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第159話 メインキャラクター、奇跡の大軍師コメイ

皇居の地下深くに作られた狭い通路。

私はレギエルデを先頭にその奥深くまで足を進めていた。


「コホッ。埃と虫の巣?…酷いな、これは」

「うん。なんかずいぶん時間が経過しているみたいだね。さっきは声聞こえていたのだけれど…念話?ではなかったのよね…私の知らないスキルかな」


私は確かにあの牢屋で声を聴いていたんだ。

それなのにすでに数百メートルは進んできている。


意味が分からない。


「ねえ美緒?ちなみにその声が聞こえた時って、ハインバッハ殿下も近くにいたのかい?」

「うん。…あっ、でもね、彼には聞こえなかったみたいなの。あんなにはっきり聞こえたのだけれど…だから余計にハインは心配してくれたのよね」


思わずジト目を美緒に向けるレギエルデ。

そんな背景があったのなら…

ハインバッハが心配するのも頷けてしまう。


「ちなみに美緒は彼になんて言ったのかな。さっきの彼の反応、少し過剰に思えたのだけれど?」


首を傾げ思いにふける美緒。


「あー、うん。確か……『声が聞こえる…レギエルデ?…私、行かなくちゃ』…って」


きっとそれは…


ありえない状況でいきなり『別の男の名』を口にする、想いを寄せる女性。

そして現れる僕。


うん。


美緒にも少しお説教が必要かもね。


「彼、すごい顔しなかった?僕の名前を君が言ったとき」

「うん?……そういえば…『そ、その男は君の大切な人なのかい?』って聞かれた…かな?」

「…それで?」

「う、うん。…『そうだよ?大切な人なの』って。……あれっ?…ハインがおかしかったのって…私のせい?…なのかな?」


大きくため息をついてしまう。

美緒の天然は今に始まったことではない。

だからギルドの皆は多少なりとも耐性がある。


でも普段一緒にいないハインバッハ。


この状況、彼を責めるのはあまりに理不尽だった。


「はあ。…美緒」

「う、うん?」

「後でお説教ね?」

「っ!?…………はい…」


彼の宣言に、私は思わず肩をはねさせてしまう。

…確かに思い返せば私の言葉は不適切だったかもしれない。

でも、お説教?


うう、レギエルデのお説教って…ううっ。



※※※※※



暫くして。

私たちの前には見たことのないような大仰な扉が行く手を阻んでいた。


それを見て崩れ落ちるレギエルデ。

どうやら彼はこの封印、見覚えがあるようだった。


「…コメイだ…。間違いない。……マナレルナ様?あなたはどうしてこんな悪戯をお許しに…」

「っ!?レギエルデ?どういうこと?…悪戯??」


改めて大仰な扉に視線を投げる。

昔テレビで流れていた中国のドラマで見たことがあるようなやけに立派な門構え?


なんか龍みたいな彫像まである?


大きくため息をつき、どうにか立ち上がり私に視線を向けるレギエルデ。


「ねえ美緒?君なら知っているかな。…『三顧の礼』」


「…三顧の礼?それって…中国の歴史上の人物、諸葛亮の逸話よね?」


「うん。僕はさ、それをさんざん、それこそ耳にタコができるくらいコメイから聞いていてね…『師匠、人を訪ねるのならばこれは外せへんで?なんや?けったいな顔しくさりおって。基本や基本』とか言われていたけど…はあ」


うん?

なんか怪しい関西弁?


その物言い、どこかで……


「…ええっ?それじゃ3回来ないと『だめ』ってことなのかな?」

「…おそらく。…美緒、これ解呪できる?」


私は改めて大仰な扉に魔力を這わす。

弾かれる私の魔力。


どうやら仕組み自体がこの星の摂理に反しているようだ。


「…無理だね。力ずくなら壊せるとは思う。でもそうすると、皇居自体がもたない。…おとなしく3回来ないとだめみたいだね」

「やっぱりか。…全く。……帰ろっか?」

「…うん。…あー、因みにここ、転移も封じてあるっぽいね。…また歩いてこなくちゃだね」


げんなりとしてしまうレギエルデ。

でもどうやら、やっぱり彼を呼んでいた人物、メインキャラクターであるコメイその人のようだった。



私は以前のルートの時の、コメイとの出会いに想いを馳せていたんだ。



※※※※※



失敗した以前のルート。

帝国歴31年冬―――


どうにかハインバッハを倒した私たちだったけど、その代償はあまりにも大きかった。


皇帝であるハインバッハはゲームの時ほどの力は備えていなかった。

でもきっと予定調和なのだろう。

それを覆した私たちは『きついカウンター』により大切な仲間を数名失ってしまっていた。


「あああっ?!!レギエルデッッ!!!美緒?離して、あああっ?!!彼が、うああ、うああああああああ――――――??!!!!!!」


皇帝の胸に突き刺さる革命騎士レストールの聖剣『ディラダル・エズゲイト』


その瞬間、皇帝の周りにいた悪魔の眷属数体が、彼等の切り札である『人間爆弾』の解呪をしていたレギエルデにまとわりつき、激しい光とともに大爆発を起こしていた。


刹那弾ける超高温と衝撃波。

蹂躙するそれは、明らかに私たちの防御上限を上回っていた。


「ぐうっ?『絶無結界陣』!!!美緒、ダメだっ、持たない…ナナ、お前も協力しろっ!!…彼の、レギエルデの死を、その覚悟をっっ…無駄にするなっっ!!!」

「っ!?レグ?!………そうだ…誓ったんだ…私は美緒を守るって……レギエルデ……はああああっっっ!!!!!」


凄まじい魔力を噴き上げさせ、結界を構築するナナ。

ガーダーレグトのそれを包み込み、強固な結界がかろうじて私たちの全滅を防いでくれた。


(…それでいい…ナナ……美緒を…希望を…頼ん…っ!?っっっっっ??!!!)

(っ!?レギ…エル…デ……??……途切れた?……)


「っ!?…ああっ!?ああああああっっっ!!!??いやあアアアアアアアアアアアアア―――――――――!!!??」


濛々と上がる黒煙と荒れ狂う魔力。

けたたましい破壊の音にナナの絶叫がかき消される。


そして数秒後。


皇居は跡形もなく吹き飛び、22名いた私の仲間たちは。

13名を残し、姿を消していた。


爆心地にいたレギエルデ。

それを助けようと彼に向っていたイニギアとロッジノ。


そしてマキュベリアの眷属だったスフィナとザナンク。


さらにはドワーフのゴデッサにエルフのルノーク。


ミルライナとエイン。



勝利の代償は、あまりにも大きかった。

そしてナナは。


それからというものギルドにいることはほとんどなくなっていたんだ。



※※※※※



(酷い状況だったんだね…別ルートの私…。……でも信じて?…今回は、今度こそは絶対にたどり着くから…)


思い出し思わず私は身震いしていた。

あの大事件。


そしてそのおかげでコメイの封印、消失していた事。

私は『今この瞬間に』思い出していた。


「ねえレギエルデ?」

「うん?」


二人狭い通路を歩いているところで私は彼に問いかけた。


「私の今回の世界線……あなたは知っているの?」

「……ふう。……美緒はどう思っているんだい?」


私の質問に対し、さらなる質問で返す彼。

いつもの彼らしからぬ対応にわたしは何となく察してしまう。


「…前ね、リンネも言っていたのだけれど…今いるこの世界線、初めてだし、実在している今感知できないって言われたの。…でもね、リンネはいわば『枠の中』の存在でしょ?もちろん彼女にもとんでもない使命はある。だけどあなたは、世律神だったあなたは違う。…そうじゃないのかな?」


思っていた事。


正直私は最初から彼が世律神だと確信していた。

もちろん根拠もないし、だからと言って彼の権能が復活しない事はなぜか承知しているのだけれど…


でも彼ならきっと、私の知らない答えを知っている。

そう思ったんだ。


明らかにがっくりとした表情をし、私にうつろな瞳を向ける。

その様子になぜか背中が寒くなってしまう。


「…はあ。……結論から言うとね、『知っていた』だよ。でもね…」

「…でも?」


しかし彼の表情は、今度はどんどん自信にあふれてきた。

そして悪戯そうに目を輝かせ、私を見つめる。


「ふふっ。凄いな美緒は。…ねえ、美緒はさ、物語、好きかい?」

「うん?物語?…えっと、それってどういう…」

「誰かが作り上げた物語…結末まで決まっている、完成している物語。…それこそすべてがシナリオ通りでさ、誰も抗えない。ていうかすでに完結しているでしょ?ああ、地球では『小説』とかいうのかな?それって内容変わることないよね?」


「……う、うん」


「僕はね、気付いてしまったんだ。すべてが実はそうだったのだと。だから足掻いた。真の意味でこの世界、全ての元に聞きに行ったんだ」


「…すべての…元?」


ますます強く成るレギエルデの決意の気迫。

彼は今何かを覚悟した?


「うん、それ――          」


言葉を発した瞬間、掻き消える。



え?


今この瞬間。



目の前にいたレギエルデ。



その存在が消えてなくなった。



「……うそ…」



私はただ呆然と立ち尽くしていたんだ。


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