表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/59

首位決戦2

「所定の時間になりました。これより試合を始めます。双方、礼!」

「「「よろしくお願いします!」」」


 主審の合図と共に、「テンペスト」と「ソードダンサー」のメンバー同士で挨拶が交わされる。ただし、ラウルたちは気合の入った挨拶である一方、エミリアたちは形ばかりのものだったが。

 フィールドの各所に散っていく選手たちに向け、観客席から幾つもの声援や怒号が飛ぶ。その声量は、今日行われた試合の中で最も大きい。

 時間の関係上、ヘキサクロスの一・二戦目は複数の試合が並行して行われることが多いのだが、三戦目は必ず一つのピストのみで行われるため、全ての観客がその試合に注目することになる。そして、首位チームと次点チームの直接対決であるこの試合は、今日の一番最後に予定されていた。

 今日も両チーム共に連勝している中、交流戦前の試合日程も半ばを過ぎていることや、試合が終わった選手が続々と観客側に回るということもあり、本日一番の盛り上がりを見せていた。


「――さて。まずは様子見かしら」


 自陣後方に移動したエミリアが、お手並み拝見とばかりに相手の様子を窺う。

 ラウルやエルフェイルは迷いなく動き、所定の位置に陣取る。それらのメンバー構成や陣形を観察したエミリアは、ほぼ正確に彼らの狙いを読み取った。


(成る程。そうきたのね)


 ラウルたちの配置は、四人の前衛を一列に並べ、トップ下にエルフェイル、フルバックにタチアナを置いた丁字型のフォーメーションだった。

 前衛はラウル、アカネ、ラスティ、アリーシャが務めている。シルヴィアはともかくリーゼロッテまで抜けたのは、前の二戦での消耗が大きかったことと、エミリアとの相性からだろう。

 以前リーゼロッテがラウルたちと戦った際、シルヴィアの短剣によって、後方からの援護射撃を邪魔されている。シルヴィアより狙いが正確で手数も多いエミリアとは、間違いなく相性が悪い。万全の状態ならまだしも、既に疲弊している状態では、別の選手と交代するのが妥当だろう。

 特筆すべきは、総大将となるクラウンがタチアナではなくエルフェイルであるということだ。これは、基本的なセオリーから逸脱している。

 彼らの陣形から考えられる戦術は、前衛が相手側の選手とぶつかったところで、トップ下のエルフェイルがフレキシブルに動き、局所的に二対一といった有利な状況を作り出して各個撃破を狙うというものだ。

 つまり、彼らの中でキーとなるのはエルフェイルであり、エミリア側にとっての優先目標もエルフェイルということになる。故に、わざわざ退場で即敗退となるクラウンに任命する必要性はない。というより、本来一番避けるべきポジションのはずなのだ。

 まあ、見方を変えれば、エルフェイルが撃破されたらどうせ負けだと割り切っていると言えなくもないが――


(……いえ、これはおそらく挑発ね。倒せるものなら倒してみなさいっていう意思表示かしら)


 ふとエルフェイルを見やる。と、目が合った。

 いつかの意趣返しか、彼女はエミリアに対して親指を下に向け、鼻で笑うような仕草を見せた。


「へえ、いい度胸じゃない」


 僅かに顔を顰めたエミリアは、スッと手を挙げて仲間たちに指示を出す。


「プランE、フォーメーションΔ(デルタ)に変更。フェリシアはD1に移動」

「「「ハッ!」」」

「……は、はい」


 メンバーの中でフェリシアが一人だけ返事が遅れてしまったが、これは彼女の判断力や理解力が劣っているというわけではない。


 フェリシアが、言われた通りに後方へと下がり、本来エミリアがいることが多いフルバックの位置へと移動する。代わりにエミリアはその数歩前方に移動し、残りのメンバーはエミリアを基点としたV字型の陣形を取った。

 端的に言えば、これはエミリアの投剣攻撃を十全に活かせるようにした陣形である。単純な援護ではなく、敵に積極的に攻撃できるよう射線が広く取られている。

 だがその代わりに、本来前衛であるはずのフェリシアは一番後方の配置となり、キューブを守るだけの置物のような役割になっている。フェリシアが戸惑い気味に返事をしたのも無理からぬことだ。

 一方、そのフェリシアの前に佇むエミリアだが、そこは自陣の後方ながら、前方には壁になるような味方の選手が誰もいない。敵がその気になれば、中央の位置からエミリアに直接攻撃することすら可能である。


 防御を捨てて攻撃へと振り切った形の陣形を見て、今度はエルフェイルが顔を引きつらせる。

 互いに殴り合いを意図したような展開に、闘技場の観客席からどよめきが巻き起こる。

 喧騒の中、エルフェイルはラウルに後ろから近づくと、何事か耳元で囁いた。一瞬驚いたような顔をしたラウルが、エルフェイルと目を合わせてゆっくりと頷く。エルフェイルはそのままラウルの肩に手を置いて待機すると、試合開始のホイッスルが鳴った瞬間、二人とも前方に勢い良く飛び出したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ