お手伝い 5
見直しがあまり出来てないので、おかしなところがあれば、あとで直します。
真美が目を覚ますと、そこはベットの上だった。最近見慣れた天井をほわほわした意識の中でぼんやりと見つめる。薄暗い室内で誰かに呼ばれたような気がしたんだけどなと、思いながら身を起こした。
ふわっと大きな口を開け欠伸をしながら、両腕をあげて伸びをする。
「それにしてもいつの間に寝たんだろう。――食事してからの記憶がない」
着ている服は昨日のまま。着替えた様子はなし。ニックと約束した後片付けもした記憶なし。
あちゃーと、手で顔を覆った。
「おはようございます。マミさん」
横合いから声をかけられて、真美はビクリと体を揺らし声が聞こえた方角へと顔を向けた。ぼんやり&考え事をしていたとはいえ、全然全く気配を感じなかった。
「……あ、アニーさん?」
「はい」
「お、はようございます?」
混乱する真美に、アニーは心配気に眉を下げる。
「大丈夫ですか?まだ疲れが抜けきっていないようなら、今日はゆっくりなさいますか?」
その言葉に瞬きを繰り返し、マチルダに頼み込んだことを思い出す。
『仕事を手伝いたい』
そんな真美の願いに応え、マチルダは真美にアニーを付けてくれた。アニーは約束通り真美を起こしにきてくれたのだ。
彼女と共に、教わりながら仕事を、自分の出来ることを精一杯するって、自分自身に課した。しかも朝早くに起こして欲しいってお願いしたのは誰でもない私。
なのに何してるかな情けない。こうやって話が出来る人に会えたからなのか。それとも美味しい食事が出来たからなのか。気が緩んでる。緩みきっている。
真美はきゅっと唇を引き結び、パンッと音を立て頬を叩く。
勢いに任せ過ぎたのか、思いの外大きな音がなり、頬っぺたも痛かったが(涙目)しっかりしろ私。
「大丈夫です。よろしくお願いします」
何事もなかったかのように、ニコリと笑みを向ければ引き攣った顔でアニーが頷いた。
「――あ、服を用意しました」
そう言って差し出された服は、彼女たちが着ているお仕着せだ。メイドカフェとかで見るひらひらふりふりが付いた可愛らしい服ではなく、足首近くまである紺色のシンプルなワンピースに白いエプロン。頭にはヘッドドレスを付けて出来上がりだ。前ボタンになっていて、一人での着脱も可能なタイプ。胸元が少しだけスカスカ……余裕があるような気がするが、きっと気のせいに違いない。
「お手伝いは必要ですか?」
「大丈夫だと思います」
ニコリと笑う真美に一つ頷き、アニーは部屋の外で待っていますねと、部屋を出て行った。
残された真美はいそいそと着替え、顔を洗う。アホ毛がぴょんと跳ねていたが、気にする真美じゃない。ヘッドドレスを付けて髪の毛を後ろで結いお団子にした。結んでしまえばなんとでもなるのだ。部屋を出て扉付近で待っていたアニーと合流する。
「本来は城内の清掃やお洗濯がメインなのですが、城内の庭がとんでもないことになってしまっているので、総出で雑草取りに向かいます」
ああと、真美は腰あたりまで生えた雑草を思い浮かべる。
「私たちの割り当ては、厨房や洗濯場のある辺り一面です。元は畑や薬草園があった場所までなのですが……頑張りましょうね」
少しだけ遠い目をしたアニーが苦笑しながらそう告げた。
庭に出る前に渡されたのは軍手と鎌。魔法じゃなく手作業なんだって思ったのは内緒。
洗濯場にある扉から裏庭に出ると「じゃ、ちゃっちゃとやっちゃいますか」と、アニーがニコリと笑う。
「鎌を使用したことはございますか?」
「ないです」
柄の長さは40センチほど。刃の部分は刃こぼれ一つない。使い込まれた感のする鎌は良く手入れがされているのが分かる。
「では使い方をご説明致しますね」
アニーはそう言うと、軍手をした右手に鎌の柄を持ち左手で草を掴むと根元付近をザクッと切った。真美に良く見えるように何回か繰り返す。
「鎌は利き手で持ち、反対の手で草を持って下さい。根元に近い所に刃を当てて軽く引くだけで草が刈れます。――一度やって見せてください」
アニーに促され、真美は軍手をはめ鎌を持つ。左手で草を掴むと、言われた通り根元に近い場所に刃を当てて軽く引く。
ザクッと音を立てて草が刈れた。力は一切入れてない。怖いくらいの切れ味だった。
「大丈夫そうですね。怪我だけはされませんよう気をつけて下さいね」
「はい」
「では、マミさんはここを起点にあちらへ。私は反対側を攻めますわ」
真美は厨房へと向かう場所を指示され頷いた。
日はようやく登り始めたところだ。こんな朝早くから草刈り……なんて思うが、辺り一面を覆い尽くす青々とした雑草を見渡せば、それでも一日やっても終わらないかもしれないと途方にくれそうになる。
それだけ敷地が広いのだ。
これは、気合いを入れて頑張らねばと、真美は真剣な表情で雑草と向き合った。
ザクッザクッザクッ
軽快な音を立てて草が刈られていく。
ザクッザクッザクッ
一心不乱に草を刈りどんどんと前へと進んでいく。
草を刈る音。草を切る感触。が、楽しくて仕方ない。中腰になる体勢は少しばかり腰に負担が掛かるが、そんなことは知らぬとばかりに真美は突き進む。
「……さん」
集中力は元々あった。やる事、やらなければいけない事に対しての真美は猪突猛進。一切周りが見えなくなってしまう。
「……さん。マミさん!」
「うえっ?!」
ザクッと音を立てて草が刈り取られる。目を見開いて真美は声の方を振り返った。
驚愕の眼差しでアニーを振り返る真美に、アニーが慌てたように駆け寄った。
「大丈夫でしたか?怪我はしていませんか?」
言われて鎌へと視線を移す。鎌の鋭い刃が、真美の足から二センチほどの場所で止まっている。それを見とめ、真美はヒェッと声にならない声を上げた。
「良かった」
ホッと安堵の息と共にアニーがそう言った。
本当に良かった。背中に冷や汗を感じながら真美もホッとしたように息を吐いた。
「驚かしてしまい申し訳ありません。何度か声をおかけしたのですが、かなり集中されていたようですね」
「ごめんなさい。私、集中すると周りが見えなくなってしまって」
「存じ上げてはいたんですけどね」
「え?」
「ほら、ニックさんを手伝ってらした時、見てましたから。時々、ニックさんが話しかけてらしたんですよ?でもマミさんはかなり集中して皮剥きをしていて、気付いていられないようでしたので」
「マジか」
最悪だ。私、ニックさんを無視してたんだ。うわー
「マジですよ」
アニーはクスクスと笑うと立ち上がった。
「そろそろ朝食の時間です。一旦手を止めて食堂へ向かいましょう」
アニーに促され立ち上がる。
「お腹空きましたね」
お茶目な笑顔でそう言ったアニーの声に答えるように、真美のお腹がグゥーーと返事を返す。
真美は顔を真っ赤にしてお腹を押さえた。




