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第152話 お母さんとフィリルニーム

とりあえず今私達ギルドの9名とマルレット、そしてお母さんであるフィリルニームさんと国王であるルイデルドの12名は別室でお茶を飲みながらくつろいでいた。


あー、うん。


リンネはね、その。


「グスッ。お、お母様!!お母様っ!!」

「あー、えっと、そ、その…リ、リンネ?泣かないで?うあっ?!!」

「おかあさま―――――!!!」


顔をぐしゃぐしゃにしながらフィリルニームさんに抱き着くリンネ。

余りの勢いに、引き気味なお母さん。


まあね。

お母さん?


それは今までリンネを放置していたあなたのせいですからね!!


私はジト目でその光景を見つめていた。


「…ねえ美緒?そ、その、ニームおばさまって本当にマナレルナ様なの?」

「うん?あー、えっとね。一部が混ざっているってことかな。ほとんどはフィリルニームさんだよ?今は私の『隔絶解呪』で、本来の彼女には『眠ってもらっている』から…」


目を丸くするマルレット。

そりゃあ驚くよね。


レグもマキュベリアまでもが驚きで目を見開いているくらいだもんね。


「コホン。リンネ?そろそろいいかな?」

「っ!?う、うん。…ごめんね、美緒……グスッ…も、もう、大丈夫」

「うん」


どうにか離れるリンネを横目に、わたしは改めてフィリルニームさんの姿かたちでいるお母さん、マナレルナ様の瞳を見つめた。


「ううっ?!……み、美緒?…そ、その…怒ってる?」

「うん」

「ひいっ?!!」


思わずあふれ出す私のとんでもない魔力に、お母さんはたじろいでしまう。

申し訳ないけど、冷静になんていられない。

正直私だって甘えたいし抱き着きたい。


だけどおばあさまもそうだったけど、今のお母さん、やっぱり時間の縛りがある。

消えてしまう前に、いくつか確認しなくてはならない。


(まったく。…お母さん?)

(っ!?う、うん)


聞かなくちゃいけない内容は、はっきり言ってほとんどが秘匿事項だ。

何よりあの絶対者に知られてはいけない事ばかりだ。


だから私は……まだあいつらに認識されていない『3人目の私』は今、念話でその内容を共有しているところだ。


「…ねえ。フィリルニームさんはもう解呪されたのかな?」

「っ!?…ええ。あなたのおかげでね。……あと少ししたら人格変わるわ。そうしたら色々聞いて頂戴」


徹底した情報管理と秘匿。

お母さんは同じ精神に『同居しているはず』なのに、フィリルニームさんの情報へのアクセスはできない縛りになっていた。


「もう。お母さん、前私に言ったよね?おばあさまはすっごく情熱的で、自由な人だったって」

「う、うん」


私は分かりやすく大きくため息をついて見せる。

それを見たお母さん、顔を引きつらせる。


「まったく。お母さん、人のこと言えないじゃん。なんなの?お母さんの恋愛。あり得ないんだけど?」

「あう…」


私の物言い。

他の皆はますます混乱していくようだ。


ごめんね。

だけどどうしても文句の一つくらい言わせてもらわないと腹の虫がおさまらないのよ!!


時間にしては数秒だけど。

私は自分らしからぬ表情でお母さんを睨み付けていたんだ。



※※※※※



「…で?どうして男性は来ちゃダメだったの?」

「うあ、え、えっと…は、恥ずかしいじゃない」

「……………は?」


今回の訪問。

何故か男性の来訪を断られていた。


ハイエルフ族のしきたりか何かかと思っていたのだけれど…


「えっ?……は、恥ずかしい?…それだけ?」

「う、うん」


勿論違う。

きっとレギエルデとの面会を恐れてのことだ。


でもだからと言って今お母さんが言った事もかなりのファクターを占めているのだけれど?


でも何よそれ。

恥ずかしい?


まったく。

乙女じゃあるまいし!!


「だ、だって。…ノーウイック、解放したのでしょ?わ、私あいつに…む、胸、揉まれちゃったのよ?奏多さんにしか許していなかったのに…こ、恐いのっ!!」


顔を赤く染め、胸を隠すお母さん。

…はあ。


後でノーウイックにはお仕置きだね!


「…分かったよ。…それで?私は今の路線で良いのかな?」

「う、うん。…凄いね美緒。私の想定の上を行くなんて。…あなたは皆に愛されているのね。嬉しいわ」


突然雰囲気が変わる。

優しくも温かいその雰囲気。


私の我慢も限界だった。


私はそっとお母さんに抱き着く。

そんな私の髪を優しく撫でてくれる。


「もう。…ヒック…グスッ…おかあさん…あああ、お母さん…会いたかった」

「よしよし…ふふっ。あなたに会えた…私も嬉しいわ」


久しぶりの親子の対面。

その様子を皆は優しい瞳で見ていてくれていたんだ。



※※※※※



ひとつ僥倖があった。

お母さん、消える事はなかったんだ。


どうやら私の今までの選択と言うか行動。

100点満点で、『絶対者』の思惑すら超えていた。


もちろん制限は果てしなく厳しい。

でもどうにかこの先も、彼女に会う事は出来るようだ。


私はリンネと顔を見合わせ大きく頷いていた。


今目の前にいるのはフィリルニームさんだ。

お母さんは既に奥深い所で眠りについているところだ。


「初めまして、かな?フィリルニームさん」

「ああ。そうだな。…いくつものシナリオ、そして平行世界。…お前とこうして話すのも直に会うのも初めてだ」


ダークエルフの姫で世律神の眷属である女性。

しかも精神の一部に創造神マナレルナを含む女性。


彼女もまたこの世界におけるキーマンの一人だ。


「ふむ。マルレットよ。お前、あれはもう習得したのだな?」

「う、うん。おばさまの言いつけ、ちゃんと守ったよ?だから出来る」

「ふふっ。お前は相変わらず優秀だ。美緒、マルレットは神器のカギだ。連れて行くといい」


この世の絶対者である虚無神と創世神、そして世律神。

世律神はその権能のせいで3柱の中でも特に特殊なようだった。


何しろ超絶者を監視し調停する力だ。

だからとんでもなく面倒くさい幾つものギミックが仕込まれていた。


「はい。ところでフィリルニームさん?あなたはどうするのですか?」

「ふむ。一応私はそこの男に嫁いだことになっている。まあその日のうちに逃げ出したから、実は私は乙女だがな。…ルイデルドよ」


「むう。な、何だ?」

「私を抱きたいか?」

「っ!?な、何を…」


既にフィリルニームさんは2000歳を超える大人の女性だ。

しかもあり得ないくらいな色気を纏う超絶色っぽいお姉さん。

見た目は20代後半くらい?


彼女を構成する一部がお母さん、マナレルナ様だから…

うん。


きっとお父さんにしか体を許したくないのね。


ん?

待って?


えっと、リンネとガナロを産んでいるってことは…スルテッド王国の国王様とは…そ、その…エッチしたのよね?!


「え、えっと…そ、その、スルテッド…」

「ん?ああ。…美緒」

「は、はい」


私の言葉を遮るようにかぶせ気味に声を上げるフィリルニームさん。

そして伝わる想い。


ああ。

うん。


『そういう事』なんだね?

ふう。


…何はともあれ、また彼女とはじっくりと話をする必要がありそうだ。


「…まあ、そんな顔をするな。すでに今お前がこの世界の隠蔽を解いたのだ。これでこの世界はステージが進む。もう私も隠れる必要がなくなった。ルイデルドよ」

「う、うむ」

「悪いがこの体、捧げるわけにはいかんのだ。だから願おう。私をここに置いてはくれまいか?色々と他のことならば協力は惜しまない」


正直ハイエルフ族、性欲は希薄な一族だ。

とんでもなく長い寿命を持つ彼等。


そういうバランスはとられているらしい。


「ふう。もちろん構わぬさ。私とて今更お主に欲情の感情はない。もっともそれを差し置いてもお主は美しいがな」

「ふふっ。感謝する」


きっと長い間。

彼等は色々と問題はあったのだろう。


だがハイエルフ族の長である国王ルイデルドが認めた。

その決定は彼らにとって、非常に重い決断だった。


「マルレット」

「は、はい」

「…ゲームマスターを、美緒を…助けてやってくれ」

「っ!?はい。分かりました」



※※※※※



こうして私はメインキャラクターである『エルフ族の秘宝マルレット』との出会いを果たした。


今までは共闘すらできなかった彼女。


認識できたお母さんと…そして第3の私。


物語はますますその混沌具合を加速させていくのだった。


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