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ソードダンサー4

 そこからは特に波乱もなく試合は終わった。

 チームの主力だったカトレアたち三人が一気に退場してしまったのだ。残った選手たちの士気は崩壊し、大した抵抗もなく退場する運びとなった。唯一、フルバックの氷精霊使いが散り際に構築途中の精霊魔法をぶっ放してきたが、狙いも甘く威力も不十分であったため、勝敗自体には何も影響を及ぼさなかった。

 注目の試合が終わり、観客席の一角は大いに沸いているが、残りの大部分は水を打ったようにシンと静まり返っていた。今シーズンの学内で上位に位置するチーム同士の対戦でありながら、途中からほぼ一方的な展開になってしまった。

 つまり、それくらいエミリアたちの実力が抜きんでているということだ。

 ヘキサクロスの参加者で、この一戦を見て暢気に大騒ぎできる選手はいないだろう。今騒いでいるのは、ヘキサクロスに参加していない一学年の生徒が中心だ。


 ラウルとしては、エミリアたちが凄いのは理解できたのだが、何がどう凄いのかまではよくわからなかった。ただ、エルフェイルの何とも言えない渋い表情を見れば、試合の内容が自分たちにとってあまり好ましくないことくらいはわかる。

 それも当然か。来週には、ラウルたちは全勝中の彼女たちと戦わなければならないのだから。

 実際のところ、試合の結果自体はラウルたちにとって決して悪いものではない。

 全勝チームはそのままで、ラウルたちと同じ勝ち数のチームが負けたのだ。上位三チームがインターリーグに進めるというレギュレーションであるため、枠を争う直近のライバルが一歩後退した形となる。むしろ、全勝のエミリアたちが負けて混戦模様になるほうが不都合なくらいである。

 ラウルの隣で、エルフェイルの眉間の皺が深く刻まれる。


(エミリアは、カトレアたちが切り札であるバーストストリームアタックを使ってくるのを最初から読んでいた――いえ、どちらかというと使うように仕向けていた。その上で攻略法を繰り出し、冷静に対処して見せた。少なからずプレッシャーの掛かる公式戦なのに、まるで老練な用兵家のように落ち着いている……あいつは一体どれだけの場数を踏んできたというの?)


 そうした客観的な事実を抜きにしても、エミリアの傑出した実力と試合運びには驚嘆せざるを得ない。エルフェイルとしては警戒心を通り越して嫉妬心すら覚えるほどだ。

 精霊魔法が特別強力と言うわけではない。単純な破壊力だけで見れば、むしろエルフェイルの方が分があるだろう。

 それでも後方からの指揮能力とサポート能力が抜きん出ているため、チーム単位としては破格の強さとなるのだ。

 正直、どう戦術を組み立てても読まれる気しかしない。とはいえ、今のエルフェイルたちに取れる選択肢は多くなかった。


(リーゼロッテ先輩に任された以上、何とか取っ掛かりを見付けたいけど……)


 エルフェイルが思案に耽っていると、ピストにいるエミリアと不意に目が合った。


「? こっちを見た……?」


 エルフェイルが訝しんでいると、エミリアの視線が横にスライドする。そして、嘲るように鼻で笑った。

 その行為の意味を悟り、エルフェイルの両肩が小刻みに震える。


「……そう。バカにしたってわけね。私を、ラウルを。へえ……そっちがその気なら、やってやろうじゃない!」

「どうした、エルフィ?」


 横にいたラウルが呼びかける。しかし、その声は届かなかったようだ。

 エルフェイルは遠目にエミリアを睨みつけながら吐き捨てた。


「見てなさい。その澄ました顔、絶対に苦みばしったものに変えてやるわ!」


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