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数学者1

 一方、その頃。

 学園を出て王都の街中に繰り出したエルフェイルは、密かにラウルたちの後を付け監視していた。

 休日で人通りが多いため、尾行する分には都合がよかった。逆に相手を見失うリスクもあったが、ラウルが人混みでも目立つ着ぐるみを被っているので問題はない。今は彼らに見つからないよう、植え込みの陰に隠れている状態である。


「あの女狐め……私のラウルをどうするつもりかしら。荷物持ちにするとは言ってたけど、それだけで済むとは思えないわ。もし手を出したりなんかしたら、全身を燃やしながらハチの巣にしてやるわ!」


 先導するエミリアは目的の店を効率良く回っていき、ラウルや周囲に対し特におかしなことをする素振りは見せなかった。

 そして数時間後、とある喫茶店に入店した際、意図的かどうかわからないが、外からは見えない位置のテーブル席に座ったようだ。今まで何もなかったとはいえ、この後については予断を許さない状況である。


「お姉さま。考えすぎだと思いますよ……」


 胡乱気な顔をしたシルヴィアが溜息混じりに呟く。実際に口に出しはしないものの、「何故私がこんなことを」と心中で嘆いていた。

 自室で真面目に勉学に励んでいたところを、姉のエルフェイルに強引に連れ出されたのである。お陰で貴重な休日が潰れてしまった。

 この鬱憤は、犬の着ぐるみなんて変な格好をしているラウルの奴にぶつけてやりたい、と半ば衝動的にシルヴィアは思い立つ。

 また、彼女は彼女で非常に有効なストーキングスキルを所持していた。

 光の精霊魔法で自分たちの姿を隠匿したり、数十メートル先の映像を遠隔で垣間見たりできるのである。姉の要請で第三者にも見えるように空中に映像を投影したりと、尾行の際には結構な重労働を熟していた。


「ハァハァ……趣深い。これがNTRというやつか。あの店で一体どのような饗宴が行われているのやら……」


 袴姿のアカネが、若干顔を赤くしながら息を荒らげる。

 エルフェイルとシルヴィアが尾行している最中、どこからともなく現れて監視活動に加わったのだ。一人で妙に興奮しているが、大声で騒ぐでもないので今までずっと放置していた。

 エルフェイルが眉を顰める。


「ところで、なんでアカネは呼んでもないのにここにいるのよ? 校門を出たときにはいなかったわよね」

「これは異なことを。本日彼女たちが連れ立って買い物をすることは、昨日の試合前に聞き及んでいた。走り込みによる鍛錬がてら、街中でそれらしい所を巡回していたのだ。持ち分に差があるとはいえ、ラウルは我々の共有物ではないか。わたしにも鑑賞する権利があるはずだぞ」

「不謹慎ね。何を鑑賞する気よ?」

「それは勿論、ナニ――って、言わせんなよ!」


 二人がつまらない掛け合いをしていたところ、喫茶店のドアが開いてエミリアたちが外に出てきた。

 ラウルは相変わらず犬の着ぐるみを被っているが、背中や両手に満載していた荷物がなくなっていた。おそらく店に預けたのだろう。

 それはいいとして、喫茶店に入る前とは違い、二人の距離が驚くほど近かった。というか腕を組んでいる。

 ピキッとエルフェイルの蟀谷に血管が浮いた。


「へえ、そう……少し見ない間に、別の女に尻尾を振る犬畜生に成り下がったってわけね。これはもう、去勢するしかないわね」

「お、落ち着いて下さいお姉さま! いくらなんでも短絡的過ぎます!」

「……そうね。私としたことが順番を間違えたわ。まずはあの泥棒猫を血祭りにあげなくちゃ。首を狩って手足をもいだ後に、ラウルの大事な部分をもがないといけないわ。突然の事態に慌てちゃったわね。反省しないと」

「怖っ!?」


 エルフェイルの剣幕に、シルヴィアが恐れおののく。


「でも、私の銃じゃ去勢するのに不適当だから、アカネ、あんたの刀を貸しなさいな」

「むおっ! わたしの愛刀をそのようなことに使われては、色んな意味でお嫁に行けなくなってしまうぞ! ハァハァ」

「こっちは別の意味で怖っ!」


 彼女らの遣り取りの合間にも、エミリアたちは歩を進めていく。

 どうやら行先は街中ではなく、郊外方面のようだ。

 三人は尾行を再開するが、その途中で行く手を壁に阻まれた。道の真ん中で、文字通りの壁に。


「なんでこんなところに壁があるのよ。道が塞がれてるじゃない!」

「跳び越えればよかろう。身体強化をすれば、大した手間でもなかろうに」

「でも、あまり目立つようなことをしたら見つかっちゃいますよ? 一人ならともかく、三人ともなれば相手の目に留まるかと」

「なら、シルヴィは光魔法で誤魔化して。グズグズしてたら見失っちゃうわ」

「ええと、さっきから私の負担が大きいような……だったら大人しく道を迂回したほうが……」


 などと言い合っている隙に、エミリアたちとは距離が離れてしまい、慌ててエルフェイルたちは追いすがる。その後も距離を詰めようとするたびに壁などの障害物が唐突に現れ、三人は話しかけられるような位置にまで近付くことができなかった。

 やがてエミリアたちは、郊外にある森林地帯へと足を踏み入れていく。周囲に人の気配はなく、エルフェイルたちはより慎重に後を付けていった。


「……おかしいわね」


 ふとエルフェイルが疑問の声を上げる。


「ん? それは、いきなり外でイタそうとすることがか? 青姦くらい珍しくもないだろうに。わたしの故郷では――」

「私が悩んでいるのはそんなくだらないことじゃないわ! そうじゃなくて、冷静に考えてみれば、ラウルの格好が絶対におかしいことに気付いたのよ」

「お姉さま。別に冷静に考えるまでもなく、あれを一目見て、おかしいという感想が浮かぶのは普通だと思いますが」


 妹の指摘に、エルフェイルは首を横に振った。


「確かにあの着ぐるみはおかしいけど、そこじゃないわ。ラウルが、師匠であるイーシア様から預かったフレスベルグを、今は装備していないのが有り得ないって言ってるの!」

「ええと、学院に置いてきたのでは……?」

「買い物をしている際、腰に佩いていたのを確認してるわ。それはつまり、喫茶店に剣を置いてきたということ。浮気するのは百億歩くらい譲って起こり得るとしても、大切な剣を持たずに店の外に出るなんてのは、剣士としても魔女の弟子としても有り得ないわ!」

「だが、店の人間や第三者に預けたという線もあるのではないか? そこまで気にするほどのことか?」

「……取り敢えず、ラウルに直接問い質すしかないわね。――ちょうど足を止めたようだし」


 見れば、エミリアとラウルは繋いでいた手を離して立ち止まっていた。

 そこは、百平方メートルくらいある、森の中にも関わらず不自然なくらい開けた場所だった。その中央付近で、後方へと向き直ったエミリアが声を張り上げる。


「拙くて下手糞な尾行は止めて、さっさと出てきたらどうかしら? エルフェイルとそのお仲間さん」

「っ!」


 エルフェイルは一瞬肩を震わせると、木々の間から歩み出て姿を現した。アカネとシルヴィアも後に続く。


「エミリア、いい度胸ね。私の婚約者に手を出すなんて……以前警告したはずだけど、どうやら理解できなかったようね、この泥棒猫!」


 エミリアを罵倒したエルフェイルは、次いでその隣に立つ着ぐるみを睨みつける。


「ラウルもラウルよ! これ見よがしにそいつと腕なんか組んじゃってさ。私のことなんてもうどうでもいいってわけ!?」

「…………」


 ラウルからは何の反応もなかった。返事はおろか、身動き一つない。

 エミリアが嘲笑する。


「アハハハハ。おバカさん。理解してないのは間抜けな貴女の方よ。自分が今どんな状況にいるのか、ね」

「何ですって……?」

「予想通りではあるけれど、こうも順調だと拍子抜けするわね。私にとっては雑種の一匹に過ぎないのだけど、そんなに貴女にとって魅力的なのかしら? ここにはいない駄犬(・・・・・・・・・)のことなんかが」


 訝しがるエルフェイルを無視して、エミリアは徐に隣の着ぐるみに手を伸ばす。チョンと指で押すと、それは重力に従って地面に倒れてしまった。

 衝撃で頭の部分が外れ、空っぽの中身が剥き出しになる。


「な、着ぐるみが空だと? これは一体どういうことだ!?」


 後ろで見ていたアカネが驚きの声を上げる。


「途中ですり替えた? いえ、でも手は組んでいたけど、確かにその着ぐるみは直前まで自力で歩いていたはず。どんなトリックを使ったっていうの……?」


 シルヴィアが首を捻っていると、ようやくエルフェイルが状況を理解し、再起動を果たした。


「ラウルが、いない……? エミリア、あんたラウルをどこにやったの!?」

「さっきの喫茶店に置いてきたわ。睡眠薬で眠らせてね。今頃は『悪魔神官』の奴が粛々と回収してることでしょうね」

「悪魔――神官――」


 エミリアの告げた台詞に、エルフェイルの顔色が一気に蒼白になった。


「あ、あんた、まさか『アプレンティス』の……!」

「あら、ようやく気付いたの? なら、一応名乗っておこうかしら。私の本名・・はエミリア・デュカキス。アプレンティスのナンバーズ第十席、通称『数学者マセマティシャン』よ」

「第十席……数学者……?」


 エミリアが名乗った数学者という名は、エルフェイルにとっては初耳だった。恐らくここ数年の間に就任した若手なのだろう。

 だが、エミリアが言及した悪魔神官という名には聞き覚えがあった。


(悪魔神官……ナンバーズ第四席。そんな奴がラウルを……!)


 エルフェイルは強い自責の念に駆られた。

 やはりラウルとエミリアを二人きりにするべきではなかった。常に自らの監視下に置けていれば、こんなことには……

 いや、違う。結局のところ、エミリアの口車に乗って、ラウルを賭けの対象にしてしまったのが最大の過ちなのだ。

 それが原因で、ラウルは拉致され、自分たちはまんまと郊外に誘い出されてしまった。

 己の失態を悔やんだエルフェイルは、唇を引き結び、両手に構えた二丁拳銃の銃口をエミリアに向ける。


「アカネ、シルヴィ。今すぐ喫茶店に引き返して! 二手に分かれて、学院にいるイーシア様にも連絡を――」

「待ちなさい、エルフェイル。浅はかね。どうして私があっさり正体を明かしたと思ってるの? 今更手遅れだし、そもそも貴女たちはここから逃げられないわ。事前に、この地に結界を張れるよう準備しておいたのだから」

「っ――」


 一番後方にいたシルヴィアが、エミリアの様子を確認しながら徐々に後退していく。しかし、開けた土地と森の境目に到達した次の瞬間、バチッという大きな静電気のような音と衝撃が発生した。

 シルヴィアに大した痛みはなく、結界の反応的に脱出が不可能であるとは思えないが、少なくとも片手間で破壊できるような代物ではないはずだ。エミリアもそこで傍観したままでいるはずもない。彼女たちが逃走することをそう簡単に許しはしないだろう。

 エルフェイルが苦々しい表情で舌打ちする。


「エミリア、どうしてこんな真似を? ワルプルギスでの戦いからして、あんたは魔術師ではなく精霊契約者のはずでしょ!? それなのに、アプレンティスに与するなんて信じられないわね。あんたの契約精霊も我が身の不幸を嘆いてるわよ!」


 動揺した心を落ち着かせようとしてか、エルフェイルは強めの非難をエミリアに浴びせる。が、そうした弱気な精神や虚勢は見透かされているようで、エミリアはただ冷笑を浮かべていた。


「そんなつまらない台詞しか吐けないの? エルフェイル。生憎、私の契約精霊にまともな自我はないから、アプレンティスへの所属に何も問題はないわ。それに貴女に私の事情を話したところで理解できないでしょうね。あの方の――大魔術師様の偉大さは」

「……は……?」


 エミリアの口から聞かされた名称に、エルフェイルは今度こそ絶句してしまう。

 大魔術師――エルフェイルの師匠である『殲滅の魔女』にとって因縁深い相手だ。いや、そもそも昨日の試合の賭けの際、言うなれば出汁にされた存在である。アプレンティスのナンバーズであるエミリアが、彼について言及したとしてもおかしくはない。

 だが先ほどのエミリアの口振りは、ただの同じ組織の同僚という関係だけとは到底思えなかった。


「……っ、そうか。あんたが私によく突っかかってきたのは、それが理由? 私が、シャーロット様の弟子だから!」

「あら。突っかかってきたとは人聞きの悪い。私は単に実力を知りたかっただけよ。大魔術師様を弑そうとしている、殲滅の魔女の弟子の実力をね。私はあの方を敬愛している。愚者だらけのこの世界で、唯一見出した希望の光。私と同じ景色を見られる限られた存在。その大魔術師様を煩わせる一味、その末席である炎銃姫と呼ばれる者の実力を見せてもらったのだけど――正直お話にならなかったわね」


 己の上司である大魔術師を褒め湛えていたエミリアは一転、嘆息しつつ肩をすくめる。

 エルフェイルの柳眉が僅かに吊り上がった。


「へえ……言ってくれるじゃない。一年以上学院に潜入して、得た結論がそれ?」

「事実よ。だって、魔力をセーブしていた私に負けるくらいだもの。制限がなくなった今の私に負ける要素は一つもないわ。エルフェイル、貴女は学生レベルでは上位でも、魔女やナンバーズ相手には到底及ばないわ。ま、工作員である変異者クラスの輩ならどうにか倒せるのかもしれないけど――」

「はあ!? お姉さまが弱いですって!?」


 と、シルヴィアが不意に会話に割り込んできた。


「訂正しなさい! 今までに何度も最前線で、魔物や魔術師と戦ったことのあるお姉さまが弱いだなんて、そんなバカなこと有るわけないわ! 昨日の試合だってどうせ、魔術や何かを使って不正をしていたに決まってる! だってそうでないと、お姉さまが一対一で同じ年齢の精霊契約者相手に後れを取るなんてこと、有り得ないもの!」


 思わず黙っていられなかったといった様子のシルヴィア。その姉への擁護を聞いたエミリアは失笑する。


「フフ、お可愛いこと。まるで生まれたばかりの仔猫ね。それとも、大空の広さを知らない雛鳥かしら」

「な――」

「一々反論する気も起きないけど、貴女が言った内容はほとんど願望と感情論でしかないわね。その程度の浅い理解での反駁に価値などないわ。付け加えるなら、精霊契約者は魔術を使えない――いえ、厳密には使う意味がないわ。精霊によっての付いた魔力は、基本的にその系統の魔術にしか使えないもの」


 それはつまり、例えば火属性の精霊と契約した精霊契約者は、火系統の魔術しか扱えないということである。

 魔術の利点は多種多様な性質の現象を発生させることであり、精霊魔法と同系統の魔術しか扱えないのであれば、わざわざ魔術を使用するメリットが存在しない。精霊魔法の方が威力や魔力効率の面で優れているからだ。

 別系統の魔力で魔術をまったく使用できないわけではないが、かなりの制限がある。ラウルの持つフレスベルグにしても、現時点で身体強化と魔力障壁といった基本的な魔法しか使えないのはそれが一因だった。


「それと、あともう一つ。私は精霊契約者じゃないわ――魔女よ」

「!?」


 衝撃的な発言をしたエミリアは、無造作に掛けていた眼鏡を外した。

 次の瞬間、エミリアの見た目が急速に変化する。金髪は若干赤みがかり、容貌は数年ほど年輪を重ね、身体つきも成長し、いきなり二十代前半くらいの容姿になった。


「その姿は――」

「見ての通り、姿を偽装していたのよ。この魔道具で。とは言っても、ちょっとした髪の色と年齢だけだけど」


 エミリアはつまらなそうに肩をすくめた。


「人は多くの場合、他人の姿を必ずしも正確に覚えているわけではないわ。だから、ちょっとした変装程度でも大きな効果を齎すのよ。変異者みたいに肉体ごと作り変えるなんてのはやり過ぎね。どう考えても非効率だわ」

「なんと面妖な……ふむ。あの道具さえあえば別人になりきり、露出願望を満たすことも容易になるか……」

「え? このシリアスな場面でちょっと何言ってるのこの人」


 アカネたちの遣り取りは無視し、エミリアは話を続ける。


「私の実年齢は二十五歳。魔女だから二十歳くらいの見た目で止まってるけど、貴女たちとは十年近い差があるわ。魔女としてはまだまだ新参者。魔女にとって若さは自慢にならないから、多少面映ゆくはあるけど、貴女たちより格上なのは間違いないわね」

「ちょっと待ちなさい。アプレンティスの魔女が、学院に生徒として潜入してたですって!? そんなバカな話があるの!? 学院に通う精霊契約者の一人が、アプレンティスと通じてたっていうのとはわけが違う。普通に考えて、学院の教師陣、ましてや学院長やイーシア様が気付かないわけないわ! いくら見た目を変えていたって、気配や魔力で魔女だと判別することができる。それを一年以上バレずに過ごしてたってことは――」

「さっきも少し言ったけど、魔力を一部封印していたのよ。別の魔道具を用いて、魔女だとバレずに精霊契約者として許容できる範囲までね」


 何でもないことのように告げるエミリアに、エルフェイルは思わず目を剥いて叫んだ。


「それが有り得ないって言ってるの! もしバレたら、封印を解く間もなく問答無用に攻撃されるかもしれない状況にいたのよ!? しかも、生徒会室は学院長室と近い位置にある。なのに、そんな状況で一年以上も過ごしたなんて信じられない。どこか頭がイカれてるんじゃないの」

「酷い言い草ね。この魔道具は大魔術師様の謹製。万が一にも不具合などないわ。でも、それは否定できないかもね。貴女たち常人・・と私は頭の中身も構造も違うもの。そんな貴方たちの後ろ盾である『魔女連盟』が我々から技術を盗み、フレスベルグという武器を製造したのが一連の事件の発端よ。元々情報収集のためにルベイエールに潜入してた私が、大魔術師様からの指令を受けて今回こうして動いたのだから」

「やっぱり、ラウルのフレスベルグがあんたの目的だったのね……でも、アプレンティスから技術を盗んだ? それについては初耳だけど、だとしてもラウル自身は関係ないはずよ。今すぐ解放しなさい!」

「どうして?」


 エミリアは小首を傾げた。


「知ってるわよ。あの野良犬が、かの有名な剣の魔女の弟子であることくらい。ただのモブならともかく、関係者である以上、見逃す理由はないわよね? 今はフレスベルグを調査する一環で生かしてあるけど、最終的には処分されるわ。まあ殺すか、奴隷にするか、実験動物にするか、くらいの選択肢はあるでしょうけどね」

「貴様!」


 戦意を昂らせるエルフェイルに対し、エミリアは両手を広げて微笑みかける。


「これはあくまで余禄よ。本業の任務が終わった後のね。さあ、エルフェイル。ここで貴女が負けたら、貴女と一緒に婚約者が死ぬわ。三人掛かりで構わないから、かかってきなさい」

「……そうね。あんたをぶちのめした後、ラウルの身柄と人質交換といきましょうか」


 エルフェイルはレーヴァテインを構え直す。

 敵は魔女だが関係ない。自分の命は元より、ラウルの命が懸かっている。絶対に負けるわけにはいかない。


「私の婚約者に手を出した罪、その増上慢共々後悔させてあげる!」


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