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第12話 スルテッド兄妹のあわただしい1日

兄さまがリンネ様とジパングに視察に行かれてから様子がおかしい。



※※※※※



私はレリアーナ・スルテッド18歳。

美緒によって呪いから解放され、自由を取り戻す事が出来たんだ。


美緒は『ゲームマスター』

おとぎ話レベルの超絶称号保持者。


そして異世界からの転移者。

可愛くて心優しい大好きな友達だ。


一方で兄さまの行動が“やばいレベル”で危なくなってきていた。


元々美緒大好き人間だった兄さま。

それに拍車がかかってしまっている。


まあ当の本人、美緒は全く気付いていないけれどね。


そんなことを思っていた時、私の部屋にノックの音が響いた。



※※※※※



「リア―、これ見てくれないか?…ほら、ここの所なんて凝っているだろ?お美しい美緒さまにちなんでバラの花をモチーフにしたんだよ」


にっこにこ顔で私に刺繡を見せる兄さま。


えっと、それって――女性が贈る贈り物よね?

確かに兄さま器用だけど……


あんたは恋する乙女か?!

無駄に完成度が高いのがなんかむかつくし。


「ハハ、ハ。えっと兄さま?もしかして熱とか…あったりする?」

「っ!?……ダメ、だろうか……美緒さまこういうのは好きではないのかな」


みるみるしおれていく。

今の兄さまは美緒に会わせない方が良いかもしれない。


乙女の感がそう言っている。


「えっと、そういえばザッカートさんが探してたよ?『アルディ捕獲の件』で相談があるって――今ならサロンにいるんじゃないかな」


「……ザッカート?ふん。あの粗暴な男か。……リア、私がいない間に美緒さまにちょっかい掛けたりしていないだろうね?」


うあ?!

切り替え早いなっ!!


すっかり悪人顔になっているし。


「何言ってるのよ。そんな事あるわけないでしょ?大体ザッカートさん、年上が好きみたいだよ?ミネアが教えてくれたし」


「なっ!?ほ、本当か!?……そうか、そうなんだな。ハハ、ザッカートも可愛い所があるじゃないか」


うわー。

手のひら返し、えぐっ!!


我が兄ながらさすがにこれはないわ。


もしかして精神異常状態じゃないでしょうね!?

……確かファルマナさん『癒しスキル』持っていたよね……うん。


私は兄さまの腕をガシッとつかんだ。


「な!?お、おい、リア?」

「兄さま?先にファルマナさんに診てもらいましょう。今の兄さま、絶対おかしいですので」

「えっ?おかしい?私が……っておい、引っ張るな…リ、リア…」


たいそう反抗した兄さまだったけど『今の兄さま、きっと美緒は好きじゃないと思う』って言ったらメチャクチャおとなしくなりました。


あーもう。

普段は素敵な兄さまなのに。


誰か助けて!!



※※※※※



「ははっ、リア。これはあれじゃな『恋の病』じゃ。うんうん。エル坊ももうそんな年かね。つける薬なんてありゃしないよ」


「はあ、やっぱり。でも今まであそこまでじゃなかったんだけど――なんかあったのかな」


「ふむ。リンネ様…かもねえ。かの創造神様に吹き込まれたか…良くも悪くもエル坊は純粋だ。もしかしたら『嫁にもらえ』とか言われたのかも」


「っ!?嫁?えっ、美緒と兄さまが結婚???――アリかも……」


カッコいい兄さまと可愛い美緒――

ふわー、確かにお似合いだ


…『美緒お姉さま』……はうっ♡


「でもね。美緒は…あの子多分エル坊の事は嫌いではない。でもそういう感情ではないんだよ。あの子は何しろ自己評価が低い。――きっと辞退するだろうね」


「っ!?」


美緒は自分がどれほど可愛いのか、全く分かっていない。

そして…きっと自身の幸せよりもこの世界のことを優先する。


「ど、ど、どうすれば」

「まったく。リアが慌ててどうするね。まあ、デリケートな内容だからねえ。あたしの経験上……今エル坊が告白でもしてしまえば……」


ごくりと私はつばを飲み込む。


「――家出するかもしれないねえ」

「っ!?」


えええっ!!!???


「何しろあの子、全く経験がないんだ。多分感情の置き所が無くなってしまうさね。……あんた、美緒を頼むよ?あとエル坊の暴走を何とかしな」


いきなり課されたミッション。

難易度激高なんですけど!?



※※※※※



「今良いだろうか。……私に用事と聞いたが」


久しぶりにファルマナの説教を受け、打ちひしがれたエルノール。なんとか精神を立て直し

サロンで仲間とともに話をしていたザッカートに問いかけた。


「ああ、問題ねえぜ。……ん?疲弊しているのか?無理すんなよ。なんたってあんたはここの総責任者様だ」


思いも掛けず心配される言葉におもわず目を見開いてしまう。


「…ありがとう。大丈夫だ。――それで相談とは」

「ならいいが……決行日を決めたいんだ。こっちの準備は整った。……あまり長引かせたくねえ。いつ奴が移動するとも限らねえからな」


エルノールは反省の感情に囚われる。


先ほどファルマナに『あんたは表面を見すぎだ。決めつけるんじゃないよ。深呼吸してよく相手の言い分を聞いてみるんだね。あとは自分で考えな』と諭されていた。


確かに自分は先入観で大勢を決めてかかっていた。


思い返せば、皮肉ととらえてしまう言葉が『実は自分を思いやる言葉』だったのだというのに。


『えっ?ザッカートさん?とっても優秀よ。優しい人だしね。真直ぐなのよあの人。皮肉は言うけどウソとか大っ嫌いな人だしね。んー見た目はね、職業柄仕方ないと思う。でも、素敵じゃない?鍛え上げているし』


さらに以前美緒が彼を評した言葉。

それがふいに思い浮かぶ。


自分は何と愚かだったのか。


「すまない。やはり美緒さまは正しい。私はあなたたちを誤解していた。これからも力を貸してもらえないだろうか」


「お、おう。…なんだよ、調子狂うじゃねえか。まあ、その、なんだ。……俺もあんたにゃ謝りたかったんだ。言葉遣いは変えられそうにはねえが……横柄な態度をとったこと謝罪する。 これからも頼む」


彼らが来てからエルノールはストレスを抱えていた。


まあ――美緒が他の男と話すのが気に入らない、という事が大半を占めていたが。

大体ザッカートたちがエルノールに横柄な態度を取っていたのも原因は美緒だ。


いつも彼女とともにいるエルノールに嫉妬していた。


でも理解が進めば彼らも美緒を信望している。

仲間に他ならなかった。


エルノールは頷いて、前を見る。


「三日後でどうだろうか」

「…それに意味はあるのか?」


「おそらく美緒さまの修練がひと段落する。僧侶の呪文をコンプリートされるだろう。流石にレベル上限は厳しいだろうが」


「っ!?馬鹿なっ!数日前だろ?ジョブチェンジしたのって」


「ああ、8日前だ。魔法使いの時には20日で呪文はマスターされた。――すでにエリアハイヒールまでは取得されている」


サロンに驚愕が走る。

今言った事。

常識的にあり得ない事だった。


「なっ!?……化け物……」

「おいっ。そういう物言いはやめろ。美緒さまは―――女神だ」

「っ!?……すまねえ。……はあっ!?女神???」


思わずエルノールを見つめてしまう。


「そ、それは種族的に、か?それとも……」

「……私にとって、だ。…異論は認めん」


宣言し顔を赤らめる。


「ハ、ハハ、そ、そうか。うん、そうだな。カシラは女神さまの再来だ」

(…やべえ、目がイッテる。……下手に逆らわねえ方が良い)


「ふん。分かればいい。で、良いだろうか?3日後で」

「あ、ああ。準備を始めよう」

「頼む。詳細が決まったら教えてくれ。私は失礼する」


背を向けサロンを出ていくエルノール。

姿が見えなくなり大きくため息をつく。


「ありゃあ……やべえな。……おい、ルルーナ」

「うん。やばいね。……なに?」


「お前カシラに張り付け。エルノールが暴走しそうになったらお前が守れ」

「っ!?えっ?私?」


「友達なんだろ?守ってやれ」

「っ!?……わかった」


ザッカートはルルーナの頭を乱暴に撫でる。

ルルーナはジト目だ。


「本当にやばくなったら俺を呼べ。カシラはどう見ても経験がねえ。いきなりエルノールが暴走したらそれこそ家出しかねねえ」


「……うん。ねえ、リアとかにも相談してもいいかな」


「ああ。ミネアにも伝えておけ。おっさんの俺に『少女の気持ち』は分からんしな」


返事とともに行動を開始するルルーナ。

残された男性たちは思わずうなずき合った。


「あわただしくなってきやがったな」


ザッカートのつぶやきに団員は朧気に不安を感じてしまっていた。



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― 新着の感想 ―
美緒とエルノールの結婚。周りの反応が悪くなくて良かったです。 ルルーナのミッション、難しすぎる…。
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