ソードダンサー2
途中でミーティングを切り上げたラウルたちは、闘技場の観客席に来ていた。
リーゼロッテだけは用事があるとのことで同行していないが、その目的は、本日の終盤に行われるあるヘキサクロスの試合を見学するためであり、別にさぼっているわけではない。
他にいる観客たちの目当てもそうなのか、闘技場に幾つかあるピストの一つに彼女たちの目は釘付けだった。
「ちょうどこれから始まるようね。一位のチームと二位タイのチームとの大勝負が」
エルフェイルの呟き通り、それから間もなく審判の教師が試合前の口上を述べる。
「これより『ソードダンサー』と『ロック・アンド・ミニオンズ』の試合を開始する。双方、礼」
「「「お願いします」」」
互いに向き合って頭を下げた選手たちの中に、ラウルが見覚えのある人物がいた。
「エミリア・ランカスター……!」
金髪で眼鏡を掛けた端正な容貌の女性。だが、相手を睥睨するかのような冷めた視線は相変わらずだった。
エミリアの前にいるのは三人の女性である。三人とも女にしては上背があり肩幅が広く、がっしりした体格をしている。
彼女たちは揃って腕を組み、エミリアに対しニヤついた笑みを向けていた。
「いい気になるなよ、二年の小娘。貴様の連勝街道もここまでだ」
「貴様の小賢しい策なんぞ、我らには通用せん。圧倒的な肉体とパワーというものを見せてやろう」
「今のうちに精々短い栄華を楽しんでおくのだな。この試合が終わった後には、我らと貴様との立ち位置は逆転しているのだから」
言いたい放題に煽ってくる三人に、エミリアは小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「くだらないわね。本当にくだらないわ」
「なに?」
「威勢のいい言葉を吐いておきながら、結局のところ、自分たちが勝つという根拠が何もない。本質的には、犬や猫の鳴き声と変わらないわ。それに私とあなたたちのチームの差は二勝なのだから、仮にそちらが勝っても順位は変動しないわ。まさかそんなことも理解していないというの?」
「ぬぐ、っ……」
逆にエミリアに言い返され、三人の女性は顔を真っ赤に紅潮させる。
「貴様ァ! 二年の分際で生意気な!」
「その余裕ぶった顔、必ず後悔させてやる!」
「いい気になりやがって! 後悔するなよ!?」
動揺したのか、捨て台詞を一部被らせつつ、三人はそれぞれフィールドに散っていった。
残されたエミリアもまた、彼女たちの背を一瞥した後、所定の位置へと向かう。
「――エミリア様」
「フェリシア、どうしたの?」
黒髪にリボンを着けた、同じチームに所属するフェリシアからエミリアは呼びかけられる。
「あのような俗物、貴女様が相手をする価値などありません。私にお任せ頂ければ、すぐにでも排除して御覧に入れます」
と、手に持つ等身大のバトルアックスで床を叩いて見せる。
エミリアは小さく肩をすくめた。
「血の気が多いわね。意気込みは買うけど、フェリシアは私の指示通り動いてくれればいいのよ。それで十分事足りるわ」
「ハッ」
「それに、あんなのは野良猫がニャーニャー喚いてるのと同じよ。本物の野良猫よりは多少マシな服を着てるみたいだけど、私にとって無価値という点では何も変わらないわ。路傍の石と同列の存在ね。精々、あと数分の短い付き合いを楽しみましょう」
何の衒いもなく辛辣過ぎる言葉を吐くエミリアに、それが本心からのものであると直感したフェリシアは、思わずぶるりと背筋を震わせた。
エミリアは、気楽な様子で自分の担当するポジションへと歩いていく。
「さて、それじゃ全員配置について。物事は効率よくスマートに処理しないといけないわ。計画通りに行きましょう」




