第99話 美緒の言う『キャッキャうふふ』とマールへの依頼
我が愛するギルド本部の最重要施設と言っても過言ではないお風呂。
日々色々思い出す私のチートスキル『超元インベントリ』の中から出てくる便利アイテムにより進化は止まることを知らなかった。
初めはただ広いだけだったお風呂。
今は泡ぶろにかけ流し、さらにはサウナまで完備され、置いてあるアメニティグッズは地球で成人だったナナまでもが目を見張る超高級品が揃えられていた。
※※※※※
「ふわー、このボディーソープ……日本にいた時高すぎて手が出なかった奴だ…はあ、いい匂い…美緒、ここのお風呂、やばくない?」
「あはは。うん。私も向こうにいた時はただのサラリーマンだったから。せっかくだから最高級の物を思い浮かべたのよね。ほら、私たちの仲間、みんな可愛いでしょ?だからもっときれいになって欲しくて」
とんでもない品ぞろえに思わず呆けてしまうナナ。
「それにこのお湯も……うわーヤバイ。これって確か限定の奴じゃないの?なんかネットで大バズリしてた」
「うん。いい匂いよね。お肌もしっとりするの。乾燥も防いでくれるしね」
まさに極楽。
マキュベリアなどすでに完全に虜になっていた。
そんな話をしている私たちに何故か目を爛々とさせながらレリアーナが手招きをしていた。
あー、うん。
約束したもんね……
う、うん……
「はい♡美緒?ここに座って♡」
「う、うん」
恐る恐る私はレリアーナが待ち受ける椅子に座る。
彼女は最初に私の髪の毛を丁寧に洗い始めた。
「はあ♡すっごくサラサラ♡……美緒の髪の毛、キレー♡」
「あ、ありがと」
そして手際よく洗い流しコンディショナーを馴染ませてくれる。
何気に彼女は上手だ。
私はずっと前に行った美容室を思い出していた。
まあ多分5年以上前だけど……
実は高校生以降は自分で切っていたんだ。
他人を避けていたから……
………
「美緒?かゆいところある?」
「っ!?…えっと、大丈夫だよ」
ついよぎるつまらない過去。
私は軽く頭を振り、思考を切り替えた。
「ん?どうしたの?」
「アハハ。何でもないよ」
そしてひとしきり馴染ませ髪をまとめ、今度はスポンジにボディーソープを馴染ませ始めた。
(ふう……あっ、良かった。レグみたいに直接じゃない。……流石リアよね)
そう思っていた私が確かにいた。
「…ねえ美緒?」
「う、うん?」
優しく背中から洗ってくれるレリアーナ。
なぜか鼻息が荒い?
「…はあ。…スッゴク肌がきれい…ゴクリ…(舐めたい)」
「はあ?」
聞き取れないくらいに小さくつぶやくレリアーナ。
なんだか知らないけど。
私はめちゃくちゃ恐怖に囚われる。
その後沈黙しながらも、優しく丁寧に私の体を洗う彼女。
逆にその沈黙…
恐いんですけど?
「あああ…ああ…はあはあはあ…うう…」
「ちょ、ちょっとリア?…だ、大丈夫?」
なぜか卒倒している?
私は慌てて振り返り、フリーズしてしまう。
そこには。
白目をむき何故かにやけ顔で、鼻血を噴き出しているレリアーナがいた。
※※※※※
どうにか気付いたリンネに連れられ、今は脱衣所で休んでいる彼女。
戻ってきたリンネが大きくため息をつく。
「ねえ美緒」
「うん?」
「あなた…パッシブ切り忘れたでしょ?」
「っ!?」
そうだ。
私、メチャクチャ怖くて…
思わず意識的に切っていた『魅了』のパッシブ。
普通に発動してたんだ。
「まったく。リアはさ、あんたの事好きなの。しかもきっと『百合気味に』」
「うあ。えっと」
「反省しなさい」
何も言えない私。
そそくさと湯船に避難しました。
※※※※※
「はああああ―――――♡きもちいい♡」
「ふふっ。ナナ、お疲れ様」
その後どうにか落ち着いた私はナナと一緒に湯船につかる。
ナナは学園の実地演習、厳寒の地での滞在訓練。
その時にマキュベリアに会いに行ったようだ。
何でも皇帝のオーダー。
一度皇帝には会いに行かなくてはならない。
それにあの国。
ロッドの国みたいに不穏な空気に包まれている。
「あれ?ナナ帰ってきたの?」
「おかえりにゃ」
「ななああぁ♡」
私とナナが湯船につかっていると、ルルーナとミネアがフィムを連れてお風呂にやってきた。
ナナを見て目を輝かせ飛びついてくるフィム。
めっちゃ可愛い。
「フィム!!良い子にしてた?」
「うん♡ふぃむね、るるーなとみねあといっぱいあそんだの♡」
「うんうん」
「もちろんはいにいにともいっぱいあそんだ♡」
ナナのつつましい胸に顔をうずめ、うっとりとするフィム。
余りの可愛さにナナの顔は崩壊寸前だ。
「んーフィム、いい匂い。今日は一緒に寝ようか♡」
「うん♡…るるーなぁ、いい?」
「はあ残念。…うん、いいよ?フィム、ずっとナナが帰ってくるの待っていたもんね」
「うん♡」
ああ、なんて癒される。
さきほどの『事件』で少し落ち込んでいた私。
フィムの柔らかい髪を撫で、心から癒され。
温かい気持ちに包まれていた。
※※※※※
一方奥の岩風呂を楽しんでいた二人の絶対者。
かつてのわだかまりは、お湯に流したようだった。
「ふむ。流石は高位の古龍。人たらしだな。…貴様もあのくらい可愛げがあればいいものを」
「ふん。貴様に言われたくないわ。…まあ、確かにここは極楽。それは認めようぞ」
かつての仇敵、マキュベリアとガーダーレグト。
お互い呪いで不死。
そして超絶者同士。
レベル差は相当あったがガーダーレグトは感情を代償にすれば上限はないに等しい。
2000年前、彼女たちは数多の死闘を繰り広げていた。
「なんじゃ貴様。ずいぶん強くなりおって……素でそれか?」
「まあの。これもすべて美緒のおかげだ。貴様も美緒の事、しっかり見てやってくれ。美緒は危うい。大分成長はしたが、彼女の負う使命は異常なほど重くそして濃い」
そして改めて、マキュベリアを見つめるガーダーレグト。
「…正直気に入らぬが貴様の力、あてにさせてもらうぞ?」
「……それほどか?この世界の現状」
「まあ本番は3年後らしいがな。美緒はそう言っている」
「ふむ」
※※※※※
裸の付き合い。
それは親交を深める。
以前のルートの時、私にはそんな余裕がなかった。
今回の最期のルート。
私にとって都合の良いルート。
きっとたどり着く―――
※※※※※
お風呂を上がり、レリアーナの無事を確認した私。
執務室でリンネと一緒に、今ジパングから戻ってきたエルノールとマール、そして付いて行ったミリナから報告を受けていた。
「おかしい気配?人じゃなくて……っ!?もしかして!?……妖刀…コトネ?!…」
「妖刀コトネ?聞かぬ名だ。美緒殿、それはどういったものだ?」
ガナロの封印に不安を抱えていた私は。
実はマールに定期的にジパングを見てもらっていた。
マールは非常に優秀。
しかも忍術は一応ジパングが発祥の地とされている。
まあこの世界広しと言えど、マール以上の忍術の使い手はそうはいない。
ただ秘奥義と言われるいくつかの忍術。
実はその謎についてもマールにはお願いしていたところだ。
私の知っている最終殲滅忍術である『アマテラス』と『スサノオ』
詳しい効果などは知らない。
名前だけだ。
正直設定で出てきただけだし、どんなルートでも明かされなかったもの。
でも私は確信している。
きっと今回の『最期の私』にとって都合のいいルート。
マールかミリナかそれともミルライナかはたまたミカか。
忍の字を持つジョブの資格のある私の大切な仲間。
誰かが、或るいは全員がたどり着くと……
※※※※※
そんなことが頭をよぎったが私は軽く頭を振り、思考を切り替えマールを見つめた。
「マール、あなたにお願いがあります」
妖刀コトネに導かれる十兵衛。
ジパングにいるメインキャラクター。
でも彼は特殊だ。
正直コトネを私が使いこなせるのなら彼を巻き込みたくはない。
「もしできるのなら、その刀、そして使い手。……見定めてください。あなたの目で見て、そして判断してください」
「心得た。……我の判断で構わぬのだな?」
「ええ。…使い手は天啓を受け導かれし『十兵衛』という人。ふさわしくないとあなたが判断したのなら。……その刀、私が使います。……命にかけて」
「っ!?ふははっ。たぎるではないか。…その任務、引き受けた」
※※※※※
こうして12人目になるメインキャラクター。
十兵衛の物語が幕を開ける。
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