第166話 戦力増強?感謝の戦利品山分けの儀(後編)
取り敢えず危ない武器についてはリンネの判断とレギエルデ、それからコメイの指示により封印されることになりました。
我がギルドには一応武器庫なる物があるのよね。
私では開けられないようにリンネたちが術式を組むそうなのだけれど…
コホン。
もちろん『永久に使わない』という訳ではないよ?
必要に応じ使う事もあるのだろうけど…
取り敢えず『私の判断』ではいけない、ということが満場一致で決まりました。
むう。
確かに私はハッチャけたかもしれない。
でも私の意向を無視って…
酷いんじゃないのかな?
私は思わずジト目をリンネに向けた。
「ん?なーに?美緒?…何か不満なのかな?」
にっこりと凄みのある笑顔のリンネ。
私は一瞬でさっきの考えを霧散させていた。
「ひうっ?!…な、何でもない…です」
「…よろしい」
怖い。
怖いよー。
私はそっとレグの腕をとった。
「ふむ。確かに今回の件、美緒に責任はあるな。でもわらわはお前の味方だ。存分に甘えるがいいぞ?」
「う、うん」
優しく抱きしめてくれるガーダーレグト。
私は彼女の豊満な胸に顔をうずめた。
レグの甘くも優しい匂いと感触。
私は気持ちが落ち着いていくことを認識しながらさらに甘えるように体を預ける。
「ふふっ。本当に美緒は可愛いな…よしよし…」
実はレグにはコメイと話したこと、つまり彼女がおそらく地球の『李衣菜さん』であろうことは告げていない。
きっと幾つもの事情が絡まっている今の状況。
コメイいわく必要なら勝手に思い出す、とのことだった。
『わざわざ混乱させる必要あらへん。それよりも一度整理したほうがいいんちゃいまっか?なんや、ごちゃごちゃしすぎや。わけわからんくなってまうわ』
うん。
相変わらず怪しい関西弁だ。
私はしばしレグの柔らかい胸の感触に、思考を放棄した。
※※※※※
今回のお宝の譲渡の儀。
幾つか騒動はあったものの、装備品やいくつかの便利アイテムについてはそれぞれ実装されることが決まった。
何より私の懸念であるあの人間爆弾。
取り敢えずあれを防げる算段、どうにか目途が立っていた。
もちろん単体で防げるほどの装備は数が少ない。
なので幾つかの便利アイテムとの相乗効果によってそれは解決を見ていた。
「…武器ほどではない…けど…とんでもないね」
指輪をいくつか嵌めたアルディがポツリとこぼす。
彼には防御力向上と魔力変換をスムーズにさせるアーティーファクトを渡していた。
「マジで意味わかんない…僕の防御力…想像を越えちゃったんだけど…」
今のアルディ、多分ヘルフレイムくらいならかすり傷一つつかないくらいには強化されていた。
「あの…美緒?」
「うん?」
「これって…マジで?」
なぜか挙動不審なティリミーナ。
彼女とディーネには精霊武装の強化版、魔装神機という強化パワードスーツを渡していた。
ぶっちゃけ『モビルスーツ(笑)』だ。
以前彼女たちはおばあ様、ルーダラルダ様の作ったゴーレムを使用していたらしいのだけれど…
あの時の爆発でチリとなっちゃってたのよね。
しかも何故か必要のない制限まで設けてあって。
彼女たち、きっと知らない。
…レイリが遠い目をしてたっけ。
おばあ様?
本当に今度会ったらお説教ですからね?!
もう。
何はともあれ私の大切な仲間たち。
かなり強化されました。
これで安心して次のミッションに行ける。
私はそう思っていたんだ。
因みに今回開放した防具はこんな感じです。
非戦闘員の里奈さんたちには、装飾品タイプの強化魔道具。
魔力を吸って、さっきのルイミちゃんみたいな可愛いドレスになる感じです。
一度全員が装着したのだけれど…
まるで舞踏会場のような華やかさが展開しておりました。
後で少し改善が必要かな?
とっても可愛いのだけれど。
ちょっと不便ですと言われました。
それから基本色々な作戦で裏方をしてくれているザッカートの仲間たち。
彼等には腕輪タイプのアーティーファクトを渡しておきました。
取り敢えず常時回復とパッシブで展開する物理障壁、それから緊急帰還の術式を付与しておきました。
「やべえ。凄すぎる」
クロットがそんなこと言っていたっけ。
後はサンテス。
彼は今『ダイヤモンドナイト』と言う私でも見たことのない防御特化のジョブについているのだけれど。
ジョブのパッシブですでにとんでもない防御力を誇る彼、私はさらにそれを伸ばす装備を渡しておきました。
ジェネシスメイル。
神話に出てくる『見えない装備品』の一つ。
その効力、『信じる者はすべての困難をはじき返す』
彼は今、恐らくあの爆発、爆心地に居てもきっと傷ひとつつかないくらいの防御力を手に入れていた。
本当に彼は頼りになる。
うん。
大好き♡
そんなこんなで全員がとんでもなく強化された今回の譲渡の儀でした。
満足です♡
※※※※※
「えっと。これでみんなに渡せたかな?…うん。よさそうだね。…これからも私を助けてください」
お宝を皆に渡し、改めて皆を見回していた。
満足げにほほ笑んでいる皆。
私の心に温かいものがあふれ出してくる。
「ふむ。美緒よ。…ゾザデットの皇帝に会いに行く事、いつにするのじゃ?」
「そうだね。ロナンの救出も出来たことだし、報告を兼ねて明日にでも行こうか」
「うむ。では準備をしておくとしよう」
取り敢えずここでゾザデットの件にはケリをつけられるかもしれない。
私はマキュベリアの隣にいたナナに視線を向ける。
「ねえナナ、今日あなたのお父様、アウグスト様と面会できるかしら?」
「うん?パパと?…うーん。どうだろ。…この後で聞いてみるね?それでいい?」
「うん。お願いね」
まあきっと。
私のオーダーだ。
優先順位は自然に高くなってしまう。
なんか強権を振りかざすみたいでいやだけれど…
そんな些細なこと悩む必要は、そんな時間はない。
私はそっとため息をついていた。
「美緒、少しいいか?」
「っ!?ザナークさん?…どうしたの?珍しいですね」
いつも優しい瞳を向けてくれるザナークさん。
何気に私彼の瞳が大好きだったりする。
だけどなぜかいつもは遠慮している風な彼だけど…
今日は真っすぐに私を見つめてくれていた。
「美緒、その予定1日ずらすことはできるか?」
「えっ?ゾザデッドの事?」
「ああ。…お前は自分が思っているよりも凄く疲弊しているよ?実は今日、私はお弁当を作ったんだ。ピクニックに行かないか?」
突然の提案。
何より危機にある今の世界、正直そんな悠長なことをしている時間はないはずだ。
でも。
ピクニック?
やばい。
めっちゃ心惹かれてしまう。
「そうね。美緒は少し休んだ方がいいかもしれないわね。…ザナーク?ちなみに何人分お弁当は準備しているの?」
そんな私たちの間にリンネが割り込んできた。
何故かすんごく優しい表情で。
「そうですな。大人数だと美緒の気が休まらないでしょう。私とファルマナ、それからハイネ。後はフィム、それに美緒の5人で計画をしています」
えっ?
なんかそれって…
まるで家族でのお出かけみたい…
突然私の心の中から、凄まじい欲求が吹き上がる。
『行きたい』
自分でも驚いてしまうほどの真直ぐな欲求。
思わずその色が瞳に乗ったのだろう。
リンネが私の手を取りにっこりとほほ笑んだ。
「うん。いいんじゃないかな。…ねえ美緒?あなたは一人じゃないのよ?仲間がいるでしょ。…だから今日は…甘えてきなさい。…ギルドのお父さん、お母さんに」
「っ!?…お父さん…お母さん………う、うん」
ジンワリと心が温かくなる。
最初のころ…
私とリンネ、それからエルノール。
リアは具合が悪かったから…
最初は本当に少人数だった私の大好きなギルド。
その時から私に優しくしてくれていたザナークさんとファルマナさん。
私は最初から、二人の事…
お父さんやお母さんだったらいいなって。
そう思っていたことを、切望していたことを。
思い出していた。
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