第10話 黒髪黒目の少女は評価される
◆◆ミネアの独白◆◆
うち、ミネアにゃ。
さっき、美緒たちと楽しくおしゃべりして――今は部屋にひとり。
静かになったこの時間に、改めてあの子のことを考えていたにゃ。
※※※※※
異世界人で、『ゲームマスター』っていう伝説の称号を持つ美緒。
すごい努力をして力を得て、的確な指示を出して皆を導く――まさに“物語の英雄”みたいな人にゃ。
あの創造神リンネ様ですら、美緒の言葉に耳を傾けるくらい。
ほんと、信じられないにゃ。
でも、美緒の顔を見ていると、時々ふっと胸が痛くなる。
覚悟を決めた戦士みたいな表情をしているのに、
ふとした瞬間、小さな女の子のように怯えた顔をするんだにゃ。
まるで、消えてしまいそうな――そんな影を感じるにゃ。
いきなり違う世界に呼ばれて、常識も神々の理も違う場所に放り込まれて。
それでも前を向いて、皆を守ろうとしてる。
考えただけで、うちは震えてしまうにゃ。
『私ね、あっちの世界にいたときは独りぼっちだったんだ。だから今はとても楽しいの』
そう言って笑った美緒の顔。
どうして、あんなに悲しそうなのにゃ?
『こっちの世界は美男美女ばかりで、私なんか地味だよね。ハハハ……』
――美緒、鏡見たことないのかにゃ? すっごく可愛いのに。
でもあの子、時々すごく怖い表情をするにゃ。
目の前にいるのに、まるで遠く離れた場所にいるみたいなのにゃ。
危うい――そう、思うにゃ。
――まるで、光と闇の狭間に立ってるみたい――
親方も言ってたにゃ。
『カシラはとんでもねえ。あんなに強くて脆い奴、見たことがねえ。妹の、俺達の恩人だ。一生かけて助けてやりてえ』
あの鈍い親方まで気づくくらい、美緒は繊細なんだにゃ。
……でも、親方、顔赤かったにゃ。
まさか恋?
いやいや、熟女好きだし……違うよにゃ?!
ふにゃ~。
ともかく、やっと友達になれた。
だから、今度はうちが助けたい。
美緒を――守りたいにゃ。
※※※※※
◆◆ルルーナの独白◆◆
私はザッカート盗賊団の頭領、ザッカートの妹――ルルーナ。
団ができたころ、私はまだ八歳。
両親はいなかったけど、みんなが家族みたいに守ってくれて、寂しくなかった。
いつか力になりたいと頑張ってきた。
だけど私のジョブは『索敵助手』。目立たないし、役にも立たない。
それでも少しは役に立てるようになった矢先、私は“リーディル”の連中に捕まった。
……怖かった。
兄さんの顔が浮かんでも、きっと来てくれないって思ってた。
だって、私一人のために皆を危険に晒すなんて、兄さんは絶対に選ばない。
泣くもんかって、歯を食いしばってたのに――
男たちが、いやらしい目で笑った。
もう駄目だ、って思った時――美緒が現れた。
『この子は返してもらいますね? 異論はないよね?』
あのときの美緒は、まるで鬼神だった。
光でも闇でもない、怒りと悲しみの入り混じった目。
魔力の奔流が空気を震わせ、男たちを一瞬で吹き飛ばした。
もし彼女が来てくれなかったら――私は、きっと…。
救われた後、私は湯に浸かりながら泣いた。
汚れた気がして、何度も肌を擦った。
そのとき、美緒がそっと抱きしめてくれた。
「ごめんね。助けるのが遅くなって……ごめんね。怖かったよね……ぐすっ」
彼女は、私のために泣いてくれた。
何度も何度もヒールを唱えて、痣が消えるまで。
その光が、心の痛みまで癒してくれたんだ。
あのとき、私は決めた。
――この人に報いたい。
この人を、絶対に支えたいって。
※※※※※
あの後、私たちは試練を越えて、禁忌地リッドバレーへたどり着いた。
古代遺跡を拠点にしたギルド本部。
見たことのない魔道具の数々、暖かい空気、眩しい灯り。
全部が新しくて、全部が心地よかった。
ご飯も、部屋も、お風呂も。
初めて見る“紙”のやわらかさに、思わず笑っちゃった。
美緒の髪があんなにきれいな理由も、やっとわかったよ。
――あの子、ほんとにいい匂いするんだ。
でも、笑ってる美緒の奥には、いつも少し寂しさが見えた。
だから、ミネアとレリアーナと3人で、思い切って部屋を訪ねた。
迷惑かもしれないと思ったけど――
行ってよかった。
美緒は泣きながら『ありがとう』って何度も言った。
私たちも泣いた。止められなかった。
きっとあの時―――彼女は限界の手前だった。
あと少し遅れていたら……壊れてたかもしれない。
だから、今度は私たちの番。
美緒を守る。支える。
笑わせる。
それが――
彼女に救われた私たちの、約束なんだ。
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