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第173話 ザナークの依頼

多くの絶対者がひしめき合う美緒のギルド。


そんな中『聖獣の角』と言うとんでもないレア素材を得て力を増し、10歳くらいまで成長したフィムは、サロンで大好きなソーダフロートに舌鼓を打っていた。


今日は美緒をはじめ多くの人たちが外出をしている。

そんなわけで今サロンは閑散としていた。


「おい、ルルーナ、ちょっといいか?」

「うん?どうしたのザナークさん」


今日は美緒もナナもいないため、フィムの隣にはルルーナとミネア、そしてラミンダの3人が一緒に居たのだが…


そんなルルーナに少し慌てた様子のザナークが声をかけてきた。


「実はな…料理に使うトマトがな。…少し心もとないんだ。スマンが『温室ハウス』に行って少し収穫してもらいたいんだ」

「トマト?えっ、今日はトマト料理なの?ふわー、楽しみ♡」

「ああ。それであそこは少し離れているから…里奈たちだけでは不安でな。まあ、美緒の装備品がある今、彼女たちとてあの辺りのモンスターに遅れはとらないとは思うが…戦闘の経験はないからな」


何故か困惑気味のザナーク。

その様子にルルーナが問いかける。


「えっと。別にいいけど…うちの男たちは?あいつらどうせ鍛錬してるんでしょ?」


大体の雑用はいつもザッカート盗賊団の仕事だった。

彼等は何より真面目だ。

それにザナークさんのオーダー、しかも食事がらみ。


むしろ立候補しそうなものなのだけれど。


ザナークは何故か頬をポリポリと掻いて、そっと言葉を口にした。


「…アルディがな…その。いわゆる模擬戦で…今クロットをはじめ数人が重傷を負っているんだ」

「っ!?はあっ?!!ど、どういう事?!!」


普段から激しい鍛錬をしている皆。

しょっちゅう怪我をするものの、もちろん一定のラインは超えないように細心の注意は払っていた。


「…実はな、どうやらクロットがアルディを必要以上に煽ったらしいんだ。何でも『この幼女好きの変態が!』とかなんとか…ワシにはよく意味が分からないのだが…」


「…幼女好きの変態?…ええっ?確かにアイツは以前変態だったけど…幼女???」


美緒に解呪される前のアルディは確かに女好きの変態だった。

ルルーナやミネアだっていやらしい視線を感じていたくらいには。


でも最近のアルディはそういう気配、全くなかったのだけれど?


「何はともあれ今アリアが必死に治療をしている。そんな訳でな、悪いがお前に頼みたい」


実はこのギルド本部の周り、過去の悍ましい禁呪の影響で農作物など全く育たない土地となってしまっていた。


でも美緒が比較的呪いの少ない場所、そこにチートスキルでわずかな面積ではあるものの農作物を収穫できる場所を既に設置していた。


「はあ。そういう事なのね。分かったよザナークさん。私とミネアで行ってくるね」

「すまんな」


そう言い残しサロンを後にするザナーク。

ルルーナはミネアに視線を向ける。


「…行くっ!!私も行くのっ!!」

「っ!?フィム?」


突然立候補するフィム。

思わずルルーナとミネアは顔を見合わせた。


正直成長したフィムは今めちゃくちゃ強い。

何よりルルーナとミネアよりも強くなっていた。


「…そうだね。一緒に行こうかフィム」


ここは辺境で禁忌の地。

こういう事でもないとなかなか外に出る機会は少なかった。

正直温室ハウスまでは、ここ最近ほとんど魔物の発生も確認できていない。

距離にして1kmくらい、大体30分も歩けばすぐつける距離だ。


何より温室ハウスにはお楽しみもある。

ちょうどよい気晴らしになるだろう。


そんな3人に新たな声がかけられる。


「あ、あのっ…私たちもついて行っていいですか?」


そこには。

サクラとマイ、そしてルイミが目を輝かせながら、興奮した様子で3人に視線を向けていた。



※※※※※



元々ほぼ原生林だったギルド本部周辺の森。

しかし200年前の禁呪により生態系が壊滅、おどろおどろしい雰囲気に包まれていた。


何より襲いくる魔物たちを殲滅しつくした美緒たちの圧倒的魔力により、壊滅していた生態系は完全にバグってしまい、見たことのない怪しい樹木がまばらではあるものの茂っていた。


「ふわー。凄いねここ」

「う、うん」

「……ねえ、あれなに?」


ルイミの視線の先。

何故か枝の先端に怪しい口のような物が付いている低潅木。

薄っすらと怪しげな気体を吐き出していた。


「あー。あれは『魔物騙しの樹木』だね。幻覚を見せて束縛、体液を吸いつくす魔木だよ」

「…や、やばい奴なんだね?」

「まあ、動けないし私たちレベルになると影響ないから…見た目はキショいけどね」


まさに魔境。

思わずごくりとつばを飲み込むルイミ。


「ねえ、マイ。…あなたはさすがにどっしりしてるのね?…私なんてさっきからドキドキしてるのに…っ!?…えっ?…マ、マイ?」


キョロキョロしているサクラやルイミと違い、しっかり前を向き歩を進めていたマイ。

しかしその表情を見てサクラは素っ頓狂な声を上げてしまう。


マイは。

既に魔木、その幻影に囚われていた。


「フフ…ああ、熱い…ううん」


そう言い、いきなり服を脱ぎ始めるマイ。

下着からつつましいものが見え隠れし始める。


「うあ、ちょ、ちょっと、マイ?…うー『キュア!』……大丈夫?」

「っ!?はっ?……は、はっくしょん。…あ、あれ?わたし…」


突然我に返り、思わず身震いするマイ。

まだまだ寒い冬。

いきなり薄着になったマイは、くしゃみをしてしまう。


「おかしいにゃ。精神耐性、働いていないのかにゃ?」

「うーん。…美緒特性の装備品よね?…もしかして…マイ、ちゃんと装備しているの?」


そう言われ慌ててポーチをまさぐるマイ。

そして顔を引きつらせる。


「……うそ…置いてきちゃった?」

「…マジ?」


そもそもこれは装備品だ。

装備していないと効果は出ない。

あの後改良され、『見えない装備品』に改良されたため、見た目での判断が出来なくなっていた。


ルルーナはひとしきりため息をつき、色々と共有する必要があると心に決めていた。


「マイ?フィムの近くで行動してくれる?フィムはパッシブで耐性を持っている。近くにいる者もその影響に包まれるからね」

「は、はい。…ごめんなさい」


彼女たちにとって美緒から送られた装備品。

まさに至宝のお宝だった。


普段から装着してね、と言われていたがマイはもったいなさすぎて実はしまい込んでいた。

何しろ普段ギルドから出ることはない。

あの中ほど安全な場所はこの世界に存在しないのだ。


「えっとねマイ?美緒はさ、あなた達のこと本当に大好きなの。だからこれからはちゃんと装備していてね?その方が美緒喜ぶよ?」

「は、はい」


思わず下を向いてしまうマイ。

その様子にミネアがそっと彼女の手を取る。


「んにゃ。マイは可愛いにゃ。何かあったらうちら怒られちゃうにゃ。だからそんな顔しない。次から注意すればいいのにゃ」

「…ミネア…分かった。ありがとう」


美緒とは系統の違う美少女マイ。

どこか儚げな、それでいて目を惹く彼女。

来たばかりの頃は常に俯き加減で…

実は美緒がかなり心配していたのだった。


大分ギルドに慣れてきている状況に、皆はほっと胸をなでおろしていた。


「まあ、この辺に出る魔物自体は大した強さではないけどね。…ねえマイ?サクラ?ルイミ?」

「はい?」

「は、はい」

「はい」


そんなマイたち3人にルルーナは声をかけた。

彼女たちは非戦闘員だし食事などの準備のためにギルドに来ている。

でも。


もし彼女たちが望むのなら、多少なりとも力はつけた方がいいと、ルルーナはいつも思っていた。


「もし良ければなのだけれど…ギルドに帰ったら聖堂へ行ってみる?」

「っ!?聖堂?…それって…」

「んにゃ。それはいい考えにゃ」


ミネアもそれに同意する。

フィムまでもが大きく頷いていた。


「あなた達に戦場に出ろとは言わない。でも強さは自分の自信にもつながるし邪魔にはならない。それにもしアリアみたいに僧侶系になれば、傷ついた皆を助けることもできるよ?」


今彼女たちは町などで暮らしているわけではない。

ここは秘境であり禁忌地リッドバレーだ。


出来る準備はしておいた方がいい。


「まあ取り敢えずは確認だけかな。一応美緒の許可をもらわないとね。…私も前は弱かったんだ。だからあなた達の気持ち、少しは分かるよ?」


ルルーナはジョブチェンジする前は『索敵助手』だった。

大した力のないジョブ。

ルルーナは人知れず、悔しくて眠れない日もあったくらいだ。


ルルーナの提案。

実は3人とも、美緒の同期スキルでギルド内に『聖堂』があることは承知していた。

そしてそうすれば力を得る事が出来ることも。


でも救われた身。

住まわせてもらえるだけで感謝してもしきれない状況の彼女たち。

自分からお願いすること、どうしても遠慮していた。


だからルルーナの提案は彼女たちにとってまさに渡りに船。

彼女たちだって力が欲しかったのだ。


「「「お願いします!」」」


3人の声がはもる。


その様子をルルーナとミネアは優しい瞳で見つめていた。


いよいよ明日から新作「『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する」スタートします。


よろしくお願いいたします!!



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