には幸せになってもらいたいもの」
「…うん。そうだね。…ねえ美緒?その時にはさ、皆でまた皇都にでも行かない?マイナールさんのお店とかさ」
「うにゃ。あれからうちらのギルド、多くの女性が増えたにゃ。みんなにも可愛い服、用意してあげたいにゃ」
気付けばあれからすでに2か月以上が経過していた。
色々イベントが盛りだくさんで、あっという間の激動の時間。
そして増えた多くの女性陣。
確かに一度、リセットと言うか息を抜いた方がいいかもしれない。
「とりあえず明日ゾザデットの皇帝との会談があるの。そのあとは少しなら時間取れそうだから。そうしたら私からルギアナードの皇帝には打診しておくね。きっとレナークさんも待っているだろうから…あれから何通もお手紙ももらっていたしね」
初めてのお買い物の時に案内をしてくれた女性騎士のレナーク・コルナさん。
とっても楽しかったあの日のことが思い出される。
「そうだね。うん、楽しみ。…決まったら教えてね?」
「うん。ありがとうルルーナ。…ねえ?」
「うん?」
最近ルルーナはますます可愛く、そして美しくなっていた。
きっと。
思わず私はミネアと頷いてからルルーナに視線を向ける。
「…スフォードとは…そ、その…したの?」
「ひうっ?!な、な、な…」
突然真っ赤に染まるルルーナ。
途端に少女のような純情そうな表情が浮かぶ。
「美緒、ルルーナはどうやらオクテにゃ。イチャイチャはしてるみたいにゃけど…まだ乙女なのにゃ」
ニヤニヤとしてミネアが告げる。
反対にルルーナはますます赤くなる。
「…そうなんだ。…ねえルルーナ?私たちに遠慮とかしないでね?私はあなたにだって幸せになって欲しい。…スフォード最近スッゴク格好いいもんね。…きっとあなたの事とっても大切にしてくれそうだし」
スフォードはずっとルルーナのことを想っていた。
それこそ娼館とか全く行く事もなく。
「…あうっ…そ、その…あ、ありがと」
「うん」
どんどん人が増える私の愛するギルド。
当然そういうことだってこれから先増えるだろう。
いつか新たな命も授かることだろう。
私はなんだか心の中から温かいものが溢れてくることに喜びを感じていたんだ。
※※※※※
ルルーナとミネアが去った後。
今私は『獣人の国エルレイア』へと訪れていたエルノールとファナンレイリの訪問を受けていた。
レギエルデはコメイと打ち合わせがあるらしく不在なのだけれど、今日のことの報告を受けているところだ。
「っ!?竜帝アラン?!…そう。…アランがいよいよ目覚めたのね?…きっと竜の墓場、南方の孤島ね」
「さすがゲームマスターだね。美緒、彼とは『シナリオ』だといつ出会うの?」
3人ソファーに座り、いい香りの紅茶でのどを湿らす。
私は軽く想いを馳せ、レイリに視線を投げた。
「アランはさ、あそこから出ることはないんだよね。ていうか出られない?…だから迎えにいかないといけないの。前のシナリオ、と言うかゲームだと、彼は帝国歴30年に出会うの。と言うか私が探しに行ったのだけれどね。…ねえレイリ?その鳳凰族のメシュナードさんだっけ?私今度会いたいけど、良いかな?」
「うん?問題ないと思うよ。ていうか彼女、スイに会いたいらしいから…数日後ここに連れてくる約束したしね」
どうやら彼女、聖獣である朱雀のスイと親交があったらしい。
世の中は意外と狭いものだ。
「美緒さま。とりあえず明日はどうされるのですか?リンネ様とナナとマキュベリア、アザーストとスフィナで行くと言われていますが…もしよろしければ私も同行させてください」
「うん。ありがとうエルノール。あなたにも来てほしい。後は最初に訪れたドレイクかな。皇帝がドレイクにもお礼を言いたいそうなの」
今回最初に訪れたのはドレイクだ。
第一皇女であるミュライーナを救うきっかけ。
間違いなくドレイクの気づきだった。
「ねえ美緒?私も行きたいけど…人数多すぎるかな」
「うん?問題ないよ?それにきっと思っているより大事になりそうな気がする。なによりあなたが来てくれること、私とっても心強いし、嬉しい」
「っ!?う、うん。…もう。美緒可愛い」
「ふふっ。明日が終わったらさ、ザナークさ…コホン。お父さんに言って『シュークリーム』作ってもらおうね」
「うん♡」
私一人ではきっと何もなしえない。
改めて私は大切な仲間を見つめていた。
※※※※※
ゾザデット帝国ソルジード宮殿皇帝執務室。
今私たちは皇帝であるゾルナーダ・ルナド・ゾザデットと第一皇女であるミュライーナ、そして第2皇女ジナール、さらには宰相であるナナの父親アウグスト公爵、今回の倉庫群を保持していたグラード侯爵と大きなテーブルをはさみ対面していた。
「ご足労、感謝に堪えません。あらためて感謝を」
口火を切るアウグスト侯爵。
私は軽く頷いた。
「ふむ。大所帯で訪れた我らを受け入れてくれたこと、礼を言う。まずは自己紹介と行くか」
リンネはこういう時とっても頼りになる。
私は主導権を彼女に託していた。
今回私たちは8名で訪れていた。
特に超絶者である真祖マキュベリア。
彼女は思うところもあることだろう。
「皇帝よ」
「はっ」
「我は真祖マキュベリアじゃ。ふむ。面影があるのう。ワシがいたころの皇帝、フィルガスに似ておる」
「…おお、まさに数千年前の皇帝の名…あなた様が絶対者マキュベリア様…謁見の栄誉、身に余る光栄です」
立ち上がりそこで跪く皇帝。
皇女二人と侯爵位の二人がそれに倣う。
「ふむ。よい。過去のことじゃ。それよりも座るといい。今回の主役は美緒とナナじゃ。我はオブザーバーよ。いくつか聞きたいこともある。後でよいわ」
「はっ」
※※※※※
そして始まる会談。
帝国を包む闇、それが共有されていく。
そして。
私とリンネ、それからマキュベリア。
さらには精霊王であるファナンレイリ。
私たち4人は、この国の幾つもの場所で立ち昇る怪しい魔力、それを捕らえていた。
どうやら今回、話し合いだけでは終わらなそうなその様子。
私は一人、気合を入れ皇帝の話に耳を傾けていた。
いよいよ新作『スローライフどこ行った?!』投稿開始いたしました。
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