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第141話 いざ!古代エルフの国へ!!

気付いた時―――


私は治療室の椅子に座り、食事をとっているファナンレイリとディーネ、そして聖獣である朱雀のスイを眺めていた。


(っ!?……あれっ?!…私?……えっ?!……)


茫然としてしまう。

さっきのアレは…いったい…


そんな様子の私に、怪訝な表情を見せるファナンレイリ。


「…美緒?どうしたの?……っ!?泣いているの?!」

「えっ?……あ、あれ?…なんで…え、えっと…」


私は慌てて涙をぬぐう。

はっきり言って、何が起きたのかは分からない。


でも…


凄く嫌なことを思いだしたような気がしていた。


「…大丈夫?」

「う、うん。ごめんね?本当に何でもないの」


いけない。

何があったのかは分からないけど、少なくとも今の私は順調に行っているはずだ。


こんな不安げな顔、私はしてはいけない。

そう思い私はにっこりとほほ笑んでみた。


「っ!?もう。…美緒、めっちゃ可愛い♡」

「あ、ありがと」


表情とは裏腹にぼんやりと浮かぶさっきの事。

きっと以前のルート。


それがよぎったんだ。

そしてそれはリンネの優しさ。

彼女の警告。


私はもう一度、自身の心に活を入れた。


(大丈夫だ。…今度こそ、絶対に……もう、間違えない)


私はにっこりとリンネに微笑んだ。


「…うん。大丈夫だよ美緒?問題ないからね」

「うん」


恐らくは色々と絡み合っている今の状況。

だからこその警告。

気を抜いてはダメだ。


私は大きく息を吐き、愛すべき新たな仲間となる3人を改めて見つめていたんだ。



※※※※※



ギルドの執務室。


私はエルノールとレギエルデ、それからファナンレイリとリンネの5人で、この先のことについて話し合いを行っていた。


「まずは久しぶりだね精霊王様?…無事でよかったよ」

「あなたもね。それにしてもフェブニールに遭遇するなんて…運が良いのか何なのか。とにかく無事でよかったわ」


精霊王からのオーダーを受けていたレギエルデだったが、私が聖獣の解呪を完遂したことで、そのオーダーはどうやら終わったみたいだった。


「それにしても美緒の解呪、とんでもないね。…ねえ、美緒はさ『時渡』結構高レベルになったの?」

「っ!?はあ。やっぱりレイリは分かるんだね。うん。今なら遡行も問題なくできる。スイの呪い、遡らないと自然に復活する呪いだった。…ねえ、誰がやったの?」


スイに課せられた呪い。


呪い自体は通常の解呪でも解ける簡易なものだった。

だけど解呪するとその事実の直前へと戻り、なおかつエネルギーの吸収、その事実を失うものだった。


つまり果てしなく衰弱していく呪い。

彼女は既に数か月、エネルギーを断たれた状態、つまりは極限の飢餓状態に追い込まれていた。


「んー。…実は悪魔の眷属である称号持ち、『キズビット』っていう奴が原因だと思っていたのだけれど…今のスイを見るとね。……どうやらあいつの仕業ではないのよね。……だから実際には誰が施したのか分からないのよ」


そう言い何故かレギエルデに視線を投げる。

スープを一口飲み、ほっと息を吐きだした。


「普通は術式のパターンである程度は特定できるのだけれど…スイの場合、っていうか彼女たち聖獣は物凄く長い寿命というか時間の中の摂理で動いているんだ。だから気付いた時にはもうその呪いに囚われていた。しかも邪気は驚くほど少ない呪いなんだ。…正直意図すらも良く判らないんだよね。でも聖獣が失われてしまえばこの世界の摂理が壊れる。だからこれは大きな危機だった」


創造神であるおばあ様、ルーダラルダ様が決めた摂理。

その根幹としての聖獣で構築した摂理を守る結界。


色々思い出した私ですら知らなかった事実だ。


「ねえレイリ?他の聖獣たちは問題ないの?私の記憶っていうか、知識にも彼女たちのことってないのだけれど」

「うん。今のところは問題ないかな。そもそもこれはこの世界の摂理で根幹だ。ずっと秘匿されていた事。そもそも知っているのは今の世界、私だけのはずなんだ」


精霊王は基本継承性だ。

今の精霊王、ファナンレイリだって先代から引き継いだ精霊王。


確か今の彼女の年齢、2800歳程度。

この世界の開闢とともに創造された聖獣たちは5000歳を超えている。


だから本当に意味でレイリは知らないのだ。


その内容に思わずうなるレギエルデ。

そして呟いた。


「…美緒?コメイは今どうしているか分かっているのかい?」

「っ!?レ、レギエルデ?…コ、コメイ?…どうしてあなたが知っているの?」


奇跡の大軍師コメイ。


彼はレギエルデが『死んで失われた後』にギルドに加わるメインキャラクターの一人だ。

つまりどのシナリオでも、おそらく以前の私のルートでも、彼はレギエルデとは共存した事実はない。


「あー、うん。…実はコメイはさ、僕の弟子なんだよね。異常な頭脳を持つ変人。まさに彼はこの世界のすべてを知っている人物なんだ。しかも秘匿されているからきっと美緒もリンネ様も知らないとは思うんだけど…コメイはハイエルフなんだよ。ていうかアルディと同じ、エンシャントエルフなんだよね。おそらく今彼は封印されているはず」


レギエルデのもたらす情報。

執務室は静寂に包まれる。


「あ、あなたの弟子?初めて知ったよ?……で、でもなんでコメイなの?」

「あー、うん。…たぶんこの呪いを施したのって、多分彼なんだよね。恐ろしく隠蔽され、発動まで数千年はかかるもの…しかもおそらくだけど悪気すらないと思うんだ。いわゆる実験的な?……とにかく一度会って話を聞いた方が良いと思うんだ」


えっ?

実験?!


世界の根幹である聖獣への呪い。

そんな大切なもので実験?


私は背中に嫌な汗が流れるのを感じていた。


「…美緒の言いたい事は分かる。でもあいつはさ、何より真理にこだわっているんだよ。以前の僕みたいにね。…だからマナレルナ様が封印したはずなんだ。だけど彼女、マナレルナ様は驚くほどこの世界に対して無干渉を貫いていたんだ。だからこれは特異な事。だからこそ誰一人その封印の方法も場所も知らないんだ」


どんどん出てくるゲームマスターである私の知らない事実。


そうだ。

やっぱりここは現実世界。

私の知らない事が多くあるのは当たり前。


私は沸々と闘志がわいてくるのを自覚していた。


「レギエルデ?とどのつまりどうするんだ?封印先も所在も分からない状況。とりあえず美緒さまが呪いは解呪された。今の話の流れ、取り敢えず古代エルフの国に行く事が唯一の正解に感じるが…」


腕を組み難しい顔でエルノールが問いかける。

リンネも頷いていた。


「ふう。流石に美緒でも知らない事なんだね。ごめんね?少し安心した」

「安心?」

「うん。…ねえ美緒?」

「うん?」

「君、今、ワクワクしているよね?」


流石はレギエルデだ。

私の心の葛藤、彼は既にとらえていた。


「僕はさ、前にも言ったけど戦う力はないんだ。でも考える力はある。だけどそれだって当然のように2面性、つまりはリスクもある」

「……」

「美緒はさ、多分君、2回目だよね」

「っ!?」


その事実。

今のところリンネしかたどり着いていない。


エルノールとファナンレイリは視線をさまよわせ困惑の表情を浮かべる。

…まあファナンレイリは知っているようだけれど…


「一つ美緒の勘違い指摘しておくよ?君の以前の、おそらく失敗した君。それは正確には今の君の対にはなり得ない」

「っ!?えっ?…じゃ、じゃあ…」

「あっと、勘違いしないでね?もちろん関連はあるよ?それは君を見ればわかる。君と以前の君はもちろん対であることに変わりはないんだ。だけど今の君は明らかに強すぎる。だから対価が絶対に求められるんだ」


ああ。

分かってしまう自分がいる。

きっと今だからだ。


シナリオが壊れ新たなことが起こるこの世界。

以前とは違う今だからこそ、私は新たな対が求められる。


思わずごくりとつばを飲み込んでしまう。

そんな私の様子にレギエルデはふわりと優しい表情を浮かべた。


「ああ、心配しないでね?対、イコール悪い事だけではないよ?それにさっきの美緒の表情、以前のルート、君は凄く苦しんだんだろうね。それに相当する対、あくまでそれが基本だよ。だから君は今だ経験したことのない幸福を受けることになると思う」

「幸福?」

「うん。だから心配しないで?」


ああ、何となくわかる気がする。

今の私は物凄く恵まれている。


力だってチート全開だし、一人も失われずに私を助けてくれるメインキャラクターたち。

正直自分でも怖いくらい、今のところ順調に物語は推移している。


でも。

だからこそ怖い。


私は既に気付いている。

私の心の奥底に眠る、悪い私以外のもう一人……


三つ巴であるこの世界の真理。

監視役であり調停者である私自身。


勿論感知などできない。

でも感じてしまう。


ああ。


私は今自身の中に3人いるということに。



※※※※※



何はともあれ私たちは古代エルフの国ブーダへ行く事を決めた。

今日の正午にはブルーデビルの面々との面会をする予定だ。


パーティーリーダーであるルノーク。

彼の案内にわたしたちは希望を見ていた。


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