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決戦前1

「ごめんね、お役に立てなくて」


 食堂での一件から二日後。

 エルフェイルとリーゼロッテがその後の交渉で細々とした部分を詰め、それぞれヘキサクロスにおける最低人数の六人チームで戦うことになったのだが――


「いえ。無理を言ってるのはこっちのほうなので」

「そうかい? じゃあリーゼ君との試合、頑張ってね。応援してるから」


 手を振りながら去っていくキャシーを見送り、ラウルは嘆息する。

 現状、決定しているメンバーはラウル、エルフェイル、アカネ、シルヴィアの四人で、あと二人集める必要があった。

 他の三人も手分けしてメンバーを探しているようだが、状況は芳しくない。新入生であるラウルやシルヴィアは元より、エルフェイルとアカネもお世辞にも交友関係は広くないからだ。

 そして、対戦相手であるリーゼロッテが学院でもトップクラスの実力者であり、かつ公爵家の令嬢であることも大きい。

 エルフェイルたちの手助けをしてもし彼女の不興を買うことになったら、と危惧する者は多く、また中には平民出身ながら高名な魔女の弟子に選ばれたエルフェイルに妬心を抱く生徒も存在した。

 そうした側面以外にも、このチームにはラウルやシルヴィアといった、ワルプルギスにおいて敬遠されるメンバーが参加しているという不安材料がある。

 エルフェイルやアカネといった優秀な生徒とチームを組める利点はあるが、決闘に敗北すればエルフェイルが引き抜かれるため、実質的にはあまり意味がない。

 また一時的な助っ人を頼もうにも、シーズン開幕前の貴重な時間を、自分とは無関係の試合のために割く生徒などそうそういるはずもない。実際、貞操の危険を感じながらも、ラウルは数少ない知り合いであるキャシーに頼んだが、見事に振られてしまった。


(しょうがない。ダメもとであの人にも当たってみるか……)


 ラウルはそもそも決闘にあまり乗り気ではないのだが、エルフェイルとシルヴィアの二人が別々のチームになるのは可能な限り避けたいとは思っている。必死とまではいかなくとも、心当たりに相談するくらいはやってやろうという気概はある。

 ラウルはもう一度嘆息すると、通りすがりの生徒に道を尋ねながらある場所へと向かった。


**


 生徒会室に辿り着いたラウルは入り口の扉をノックする。

 入室を許可する旨が聞こえた後、意を決して中に入ったラウルは早速後悔した。


「それで、私に何か用かしら? 野良犬君(・・・・)

「……っ」


 眼鏡を掛けた金髪の女性――エミリアから見下したような視線を受け、ラウルは思わずたじろいだ。


「いやその、厳密には生徒会長であるアリーシャさんに話があるんですが……」

「残念だけど、彼女は所用で留守にしているわ。それくらい見ればわかるわよね?」

「そ、そうみたいですね。仕方ないので出直してきます」


 そそくさと退室しようとするラウルの背に、エミリアから声が掛けられる。


「そういえば、数日前に貴方の連れが食堂で騒ぎを起こし、上級生と試合をすることになったのよね。大方、足りないメンバーの勧誘にでも来たのかしら?」

「あ――ええと、はい。実は……」

「愚かしい」

「……は?」

「愚かしい。実に愚か。無知蒙昧にも程がある。所詮は猿の――いえ、野良犬の浅知恵ね。生徒会長であるアリーシャにくだらない雑事に割く時間などありはしないと、そんな簡単なこともわからないのかしら」

「…………」


 エミリアから散々に罵倒されるラウル。

 幼馴染のエルフェイルの場合は、罵声の中にも照れだったり親しみの感情が含まれていたりするが、エミリアからは悪意と冷たさしか感じない。

 ラウルが悔し気な表情で歯噛みしていると、エミリアは顎に指を当て淡い笑みを浮かべる。


「とはいえ、折角野良犬が生徒会室まで足を運んだわけだしね。手ぶらで帰すのもなんだし、解決策を提示してあげるわ。活かせるかどうかは貴方次第だけど」


 親切心や温情というよりは、これからラウルがどう立ち回るか興味があるといった様子である。

 他に当てがないラウルは、結局エミリアの気紛れに不本意ながら従うしかなかった。


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