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第122話 完全勝利と戦いの後

夕刻。

ギルドのサロンには今まで見たことのないようなご馳走が所狭しと並んでいた。


当然あの封印の場所にいた5名の女性や、幾つかの後片づけは既に済ましていた。

後は楽しむだけ。

美緒は改めて喜びをかみしめていた。


「わあ、凄いご馳走」


中でも目を引く巨大なステーキの山。

ナナが仕留め、私の超元インベントリで運んできたオロチの肉。

当然調理はナナが担当『調理人S』の能力をこれでもかと使用してある絶品だ。


「うーむ。わしが焼こうとしたらナナに止められてな。少し味見したが納得せざるを得ない。まさに絶品……あれは既に技術とかじゃないな」


何故かスッゴク血色のいいザナークさんが私に教えてくれる。

あー、うん。

ナナの『調理人S』


あれは特別なのよね。


「美緒!」


その様子にぽかんとしていたらハイネ君が私に飛びついて来た。

隣には目を輝かせているフィムも一緒だ。


可愛い二人に癒されながら私は両手でそっと抱きしめた。


「おかえり、美緒……本当に勝ったんだね。凄いや」

「すごいの♡……ねえこのお肉、食べていい?」


オロチのお肉を見て目を輝かせる。

可愛い反応。

スッゴク癒される。


私はフィムの柔らかい髪を撫でながら諭すように話しかけた。


「みんな今お風呂とかで集まっていないでしょ?みんなが来たら一緒に食べようね」

「…わかった。ふぃむ、がまんできるよ!」


「えらいね。きっとナナもいっぱいフィムの事、褒めてくれるよ」


「うん♡」


ざわめきに沸くギルドに愛すべき仲間たち。

改めて見回す私の心がほっこりと温かくなっていく。


「美緒、ちょっといいかい?」

「レギエルデ?どうしたの?」


そんな私に声がかけられる。

わたしは彼に近づき、軽く顔を傾げた。


「新しい仲間の皆をさ、紹介したいんだけど。…美緒から紹介してくれる?僕は今回戦っていないからね。その方が皆受け入れやすいと思うんだ」


レギエルデはとんでもなく優秀だ。

言葉や態度の隅々に、それとなく意味を持たせている。


だからこれはきっと必要なことなのだろう。


「ところで…ガナロ様は今リンネ様と?」

「うん。あの二人双子でしょ?私がしっかりしつけたから、ガナロにもう危険はないしね」

「…しつけ?!……えっと…」


何故か素っ頓狂な声を出したと思ったら訝しげな表情を浮かべる。

すっごく心配している感情が私に伝わってきた。


「もちろん大丈夫だよ?まあ、ちょっと本気で殴ったから。……その時は大怪我だったけど…」

「あー……コホン。…じゃあ、任せてもいいかな?」


そういえば結構時間が経過している。

久しぶりに会う双子。

そろそろ落ち着くころだろう。


「えっと、じゃあちょっと様子見てくるね」

「お願いするよ」


私はサロンを出て、リンネの私室へと転移していった。



※※※※※



リンネの私室。


私の部屋のすぐ隣。


ノックをして入ったそこではなぜか涙目のガナロがリンネに対して土下座をしている状況だった。


「おじゃまします……って?!…何してるの?」


それを鬼の形相で見下ろしているリンネ。

どういう状況?


「美緒?……ねえ、こいつ、美緒にえっちい事したの?…在り得ないんだけど?!」


えっと。


た、確かに彼、私に甘えたけど……

そ、その…


で、でも別にそういう意味じゃなくない?


「うあ、そ、その…リ、リンネ?いやらしい意味じゃ…」

「ものすごく甘えられたのでしょ?」

「っ!?……う、うん」


リンネとガナロは色々とつながっている。

だから結構な濃度で起こったことは伝わるようだ。


「むう、私もまだ美緒にそこまで甘えてないのに!!」


あなた何言ってるのかな?

どうしてそんなことで怒っているの?!


そもそも姉妹でそんな……

まあ実は一番私の体に触っているのは何気にリンネなのだけれどねっ!!


そんな私たちの様子にガナロがおそるおそる声をかけてきた。


「ね、姉さん…そ、その…さっきは…ご、ごめんなさい」


まるっきり覇気を無くし、ただひたすらに消沈しているガナロ。

因みにガナロは力の殆どを私の隔絶解呪で失い、いまだ10歳程度の見た目のままだ。


その様子に何故か母性が湧いてきてしまう。


私はゆっくり近づいてガナロをそっと抱きよせた。


「っ!?」

「もう。私怒ってないよ?……だってさっきのあなた、お母様、マナレルナ様を想っていたのでしょ?」


「う、うあ…姉さん…ぐすっ…ヒック…うあ…あああああああ……」


「…辛かったね、ずっと一人耐えていたんだもんね」


肩を震わせ、こらえきれない感情にガナロは涙を流す。

愛おしさが湧き出してくる。


わたしは彼の髪を優しく撫でた。


「むうっ。ズルい。…お、お姉ちゃん?私もっ!!」


そう言い私たちに突入してくるリンネ。


「うわっ?!……もう。……いつもしっかりしているのに……ふふっ、リンネ可愛い」

「……うん」


結局3人で抱きしめあう。

そうだ。


今私は一人じゃない。

厳密にいえば私とリンネたちは他人だ。


でも。

魂…絆…間違いなく私たちは姉弟。


その事実は私の心をより強くさせてくれていた。



※※※※※



一方十兵衛の私室。


なぜか彼は仁王立ちし、視線をさまよわせる。

ほんのりと顔を赤らめ、さっき救った琴音とミコト。


その姿を直視できずにいた。


「うーん、久しぶりの琴音…良い匂い」

「も、もう。…十兵衛見てるでしょ?」


百合百合しくやたらと距離の近い二人。

先ほど風呂を済ましたこともあり、シャンプーの良い香りが漂う。


「いいじゃん。十兵衛はもう家族だよ?恥ずかしがることなんてないでしょ?」

「うあ、そ、そうだけど……で、でもさ、お、男の人でしょ?…こらっ!」


ミコトは見た目15歳程度。

琴音は18歳くらい?


ミコトは琴音に抱き着き、甘え始める。


何しろ二人ともとんでもなく美形だ。

そういうことはかなり際どく、何よりも艶っぽい。


「コホン。拙者、席を外した方がよくはないか?そ、その…家族として認めてくれてとても嬉しいが…琴音殿の言う通り拙者は男。……そ、そなたたちは美しいのだ……し、失礼する」


たまらず部屋を飛び出す真っ赤に顔を染めた十兵衛。

それを見たトポがジト目をミコトたちに向ける。


「ミコトねーちゃん。…ねーちゃんは琴音ねーちゃん好きなのか?」

「うん」


即答。

まったく迷うことなく目を輝かせるミコトに琴音はため息を零す。


「もう。……相変わらずだね。……ちょっと安心したかも」


顔を赤らめつつもそんなことを言う琴音。

十兵衛が居なくなり、少し羞恥心も落ち着いて来た。


自分に甘えるミコトの髪を撫でる。


「ん。気持ちい……ああ、本当に生きているんだ……ボクの心の奥にあったモヤモヤした衝動…凄いね美緒は……本当にボク、自由なんだ……」


2000年前。

ミコトの唯一の味方だった琴音。


彼女、ミコトには多くの試練とそしてあり得ないほどの敵がいた。


「本当。不思議だね。……あの悍ましい感情、私の中にももう存在しない。……ねえミコト?」

「うん?」

「美緒に協力するの?」


経緯はどうあれ二人は解放された。

もう創造神のお願いというか呪縛、すでに二人にはそういう枷は存在しない。


ミコトは強い。

でも琴音はそこまでの力はない。


正直このギルドだと、戦える者たちの中では圧倒的に力が足りていない。


「わたしさ、2000年前はそこそこ強いと思っていた。でも今は……私を助けてくれた美緒たち、本当に彼女たちはまさしく神の軍勢だよ?私は役に立たない…」


零れる本音。

出来れば彼女は美緒たちと一緒に居たい。

でも自分は……


刀という形ではあったが、琴音は昨日サロンにいた。

だからこそわかってしまう。

今の自分の力とその立ち位置。


そんな感情が伝わったのか突然ミコトに強く抱きしめられる。


「バカだな琴音は。……今度こそボクが守る。絶対だよ?…何も心配いらない」

「…ミコト……」

「それにさ」


ミコトは真直ぐに、琴音の瞳を見つめる。


「……うん」

「美緒が今の話聞いたら、きっと怒られちゃうよ?」


「っ!?」


「だって美緒はさ…あの子はさ…全部救うんでしょ?琴音だって絶対その中じゃん」


「う、うん」



そうだ。


『ゲームマスター』というとんでもない称号を持つ美緒。

でも彼女の願いは驚くほど単純でそして何よりも強いものだった。


『全てを救う。手の届く範囲は』


ああ。

私たちは。


本当に救われたんだ。



※※※※※



ぐううう―――


突然可愛く鳴くミコトのお腹。

思わず赤面する。


「うあ。そういえばボク、スッゴクお腹空いていた。…ご飯とかもらえるのかな?」


そんなタイミングでノックされるドア。

先ほど出ていった十兵衛が声をかけてきた。


「ミコト殿、琴音殿、それにトポ。どうやら食事の準備が出来たそうだ。美緒殿からそう言われた。……ふ、服はもう着たのだろうか?」


その声掛けに目を輝かせる3人。

気付けば腹ペコの3人。慌てて服を着てドアから出ていく。


「ありがとう十兵衛。ふふっ。お腹空いた」

「うむ。ご相伴にあずかろうではないか。拙者も腹が背中にくっつきそうだ」

「あはは。十兵衛は面白いね」

「うん?そうであろうか?」


和やかな会話。

そんな当たり前な日常の一幕。


それにミコトは、涙が出そうになるのをこらえていた。



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