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第138話 集う力、改変される世界の摂理

ギルドの治療室。


そのベッドに横たわっていたファナンレイリは、目に入る知らない天井に感慨深げに思考を巡らせていた。


(…私の枷、本当になくなっている……凄いな、美緒……もう無敵じゃん)


精霊王に課せられた枷。

彼女はあの場所『魔流れの霊峰』以外での存在を制限されていた。


勿論瞬間的な移動や滞在は、力を封印することで認められていた。

でも今彼女はかつてない魔力を纏っている。

それはつまり、枷自体が無くなっていることを意味していた。


(…世界が動く……そしてこれはどの世界線でもなかったこと……)


「……う…うん?」


思考を巡らす彼女の横で、可愛らしい寝息を立てていたディーネが目を覚ます。


「っ!?はっ?ここは…お、お師匠様?」

「おはよう、ディーネ」

「お、おはようございます?…はっ?!ティリは?」


慌ててキョロキョロとする彼女の目に、可愛らしく寝息を立てているティリミーナの姿が映し出された。


「…良かった…無事ね……お師匠様が助けてくれたのですか?」

「うん?あー、一応はね?…最終的にはゲームマスターである美緒に助けてもらったのよね」

「っ!?お師匠様?……ふわあ、凄い魔力……うえっ?!ここ、魔流れの霊峰じゃないですよね?…も、もしかして…」


当然ディーネも精霊王の縛りは承知している。

だからこそ彼女はまるで小間使いのように働いてきていたのだ。


もちろん尊敬の念だってある。

でもその縛りゆえに、いやいや働いていたのも事実だ。


「も、もしかして…枷から解放されたのですか?」

「うん。凄いよね。……まさか私が自由になれるなんて……」

「お師匠様が解放された?……も、もしかして……わ、私も自由になれる?」

「うん?」


思わず漏れる自身の欲求。

注がれる訝し気な視線に思わず顔を伏せてしまう。


「……う、うう……お、お腹…すいた……」


ふいに眠っていたティリミーナが言葉を漏らす。

どうやら彼女もまた目を覚ましたようだ。


「ティリ…良かった。…あなたも目を覚ましたのね」

「っ!?ファナンレイリ様?!…あ、あれ?こ、ここ、ギルドよね?……なんでファナン様ここにいるの?…はっ?!…あ、あの爆発は……」


意識の途切れる瞬間、彼女はまさに在り得ないような恐ろしい魔力に包まれていた。


かつて経験したことのないような凄まじい爆発。

正直一瞬で死んだと思っていた。


そんな中、もう一人が目を覚ます。

一緒に保護した聖獣、朱雀のスイだ。


「あれ?ここはどこ?………うん?…わ、私の呪い……解けている?」


その言葉に激しく反応するファナンレイリ。

あれほどできなかった呪いの解呪。

どうやら美緒はそれまでをも見ただけで解呪してしまっていたようだった。


(ハハッ。……ホント規格外よね。美緒)


思わず顔をにやけさせ、口角を上げてしまう。

そんなタイミングで治療室のドアが開かれた。


「おはようレイリ。……あっ、皆も目を覚ましたのね?…良かった」


治療室に訪れた美緒。

後ろからリンネとレリアーナ、そしてファルマナさんが一緒に部屋へと入ってきた。


今ここにいるのは女性4人。

本来はレギエルデやエルノールも同行させようと思った美緒だったがファルマナさんに止められていた。


何しろ治療中とはいえ彼女たちはほぼ下着姿。

妖精族は小柄とはいえ成人女性だ。

しっかりと実っている肢体、男性に見せるわけにはいかない。


「っ!?お、おはよう、美緒」

「お、おはようございます」

「……う、うあ?……す、凄い魔力圧……信じられない」


「あっ、他の皆も目を覚ましたのね?ティリ、ロッドが死ぬほど心配していたよ?早く服着て安心させてあげて?」

「う、うん。ありがと美緒。………………うん。じゃあロッドに会いに行くね」

「うん」


慌てて服を整え、ティリは部屋を出ていった。

そんな様子を優しい表情で見ながらも、ファルマナさんとレリアーナが残された3人の状態を確認していく。


「ふむ。みんな問題ないようだね。…うん?ハハハ。お腹が減ったろう?ご飯にしようかね。アリア、お願いするよ」

「はい」


ファルマナさんのチェックを終え、問題のない3人の女性たち。

部屋の外で控えていたアリアがワゴンを押して治療室へと入ってきた。


「えっと…うあ、精霊王様?…な、なんてお美しい…そ、それに聖獣様?……うあ、本当にこのギルド、凄すぎる…」


思わず感嘆のため息を吐くアリアに美緒は苦笑いを浮かべてしまう。


確かに精霊王ファナンレイリはとんでもなく美しい少女の姿だ。


見た目の年齢は17歳くらい?

美緒とほとんど変わらぬ美貌に美しく輝く銀髪。

煌めく漆黒の瞳は見る者を魅了する。


控えめに成長している美しい胸部。

全身を包む魔力圧が、揺らめきまるでオーロラのようにうっすらと発光している。


彼女に課せられた枷が消失したことも影響し、ファナンレイリはまさに絶世の美少女へとその姿を変革させていた。


さらには奥のベッドで座っている聖獣朱雀。

美緒により解呪されたことで本来の姿、すなわち人化した妙齢の美しい女性の姿で佇んでいた。


見た目年のころは22~23歳?

しっかりと育った女性の体、下着越しに主張するさまはメチャクチャえろい。


座っているためその体躯は確認できないが、リンネに似た赤い髪、そして聖獣の特性である輝く角が可愛らしくこめかみのあたりから生えている。


ややたれ目がちな大きな目には、紫色の瞳が瞬いていた。


そんな様子に顔を赤らめるアリア。

私は思わず彼女に声をかけた。


「もうアリアったら。みんなお腹空かしているから、準備お願いね?」

「っ!?う、うん。ご、ごめんね?すぐに準備しちゃう」


てきぱきと準備を始める彼女。

流石に大人数の我がギルドの家事手伝い。


非常にスムーズに軽食の準備が整のった。


ホカホカと湯気を上げる野菜たっぷりのスープ。

それにしっかりと焼き色を付けたバケットに、栄養価の高いオロチのお肉をじっくりと煮込んだ煮物。


3人の目が輝く。


「うあー♡美味しそう。…いただきます」

「あああ、夢じゃないのね……っ!?お、美味しい?!」

「いただきます……ううっ、蕩けそう♡」


配膳の準備中にちゃんと服を着替えた3人は顔をうっとりさせながらも食事を楽しみ始めた。


その様子にわたしは安堵のため息をつく。


(よかった。みんなを助けられた。……でも……)


今は帝国歴26年初頭。

完全にシナリオは機能していないことに、わたしは少し不安を感じていた。


実はゲームのどのルートでも妖精王、ファナンレイリは完全にモブ状態。

幾つかのお使いイベントで登場するくらいだった。


しかも対応するのはいつでもディーネだったため、スチルすら存在していなかった。


(本当に始まるんだ……ゲームではない、この世界そのものの物語が……)


美緒の瞳が力強く光をともす。

そして食事をしている、前の美緒のルートで親友になったファナンレイリを見つめた。


以前のルート。

美緒が経験し、今では情報となっているそれ。


でも彼女は思い出す。

違う。

情報じゃない。


私は確かに経験していた。

何故か頭の中で何かのロックが外れた気がした。


刹那―――


あの情報流入の時と同じ、いやそれ以上の流入が美緒に襲い掛かってきた。


「うぐうっ?!…うああっ?!……みんな?……時が?停まって…うあ、うあああああああああああああああああああああああああっっっっ!???」



激しい激痛にわたしは意識を手放した。


倒れ伏す美緒。

時間が止まっている今の状況、誰にも認知できないはずだった。


ゆらりと立ち上がりその美緒を見下ろし、口を開くリンネ。


「……美緒…ごめんね………でも、今度こそ……私は約束を守る」


その目には一筋の涙が零れ落ちていた。


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