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第153話 もたらされる真実

とりあえず聞きたいことはほとんど聞くことが出来た。

もっとも重要なことについては秘匿する必要があったので、私と『一部を共有』したリンネしか知り得ない事ではあるけれど。


そうはいっても本筋であるメインキャラクター集めと、この世界を包む不穏な悪魔たちへの対応。


それについては全員で共有する事が出来ていた。


ついでと言っては何だけれど、ルイデルドさんからもいくつかの許可をもらい、この先私たちはこの国へのフリーパスの権利を得ていた。


これでいつでもフィリルニームさん、お母さんと会える。

私とリンネは見つめ合い、頷いていた。


次はガナロにも会わせてあげよう。



※※※※※



先ほどの会話。

幾つかはハイエルフ族の皆さんにも共有する必要があるため私たちは再度謁見の間へと足を進めていた。


「ところでルイデルドさん。その、おばあ様、ルーダラルダ様から預かっている神器ってどういう物なのですか?」

「うむ。…カゲロウ」

「はっ」


突然現れるカゲロウさん。

その手には封印を施された30センチくらいの箱が抱えられていた。


「…実は中身は私たちも知らぬのだ。どうしても中を見ること敵わなかった。お主なら開けられるのだろうが」

「…拝見しても?」

「もちろんだ」


どう見てもノートパソコン?

…いや、タブレットだ。


地球で見慣れたロゴ入っているし?


私は嫌な予感に包まれる。


(…いくら何でも…おばあ様?時代背景メチャクチャなのだけれど?!)


神器を持つ私に皆の視線が集中する。


(うう、なんかめっちゃ緊張する?!…えっと、電源は…ついた?)


箱から取り出し私は主電源のスイッチを押す。

聞きなれた起動音が流れ、ますます皆の注目が集まる。


「おおっ?!!」

「じ、神器が…」

「ああ、まさに伝説!!」


息をのむ皆。

一瞬の静寂が、緊張感となり全員に共有されていく。


あー。

確かにこの世界の技術レベルからすると、とんでもないわよね。


きっと皆さん、とっても神秘的な儀式のように思ってるのでしょうけど…


はあ。


うん?

アプリ?


ひとつだけ?


私は画面に表示された一つのアプリのアイコンをそっとなぞった。


刹那。

マルレットの膨大な魔力を吸収し起動を始めるタブレット。


そして世界の時間が止まる。


「えっ?」

「うあ、美緒?…っ!?わ、私とあなただけなの?」


停まる世界。

勿論『時渡のスキル』なんて使っていない。


そしていきなり画面からホログラムのように一人の男性が浮かび上がった。


「…美緒?……ああ、大きくなったな…それに、とっても可愛い。…元気かい?」

「っ!?…お、お父さん?!!」

「っ!?……原神、様??!!!」

「原神?」


「ふむ。君は確か…そうか。君はリンネだね。ふふっ。可愛いね君も。まったく。大地の趣味そのものだね」

「っ!?だ、大地?…も、もしかして…黒木大地さん?創世神?」


うあ、情報量!!

ちょっと時間ほしいかも…


そしてさらなる情報の流入が始まる。

でも…


いつもみたいな痛みも不快感も全くなかったんだ。

ただ…


果てしない悲しみ…


何故かそれが私とリンネ二人に伝わってきていた。


気付けば…


私とリンネは生活感のあるリビング、そう、私が日本で生活していた、子供の頃に住んでいた家、そこに仲良く隣同士で座っていた。


目の前には…


優しい瞳のお父さん、そして。


お母さんとおばあ様。

さらには。


最終的な敵であるはずの黒木優斗がにこやかに私を見つめていた。


「さあ、始めようか。…この世界を取り戻す、その作戦を」



※※※※※



「美緒さま?どうされました?」

「……っ!?」


ギルドの執務室。


私はエルノールに声を掛けられ、一瞬キョトンとしてしまう。

…あれ?


わたし…


「もう、美緒?しっかりしてよね?…明後日ロナン、救うのでしょ?」


リンネ?

えっと…


あれ?


私は何の気なしに、自分の手を動かしてみる。

伝わる感覚。

いつもの机にエルノールが入れてくれるミルクティー。


おもむろに私はカレンダーに目を向けた。


「…本当に大丈夫?ついさっき古代エルフの国ブーダから転移して帰ってきたところだよ?マルレットは今お風呂に行っているし」


違和感が薄れていく。

やがてリアルな想いが固まっていく。


そうだ。

私は明後日、ノーウイックの力を借りてロナンを救う。


何よりフィリルニームさんの想い、私は受け継いだのだから。


「ごめんね?ちょっと考え事?していたみたい」

「もう。まあ、色々あったしね?美緒もお風呂行ったら?私も付き合うよ」

「…うん。エルノール、良いかな?」

「もちろんです。作戦、レギエルデと共に練っておきますね」

「お願いします。リンネ、行こっ!」

「うん」


私はリンネの腕を取り、大浴場へと転移していった。


その様子を見つめるエルノール。

大きく頷いてエルノールも又転移する。


美緒のあの様子。

じつはエルノール、すでにレギエルデから聞いていた。


『きっと世界が動く。そしてそれは美緒が原因だよ?対策を取りたいんだ。後で来てほしい。聖域へ』


転移でしか入ることのできない聖域。

なぜかそこにいるレギエルデ。


美緒が口にしたフィリルニームの名前。

あの瞬間解かれた隠蔽は実はレギエルデの権能の一つ『転移』をも取り戻していた。


これでこの世界での転移保持者5人目。


エルノールは大きく息を吐き、聖域へとその姿を消していた。



※※※※※



カポーン。


響き渡るたらいの音。


心地よい湯気に包まれ、私は今リンネとマルレットの3人で向かい合いながら大浴場で寛いでいるところだ。


「うあ、リ、リンネ様…スタイルやばい」

「ふふっ。マルレットは可愛らしいのね?うん?美緒と同じくらいの大きさだね」

「マルレット、あなた本当に可愛いのね」

「あう…うう、み、美緒?…うあ、えっと…」


どうやら私、完全に抱き癖が付いてしまったようだ。

私とほとんど変わらない華奢なマルレット。


すっと隣に移動し彼女を抱き寄せる。

なぜかジト目を向けるリンネ。


…ていうかきっと私のこの悪癖、あなたが原因ですからね?!

いっつも私に触れてくるんだもん。


「もう。美緒、マルレット真っ赤だよ?やめてあげな」

「うん。…ごめんね?マルレット。……あとで一緒にお昼寝する?」

「ひうっ?!…そ、その…お手柔らかに?」


うん。

マジでヤバイ。


正直じっくり彼女のぬくもりを感じてしまいたくなっている私。

一度リセット必要だね。


コホン。


「…ねえリンネ」

「うん?」

「…あの時の事、覚えている?」


古代ブーダの謁見の間での出来事。

私の記憶、かなりちぐはぐになっていた。


間違いなくあの空間にいた私とリンネ。

リンネはなぜか諦めたような表情を浮かべ口を開いた。


「…私は一応神なの。最初に言っておくわ。あれは夢じゃない。…だからあなたの言いたい事、分かるよ?でもね…」

「……」

「もう分かっているでしょ?すでに刻まれたし、あれは現実。…必要になったら、時が来たらあなたも認識する。だから私からは何も言えないの」


あり得ない人物たちとのあの打ち合わせ。

今までの根底を覆す真実だった。


もちろん今の私には認識できない。

何を話したのかもすでに記憶の中から消えている。


でも。


私は大きくため息をついた。


「ふう。まあね。…やることと目的は変わらない、か。…うん。もう悩むのやめる。何より明後日にはロナンを救う。それでいいんだよね?」

「うん。大丈夫だよ。悪いようにはならない。……むしろ大正解だし、私だって驚いているよ?…美緒」

「うん?」


突然私に抱き着いてくるリンネ。


「…大好き」

「…うん」


別に百合ではない私たち。

でもとんでもない美女二人の抱擁する姿に、マルレットはさらに顔を赤らめていた。



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