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第130話 美緒VSランルガン

ところ変わってギルドの地下1階にある修練場。


今美緒の前にはドラゴニュートであるランルガンがその魔力を練り上げ獰猛な瞳をギラギラと光らさせていた。


「ねえ美緒?本当に戦うの?…それこそガナロでも良いんじゃない?」

「ううん。だめだよ。これは私の役目。何より彼、絶対に納得しないよ?いくら負けてもね。だから私自ら『教え込む』必要があるの。リンネはさ、回復の術式展開して待っていてくれる?」


「う、うん」


そう言い私から離れるリンネ。

ガナロは不満顔だ。


「ね、姉さん?」

「ガナロも見ていてね?私さ、新しい技、身に着けたの。少し試してみたいし」


ジパング決戦の時に就いた武闘家のジョブ。

あの時の経験でほとんどのスキルは習得していた。


それから複数のジョブを経ることで解放されるいくつかの秘術。

私はそれを試してみたかった。


「いいよ?ランルガン。…本気でガードしてね?甘く見ると死んじゃうからね」

「ふざけんな。俺だって本気で行かせてもらう。……美緒こそ泣くんじゃねえぞ?俺は強え」


瞬間。

二つの魔力が弾け、交わり合う。


ズドオオッッ!!!

ズガガガガガーーーーーンンンン!!!!!!!

ドガアアーーーーンンン!!!


まさに一瞬の攻防。

ランルガンの放つ鋭い打撃を悉く躱し、美緒はその力を開放していた。

叩き込まれる防御不能な打撃。


そのすべてがランルガンの体を壊していく。

そしておそらく数秒にも満たない刹那の攻防。

(もたら)された結果に、見学していた皆の顔に驚愕が浮かぶ。


「うん。いい感じ」


修練場中央。

輝く闘気を纏う美緒が満足げに頷いていた。


「ぐはあっ?!!!……くく、く…と、とんでも、ねえ……な…」


修練場の壁にめり込み、どうにか吐血とともに言葉を発するランルガン。

体中にあり得ない数の美緒の拳の跡が、青黒い痣となり張り付けられていた。


きっと数十発。

いや数百発。


あの刹那の時間で繰り出された美緒の打撃。

魔力を纏いさらには聖気・邪気・暗黒魔力に隔絶解呪。


とんでもない破壊力はランルガンの骨という骨、そして組織をすべからく破壊、一瞬でその行動を不可能なまでに蹂躙していた。


時が止まる修練場。

完全に沈黙するランルガン。

あり得ない高みにいる自分たちの信望する絶対者。


思わずつばを飲み込む音が、時間が止まっていないことを実感させる。


「流石はランルガンだね。良かった。まだちゃんと生きている。リンネ、回復お願い?私色々混ぜちゃったから私の魔力だと弾かれちゃうからさ…あ、アリアも協力してね?」

「っ!?う、うん」

「わ、分かった」


「美緒さま?私の完全回復、使えますが…」

「あー、それはダメかな。今の経験が無くなっちゃうから。あなたのそのスキルはどちらかと言うと回復というよりは、事象の改変に近いのよね」

「そ、そうなのですね?」

「うん」


にこやかに笑う美緒。

そしてその瞳は鋭さを増す。


未だこのギルド最高ダメージを与えられるのは、サンテスのハンマーコックだ。

でも美緒はそれを越えたいと思っていた。


今放った打撃。


一撃の威力をとことん抑え、丁寧に細かく破壊を積み重ねるとんでもない技術の結晶。

かつて医療書を読み漁った美緒。

どうすれば体を壊せるかも彼女は深い知識を得ていた。


実は美緒、おそらく5%くらいの力で打撃を放っていた。

もし全力ならすでにランルガンは存在ごと消滅していたであろう。


ただ手数がとんでもない。

自身でも認識できないその数、どうにかレギエルデは認識していたその打撃は、あの一瞬で162発もの打撃が叩き込まれていた。


ようやく魔力を霧散させる美緒。

その姿はあいも変わらず美しくそして可愛らしいいつもの彼女だった。



※※※※※



その様子に、頭脳特化のレギエルデは思わず感嘆の言葉を漏らす。


「……もう、今でも勝てるんじゃないのかな?…ははっ、凄すぎる」


美緒が倒すべき相手。

隔絶した次元にいる虚無神。


同じステージに唯一立てるであろう、全てのシナリオをクリアしたその瞬間。

舞台さえ整える事が出来るのなら。


レギエルデは勝ちを確信していた。


それほどまでに今の美緒の力はすべての想定を超越していた。


(……でも……なんだ?この不安は………分からない……)


レギエルデは知らない。


同じ地球からの転生者であるナナが感じていた不安。

レギエルデも全く違うアプローチでたどり着く、引っかかる不安。


その根源、彼は未だ見当もついていなかった。


(…大丈夫、のはずだ……今回は皆がいる……大丈夫だ……)



※※※※※



やがて治療され運ばれていくランルガン。

私はそれを見やり、様子をうかがっていたレルダンに声をかけた。


「ねえ。もう少し手数増やせそうなんだけど…質にこだわった方が良いかな?」

「…それを俺に聞くか?…全く。……確かに後半は雑に見えた。でも十分だとは思うがな。少なくとも俺には防げん」


「うん?でもレルダン本気なら、多分防げたはずだよ?後はマールもかな。もちろんナナとマキュベリアもね。…レルダン『私の気』追えていたでしょ?」

「っ!?…本当に美緒は真面目だな…シミュレートもしていたのか?」

「もちろん。試せる機会は少ないから…でも、レルダンとなら訓練できそうかも」

「…悪いが勘弁してくれ。…少し時間をくれ。追いついて見せよう」

「うん。流石はレルダンだよね。約束だよっ♡」

「あ、ああ」


可愛らしく微笑む絶対者。

愛おしさとともに恐ろしさがレルダンを包み込む。


(っ!?…恐ろしさ?……なぜ?………ありえんだろう……)


とことん乖離していく美緒の実力。

そして無意識に感じてしまう恐怖。


レルダンは大きくかぶりを振り、歩いていく美緒の後ろを付いて行った。



※※※※※



サロンに戻り先ほどの美緒に対し、思わず声を出すマイ。

なぜか目は輝き、いつもの彼女らしからぬ興奮した様子でサクラに話しかけていた。


「ねえ、ねえっ!美緒さま、すっごいね♡」

「う、うん。……マ、マイ?なんかすごく興奮してる?」


普段見せない表情のマイ。

うっすら上気し目が輝く。

メチャクチャ可愛い。


彼女たちは以前ジパングにいた。

妖魔にひどい目にあわされるまでは普通に暮らしていた。

もっともサクラは少し貧乏だったが、マイは普通だった。


でもギルドに来て最重要施設『大浴場』の洗礼を受けた彼女たち。


髪は煌めきを増し肌はさらに透き通る。

そして纏う優しくも魅惑的な香り。

さらには栄養に溢れた食事と適切な業務。


彼女たちは数日とはいえ既に変貌を始めていた。


元々可愛かったマイ。

すでに至高の美をその手にしていたのだ。


「私ここに来れてよかった…美緒さまの近くにいる…それだけでもう幸せ♡」


何故かうっとりとするマイ。

彼女は今まで男が怖かったせいもあり、大男のランルガンをぶちのめした美緒に衝撃を受けていた。


ありていに言って、まさに一目惚れだった。


何故か背筋に寒いものが走るサクラ。

とんでもないほどの濃厚な色気がマイから放たれていた。


(うわー。マイ、やばすぎ…あうう、男の人達、じっとマイの事、見ているし…)


未だ14歳。

未完成の少女。


胸だってまだまだ小さく可愛らしい。

だが溢れる色気、年上が好きなレイルイドですら生唾を飲み込んでいた。


ジパングの少女マイ。

本来シナリオでは存在していない少女。

彼女もまたある称号を授かる。


そしてそれが大きな混乱を巻き起こすのだが…


それはまだ先のことだった。


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