治療実験
「熾天使様。朝でございます。」
「ん?あぁ。おはよう。」
「おはようございます。先程、フォラス様がいらっしゃいました。朝食後で構わないそうなので、朝食を済まされましたら客間に来ていただけますか?」
「ああ、わかった。」
フォラスさんを助けてからというもの、俺の扱いは最早神様と同義とも言える。名前は捨てなくていいと言われ、ただ形式としてコードネームをもらった。熾天使。最高位の天使で、神に最も近いとも言われている。キリストの誕生をマリアに告げたガブリエルもこれに当たる。
俺はロサンゼルス郊外にとてつもなくデカイ屋敷をもらった。元々、フォラスさんが住んでいたものらしく、彼が本部のあるニューヨークに居を移すことになったらしく、そのまま譲り受けた形だ。
勿論、ベットなどは新品に変えたが。
ここには可愛いメイドたちがいる。執事もいる。俺はぐうたら過ごしては、彼女たちから世話を受ける。皆、日本語教育を受けているのか、楽でいい。
朝食を済ませた俺は、客間に向かった。そこでは、ライオネルさんとフォラスさんが真剣に何かを話し合っていた。
「遅くなって申し訳ない。フォラス殿。」
「いえいえ、こちらも急に来ましたのでな。それで、セラフィム様。今回はお願いがあってまいりました。」
「ボスの娘さんを助けるための事前策として、五人の重篤患者を助ける話ですか?」
「!?」
「申し訳ない。私の耳は、人一倍地獄耳でしてな。この屋敷内で話していることならば、意図すれば聞こえてしまうのですよ。」
「…凄いな。あなたの前では密談も意味をなさない。それでしたら、話が早い。それで、いかがでしょうか?」
「報酬はどうなるのですか?そこまでは話しておられなかったので。」
「本当にきいておられたのですな。」
「それで?」
「ボスは、大幹部の地位を用意しておられます。勿論、準構成員として、裏役として表舞台には出ない。それも上納金も不要とのこと。」
「大盤振る舞いだな。」
「それだけ大事だということです。」
「まぁ、いいよ。それで俺が動きやすくなるなら。護衛とか欲しいし。組織内でも狙われたくないしな。いつからやるの?」
「とりあえず、一人目は既にこちらの息のかかった病院に呼んであります。可能でしたら今からでも。」
「じゃあ、行こうか。道すがら相手のこと教えてよ。」
「今回治療していただくのは、セーレ。美男子で、我らカルネフィセのフロント企業の一つである美容品を製造・販売している大企業の次期社長です。現在は、専務取締役。依頼は、父親の現社長からです。」
「助けたら、そこの商品とかもらえるの?」
「ほしいのでしたら、毎月お届けするように伝えておきます。」
「なら、メイド全員分頼むよ。」
「メイドの分ですか?」
「彼女たちには綺麗でいてほしいし、俺のことを心の底から好きでいてほしいからね。やれることは何でもするさ。」
「わかりました。伝えておきましょう。」
「それとさ、どこでもいいから無地のクリスタルホワイトパールのロングコート、真っ白のレザーマスク、真っ白のスボン、真っ白のスニーカー、真っ白のレザーグローブを買ってきてもらえない?」
「どうされました?」
「俺って熾天使なんでしょ?真っ白でいったほうが良くない?」
「ですが、目や髪はどうされるんですか?」
「それは、こうする。」
『ホワイトニング』
俺の髪、眉毛、まつげ、目が真っ白に変わる。そして髪はロングのストレート。街なかであったらびっくりするかもしれない。
「凄いですな。なんでもありですか。服は、病院に準備しておきます。」
そう言ってフォラスさんは、電話し始めた。ここから病院までは2時間はあるそう。それまでに病院周辺にいる若衆達が探しまくるんだろう。
「それはそうと、セーレさんはなんの病気なんですか?」
「悪性腫瘍とのことです。それも心臓にくっついている特殊なもののようで、手術は行えないとのこと。昨月入院し、寝たきりの状態になっております。彼の社長は、息子の命を救うためならとフロント企業への参加の打診をしてきました。」
「へぇ〜。まぁ、俺にかかればすぐには治るからな。」
「流石ですな。まだかかりますので、ゆっくりしててください。」
「では、また寝させてもらいますよ。」
「セラフィム様。着きましたぞ。」
俺が車から降りると随分と立派な病院がそこにはあった。何でも私立大学の附属病院だという。それも俺の治療を他の医師たちが見に来るとのこと。
「見てもいいですけど、一瞬で終わりますし、そもそも俺の場合、執刀しませんよ?体から拭き取ればいいんで。」
「神の御業をお見せいただくだけでいいんです。セラフィム様にはこの病院に在籍いただければと思います。ボスも同じお考えです。」