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第112話 決戦ジパング4

ジパング西の人里離れた深い森の中。


転移で訪れたナナとマキュベリア、そして眷族であるアザーストとスフィナの4人。

はるか上空からその物体を確認し、冷や汗を流していた。


「でっか!?」

「うむ。とんでもないの」

「……あれを倒す?……ハハハ、想像すらできませぬ」

「……アハ、アハハ……」


今は上空でマキュベリアの作った障壁を土台とし見下ろしている状況だが…

どう見ても対象となる化け物、全長200メートルは超えていた。


「……どうじゃナナ?食材認定できたかの」

「あー、やっぱりレギエルデの言った通り、あいつまだ目覚めてないね。なんか鉱石?…取り敢えず私の称号、反応してないや」


思わず腕を組み唸るナナ。

きっと今の状況、どんな攻撃も届かない。


「じゃが見ているだけとはいかぬであろう?どれ、わらわの究極の魔法で起こしてやるとするか。何しろ寝ている。魔力を練る時間はあまりあるじゃろ?」


正直寝ているのならそのままでいいのだろう。

いつ起きるかもわからない天災級の化け物。


でも説明をしていたレギエルデの言葉がよぎる。


『きっと美緒しか倒せない』


そしてあの後レギエルデに呼ばれ教えられた情報。


『あー、多分あいつは寝ている状況なんだよね。でも美緒たちが例のマサカドにダメージなり与えると、きっとそいつが目を覚ます。仕込んであるんだよね…そういう術式。まあ見ていないから正確のところは分からない。だから先制攻撃。目覚める前にダメージ与えればその後きっと楽になるよ?』


美緒は強い。

きっと誰も敵わない。


でも彼女はこの世界に転移してまだ1年もたっていない。

確かに使命もあるしゲームマスターの称号もある。


けれどもこの世界の先輩として、やっぱり思うところはあるナナなのであった。


「ねえマキュベリア?その魔法、私も便乗してもいいかな?」

「ふむ。お主実際ジョブは何なのだ?そういえば聞いたこともない」

「一応『姫騎士』でサブは『探究者』だね。魔法は基本の物なら使えるよ」


「…お主も十分すぎるほどチートよな。分かった。なればわらわの今から構築する魔法、土属性じゃ。合わせて見せよ。……かかっ、確かに美緒に全部持って行かれるのは矜持が許さぬな」


マキュベリアとて超絶者。

やっぱり彼女も少しだけ悔しい思いはあったようだ。


もちろんそれを大きく上回る美緒への信愛の気持ち。

それは疑うべくもないのだけれど。


「やるぞ。アザースト、スフィナ。全力を使う。お主らの精気、我に捧げよ」

「はっ。仰せのままに」


アザーストは静かにマキュベリアへ歩み寄り、跪きマキュベリアの手を取る。

光が生まれ、互いの体から淡い魔力の糸が絡み合う。


「……良い。流れておる……アザースト、今、我が血潮にお主の熱が伝わる」

「恐れ多い……これほどの力を扱えるのは、あなた様だけです」


そこへスフィナが進み出る。

マキュベリアは微笑み。


彼女の頬を指先で撫で、唇を寄せる――

二人の輪郭がぼやけ、魔力光が淡く輝いた。


「スフィナ、怯むな。そちの心が揺らげば、儀式は乱れる」

「……はい、マキュベリア様」


光と光が混ざり合い、周囲の魔力が震える。


その艶やかな儀式の気配に、ナナは思わず顔を真っ赤にし背を向けた。


「ひゃっ……な、なんか見ちゃいけない気がする……」

「ふむ。嫉妬かの?お主の精気ならば、さらに高みに届くやもしれぬが?」

「い、いやいやいや?!」


思わずたじろぐナナ。


刹那マキュベリアの体が濃厚な魔力光を放つ。

確かに彼女、今の一瞬で相当魔力を増していた。


流石は両刀使いで伝説の吸血鬼の真祖。

そう言う事にはきっとギルドで一番造詣が深いことだろう。



※※※※※


そんな中突然悍ましい魔力反応が爆発的に(ほとばし)った。

動き出す大魔獣。

どうやら美緒たちが戦い始め、トリガーが発動したのだろう。


「うあ、起きちゃった?……っ!?……ハハ、ハ」


その様子に気づいたナナ。

突如彼女が呆然と立ち尽くす。


刹那―――


あり得ない未だ感じたことのないような膨大な魔力がナナから立ち昇った。


「……ふはは。…なるほど。これは敵わぬ。……そして安心するがよいぞ?美緒、そしてレギエルデよ。…勝ちは確実じゃ」



※※※※※



伝説の大魔獣オロチ。


かつて大陸を沈めるほどの圧倒的な暴力の権化。

レベルは400を超えまさに悪夢の存在。


今それは『ウルティメートプレデター』の称号持ち。

ナナの喰らうべき食材に成り下がっていた。



※※※※※



少し前―――

大江戸城の東、海を挟んだ広大な平地。


多くの住居が立ち並ぶその奥に、かつては深い森であった古き時代に建立されたであろう大きな社。


その周りがまるで魔界のように悍ましい妖気に包まれていた。


漏れ出す妖気に小動物や鳥までもが、ヒューマンを襲おうとその爪や牙を研ぎ澄ましていた。


「恐ろしいものだ……ここが本当にジパングの都市なのか?」


聖剣を片手に十兵衛がつぶやく。

夜明け間もない時間。


すでに日の出を迎えたにもかかわらず、ここ一帯は暗雲が立ち込め。

ほとんど視界が効かない状況となっていた。


「美緒殿」


そこへジパングが誇る隠密のトップ、半蔵が姿を顕わし美緒の前に跪く。


「半蔵さん?もう、そんなにかしこまらくてもいいのに……報告ですか?」

「はっ。すべての配置、完了しています。どうか突入の合図を」


ふと魔力を広げれば、社を囲うように配置している武将たちに隠密の皆さん。

気をたぎらせ、その時を今か今かと待ち詫びている様子がうかがえた。


「半蔵さん、申し訳ないけど首領格は私たちにください。突入と同時におそらく結界が消失するでしょう。そうなれば大小さまざまな妖魔があふれ出し、民を襲おうと行動するはずです」

「はっ」


「今からバフをかけます。命を第一に、そして民を守ってください。モミジさん」

「はい」


「貴女の指揮、信じています。どうか無理をなさらず。確実にマサカドを倒し九尾であるミコト、救います。『オーラフィールド』『オールリジェネ』『麒麟の嘶き』……コホン」


私は魔力を練り、ここにいる全員にバフを付与、思念をとばす。


『皆さん私はゲームマスターの美緒。今日この時、ジパングの闇、払います。皆さんの力信じています。必ず生きて、家族とともに新年を祝いましょう!』


わたしのバフと言葉、そして祈り。


ここ一帯にいる武将と隠密の皆から魔力が吹き上がり、全員の士気が最大値まで上昇する。


「行きます。『隔絶解呪』」


社を包む不穏な魔力と妖気、音を立て崩れ落ちる。


「うおおおっ!!いざっ!!」


その瞬間飛び込む十兵衛とマール、そしてデイルード。

私とリンネ、ルルーナ、そしてレルダンがその後を追う。


「ロッドは動線を確保しつつ撃ち漏らしを!!殿(しんがり)を任せます。お願いね」

「うん。任せて美緒さん。よし、ティリ?頼むよ」

「まっかせなさい。はああっ!!精霊武装!!Ω(オメガ)!!」


鮮烈な緑の光。

キラキラと輝く美しい聖なる鎧がロッドランドを包み込む。


「さらにおまけよ!ロッド、剣をかざして!」

「うん」


腰に据えていた美緒の錬成した聖属性に特化した人造聖剣『リラ・グレイス』を抜き放つ。

そこにティリミーナの祈りの力が七色に輝き聖気が迸った。


「すごい。凄いよティリ。君は本当に特別な妖精なんだね」

「ふふん。見直したかしら?」

「うん」


そんなことを話していると美緒たちが進んでいったほうの土がめくれあがれ、悍ましい死霊がその姿を顕わし始めた。


「…ギイイ…グハアアアアアア……」

「ウアア…コホオオオオ…」


突然肉の腐ったような悪臭が立ち込める。


ティリミーナがその可愛らしい小さな鼻をつまみ、途端に涙目になりロッドランドの聖なる鎧にあつらえられた、まるでコックピットのような場所にもぐりこんだ。


「いけっ!ロッド!!あいつらやっつけて!!」

「はは、は。これじゃまるで僕ゴーレムみたいじゃん……っ!?どうやらふざけている時間はないようだ。ティリ、しっかり隠れていてね」

「らじゃー」


らじゃー?ってなに?


そう思いつつもロッドランドは気持ちを切り替える。

すでに戦いを始めている多くの武将、そして隠密と連携し、湧き出す死霊に向かいその剣を振り始めた。



※※※※※



一方ほぼ同時に転送ゲートからここに赴いた救助部隊。


その中でも別の極秘任務である『妖気を増幅させる結界』を破壊すべく選出された美緒のギルドが誇る諜報部隊、ノーウイックとイニギア、そしてロッジノとモナークの4人がそれぞれの場所を目指し移動を開始した。


それを見送ったドレイクとサンテスとライネイト、ラムダス、そしてカイマルク、ミカの6人がそれぞれ頷き合い、力なき民を守り救うため最後の確認を行う。


「よし、良いかみんな。俺達の任務は民を救う事、それだけだ。極力戦闘は避けろ。美緒たちの戦闘が始まれば、街はきっと妖気に溢れる。臭い奴らが湧き出るだろうさ」


そう言い皆を見渡す。


「二人ずつ、3チームを作る。俺とミカ、サンテスとラムダス、そしてカイマルクとライネイト。くどいようだが間違えるなよ?俺と美香はここから、サンテス達は南、カイマルク達は北だ。各地に作られている避難所、そこへ誘導してくれ。絶対に死ぬな。それでは散開!!」


「「「「おうっ!!」」」」


いうが早く姿を消すサンテスたち4人。

とことん鍛えられた盗賊。


その本領を発揮する。


その姿を見やり移動を開始するドレイクとミカ。

程なく視界に襲われている人民の姿が見えてきた。


「はっ!本当に魔境そのものだな。っ!?ミカ」

「はい」

「やるぞ。あいつらを無力化しながら人民を避難させる。……死ぬなよ?」

「当然」


人民の確保のためには当然敵の排除は必要だ。

戦闘の為の力ではなく守るためにふるう力。


より高度な魔力コントロールと緻密な戦闘技術を要求される、まさに熟練の技が必須だった。


「へっ、地味に見えるが最重要な仕事?…レギエルデはすげえ。まさにその通りだぜっ!!」


デストロイヤーの本領。

1対多数。


一緒に居る下忍であるミカのフォローを信じているドレイクはその力を最大で振るう。


吹き飛ぶ悍ましい死霊の者たち。

死霊の拘束を逃れ、確保された通り道を力なき者たちがおそるおそる走り抜けていく。


「海岸へ急げ!!そこにこの国の武将たちが避難所を作って守っている。動けない者はいないか?!」

「あ、ああ、ありがとう……あなた達はいったい…」

「この国を救うゲームマスターの配下だ。安心しろ、明日はきっと新年を祝える」

「っ!?……ご武運を」


頭を下げ避難所を目指す老齢の男性。

その姿になぜかドレイクは心の底から喜びを感じていた。


(俺みてえな男でも…人の役に立てる日が来るとはな……まったく。美緒、お前はすげえよ)


一度は国を捨てまるで世捨て人のような覚悟をしていたドレイク。


今では愛するメリナと結ばれ。

この世界、おそらく最強のギルドに所属し、栄えある諜報部隊を任されるまでに至っていた。


(ははっ。今夜は納日。こんな夜だ。たっぷりと飲ませて…美緒の酔っぱらった姿でも見せてもらおうかね)


キレを増すドレイクの攻撃。

その凄まじさにミカは思わず心の中で感嘆の声を上げていた。



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