第165話 戦力増強?感謝の戦利品山分けの儀(中編)
今回の『お宝の譲渡』の儀式?
何よりジパングの前に討伐した邪竜フェブニールや、あの時纏わりついていたアルティメットスライム?
いわゆる神話級の魔物に対し、私の『幸運値』が仕事をしっかり果たしていた。
あの時ドロップしたものは全部で37個。
その中に神話級を超える武器が3つと装備品が3つ含まれていた。
さらにはジパング決戦。
実に296個のレアドロップが確認されており、その中でもオロチの落としたもの、そしてノブナガ、さらにはダゴン、ミフネ、さらにはウロトロスの落としたドロップ品、何よりファルカンが手にした伝説の聖剣『エリシオン』を始め、あり得ない高品質のものが手に入っていた。
私のギルドの皆はとっても強い。
何より皆が常に上を目指し鍛錬に励んでいた。
でも。
この前の神聖ルギアナード帝国での大爆発。
流石にあれを生身で受ければきっと命はないだろう。
だから私はここ数日祈りを込め、獲得した装備品、それぞれに付与を施していた。
えっと。
ちょ、ちょっと、だよ?
本当だからね?
コホン。
何はともあれ私はドロップ品、特に大切な仲間が身に着ける物にはしっかり鑑定と限定的な解呪、そして付与を施したんだ。
神話級とはいえ幾つものアイテムは呪われていたし、何よりも使うには制限もあった。
あう。
リ、リンネ?
どうしてそんな目で私を見るの?
「……呆れているの。まったく。あんた全然成長しないよね、そういうところ。……あまりにも高性能すぎる物はバランス崩しちゃうでしょ?…美緒、あなた誰でも使える超絶武器を量産して…世界を滅ぼしたいのかしら?」
…世界を滅ぼしたい?
いやいや、私はただみんなの安全と安心を…
「ともかく。…いくつかは使用禁止にします。まあ、確かに必要なものもある。特に守りとかね。でも…ねえ美緒?」
「う、うん」
リンネはおもむろに長さ5メートルくらいある槍を手にした。
「…これは何?」
えっと。
「…伝説の武器、『神槍ブリューナク』…よね?」
強烈な呪いに包まれていたから私解呪したのだけれど…
今は誰でも触れる事が出来る。
「おいおい?それ、あかん奴やろ?…おっとろしいわー。しかもなんや?聖気に溢れているやと?…美緒、あんさん、この星ごとぶち壊す気かいな」
あきれ顔でコメイまでもが私にジト目を向けた。
「い、いや、そ、その…ご、ごめんなさい」
確かにこの槍は少しやり過ぎたのかもしれない。
でも大きい槍だから、ランルガンが使えばいいかなって…
確かに改めて鑑定してみると、破壊力がとんでもない事になっていた。
…何気に『例の爆発』くらいの事を引き起こしそうだ。
しかも制限なく誰もが使用できる状態だ。
「それから…この斬馬刀。…ねえ美緒?あなたこの星真っ二つにでもしたいのかな?」
あうっ。
それは…『オーディーンソード』よね。
それもとんでもなく呪われていたので…
ちょっと解呪を…
今ではこれさえも制限なく誰でも使用できる状態。
確かに危ない、よね?
詰め寄られ顔を青ざめさせる私。
そんな私に大きなため息をつきリンネが視線を向ける。
「武器は神話級以上の22点については封印します。何よりこれらはよほどのことがない限り使用を許可しません。良いわね?」
「うう…は、はい」
そして今度は諦めたような表情を向ける。
「ねえ美緒?…あなたまさか全部に付与したのかしら」
「っ!?え、えっと…か、解呪はしたよ。後はそのままじゃ使えないものに少しだけ付与を…だ、だから全部を見たけど、付与は一部…っていうか…していないものも…ある?」
確か私、けっこう夢中で付与したような気がする。
忙しかったし、何より『あの爆発』の魔力の残滓からレギエルデとコメイたちの頑張りで、あの爆弾の理論、少しだけわかったから…同時に恐ろしさも…
だから私はきっと『みんなを守りたい一心』でせっせと付与をしていた。
「…えっと……全部…付与した…です」
私は結局白状することにした。
固唾をのんで見守っていた皆からどよめきが湧く。
「みんな、美緒をいじめないで。美緒はみんなのことを思って…だ、だから…」
そんな中ファナンレイリが声を上げた。
皆の注目が彼女に向かう。
「みんなも知っているでしょ?美緒の同期、かなり深く行ったよね?…前の美緒のルートの事…承知しているのでしょ?」
私は今回の同期、実はかなり制限を外して行っていた。
今レイリが言う通り、きっとみんな承知しているはずだった。
そしてレルダンがすっと前に出てきた。
優しい瞳を私に向ける。
「『いじめる』なんてそんなことはするはずもない。美緒、胸を張るといい。皆お前には感謝しかないんだ。ただ…やはり武器類はやり過ぎだと俺も思う。リンネ様はお前を心配してくれている。これらの武器、もしも心無いものが手にしたら…分かるよな?」
私のギルドの皆は色々と承知している。
だから恐らく暴走などはしないだろう。
でももしこの武器が他の者に渡ってしまったら…
それはまさしくこの世界に脅威を産んでしまう事態だった。
「うん。…分かったよレルダン。…それからありがとうリンネ。もう大丈夫。ちゃんと説明します。武器は…封印、お願いできますか?」
私の言葉。
それを聞いたリンネはようやく優しく私に笑いかけてくれたんだ。
※※※※※
確かに考えればわかることだ。
これらはこの世界のバランスを著しく崩壊させる可能性を秘めていた。
本来それなりの武器には制限がある。
たとえば今ファルカンが所持している『エリシオン』
あれは聖騎士、しかも宿主である『英雄グラコシニス』が認めた者しか使用できない。
だから実はあの武器、最強の聖騎士であるロッドランドや聖属性であるミリナたち天使族でも使用はできない状況だった。
強い力には責任が付きまとう。
私はそれを失念していた。
うん。
反省しなくちゃだね。
私は改めて皆に説明を始めたんだ。
もちろんしっかりと同期を使用して。
※※※※※
ありえない。
マキュベリアはごくりとつばを飲み込んでいた。
(本当に規格外じゃな美緒は。…わらわまでもが思わず飲まれてしもうたわ…恐ろしい。わらわですら滅ぼせるようなあの武器の数々…いくつかが敵に渡ればそれだけでこの世界は危機に陥る。…ふん。たしかにこれはしっかりと目を光らせる必要があるな)
初めてこのギルドに来た時のガーダーレグトの言葉がよぎる。
『美緒は色々と危ない。どうか見てはくれまいか』
「ふん。美緒よ。お主はもっとこの世界の事、知る必要がありそうじゃ。知識ではない、経験を伴う『知恵』としてな。一度それを含めて、わらわと一緒に皇帝に会いに行くぞ」
「う、うん。お願いします」
恐ろしく可愛く美しい。
そして清らかな心を持つ美緒。
でも。
彼女の中にいるであろう『3人目の美緒』
その本性、今だギルドの誰もが認識できないでいた。
知らぬうちに背中に流れる嫌な汗。
マキュベリアは気づかないふりをしていた。
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